湖白 kohaku

物書き writing essay

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  • 湖白帖

    湖白の日記エッセイ。

  • しづくの息-詩のお部屋-

    エッセイとはちょっと違う、詩っぽいもののお部屋です。

最近の記事

R6.2.20「愛の障害3センチ、届けレターパックライト」

2月上旬、私は悩んでいた。 彼に当てた手紙に一向に返事が来ないのである。これは、捨てられたか? いや、でも、もうすぐ確定申告の時期…。そして、毎月10日の締め切り日はいつも忙しいはず。つまり、忙しいのだ!! と、自分を誤魔化し誤魔化し、なぐさめて、約束の1年まであと半年あることを思う。 「ぜったい、1年って言ったら1年!、の人だよなあ。はぁ~。」 ま、いいんだけど。そういう人と知っていて好きになったものは仕方ないし、簡単に好きでなくなるわけでもないし。もう長く一緒に居すぎて、

    • 人間

      相反するものが同時に存在する状態 かたいものでやわらかさを紡ぎ 古いもので新しさを描く 変わるものと変わらないもの 両立するのが人間

      • モビール

        厖濃(ぼうのう) 「広くとらえどころのない」といった意味と 「濃い、深い」といった意味の 漢字を繋げた棟方志功の造語 わたしはこれを見た時に 学校のプールを思い浮かべた 海でもなく 学校のプールを 夏が過ぎれば緑色になるあのプール でも浮かんだのは白いタイルの目が美しい 水色の水の入っていないプールだった 広くて深いとはどういうことだろう こころは広くて深いかもしれない 宇宙も広くて深いような気がする モビールは宇宙 広くて深い世界に誘われると 体の力が抜けて自

        • 眼鏡の魔法、愛の明晰度

          「眼鏡は人をかっこよくする」 普段眼鏡をかけていない人が眼鏡をかけているとギャップ萌え~、というような話ではない。 いつもの駅にいつもの時間に電車は到着した。そして、いつものように10分余った。 私はいつも、この10分間、目的の建物が一角にある土地を一周する。時計回りに一周。 ローソン、マクドナルド、コージーコーナー。タピオカ専門店には入ったことがない。石窯焼きのパン屋さん、銀行。酒屋さんの角を曲がる。この酒屋さんには私が唯一呑むことのできるお酒が売っている。スーパー、中華

        R6.2.20「愛の障害3センチ、届けレターパックライト」

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        • 湖白帖
          3本
        • しづくの息-詩のお部屋-
          3本

        記事

          繋がって繋がって どこへ行くのか 輪っかの一つ一つがその人の一生ならば それらは連鎖して次の命へ たくさんの輪っかのその先は 過去か未来か 過去が未来で未来が過去か 歴史は続く 古きものを学び、新しきものをつくる 新しきものはいつの日か古きものとなる 生きている人を照らす光 その人の後ろには影ができる 影は情報過多の人間から積み上がった塵を振るい落とし ただの輪郭となる 影を見つめると本当が見える気がする

          R6.2.6 「滋味深いMy favorite things」

          昨日の午後から降り出した雪。雷鳴と共に出窓にあたる。 11:45。もう昼か。目覚めてベッドに近いカーテンの端を引っ張ると、微かに欄干に積もった白いものが見えた。 今日は恵比寿で行われている映像祭に行こうかと計画していたのだが、占いによれば「絶対に無理しないこと!」とある。 (雪の積もった道を歩くのは、無理することに違いない…) 出かけるのはやめよう。今日の私は潔い。 さあ、朝ごはんでも食べようか、11:45。 ぬくぬくとした毛布から出るのは惜しいが、おなかは空いている。 昨

          R6.2.6 「滋味深いMy favorite things」

          R6.2.4 「仕方がない。仕方がないのだ。」

          朝、コーヒー。食パン。スライスチーズ。愛しのポールウインナー。 「お母さんがでてきたよ」 7:00に体温を測るために一度目覚めたはずなのだが、起き上がったのは9:14。2時間近く2度寝をしていた。 「またですか。きっとお母さんも心配してるんよ」 「何をー?」 いつも早起きの父に夢の話をする。 母は2年前の11月末、突然亡くなった。 父も私もどうすることもできなかった。 入院の多かった母が家を不在にすることは多く、私は今でも母が退院して戻ってくるような気がしてならない。母の夢

          R6.2.4 「仕方がない。仕方がないのだ。」

          パウンドケーキと私

          -1- 少し大人の香りがした、ラム酒でもつかっているのか。その香りに包まれる時間は心地よく、いつしか私はそれが目の前のパウンドケーキから発せられるものと知る。食べたい。どんな味がするのだろう。目の前にあるのに食べられない。一度は悲しみに、視界にいれないようにしようかとも思った。 -2- パウンドケーキから離れようとしたら、止められた。なぜ。 そして、私は魅惑のパウンドケーキが週一回一切れずつ手渡される国に連れて行かれた。パウンドケーキのあのラム酒の艶美な香りを知りなが

          パウンドケーキと私

          ふたりの間に、確かにそこにあるもの

          出会ったのは、大きな建物の白い部屋だった。 彼もまた白い服を着ていて、私が部屋に入ると正面に座っていた。 「緊張していませんか?」 初めて彼の声を聞いた。 緊張はしていたかもしれないが、そんなことより、今の状態をどうにかしてほしい。 目の前が霞がかるのが無くなっていったと感じたのは、その3か月後くらいだろうか。 毎月彼に会い、会うたび白い彼の奥に置かれたものを眺めていた。 そのうち、自然と彼自身を眺めるようになった。 彼との関係が変わったのは出会ってから8か月が経っ

          ふたりの間に、確かにそこにあるもの

          告白は1度しかできないのか

          「告白」。 年に一度、やってくるバレンタイン。 今年も彼にはチョコレートは渡さなかった。 渡そうとした年もあった。でも、特殊な関係の私たちは、「もの」のやり取りができない。 バレンタインといえば、女の子がチョコレートと共に「好き」を伝える日…だったはずだ。 最近は男性からプレゼントを贈る人も増えた気がするし、そもそも外国では男性が花を贈る日だったりしたはずだ。 一般的に告白がしやすい日、である。 冒頭の「告白」という言葉。 意味を調べてみると、「かくしていた心の中を、打

          告白は1度しかできないのか