かたる 3


昼下がりに詩を書くなんてね
いったいどうしちゃったの?
あんなに嫌っていた時間帯なのに

わからないけど、
あまり変なルールを増やさないようにしないと
って思って
そうしてる間に気づけば息もできなくなってるからさ

制限の中にこそ芸術が、
なんて偉そうに言ってたのにね
そういうところ可愛いと思うよ

すぐに意見を変えるということもまた
僕のモットーにしてるからさ


レースのカーテンを通って
いくぶんかやわらかくなったひかり
それはまだ僕の瞳には強すぎるものの
なんとかこうして文字を見たり書いたり出来ている

浮かんでは消えるアイデアは
僕の気分に比例したり、時に反比例したり
まるで為替のチャートをみるようで
規則性を見出したと思っては
次の機会には予測と期待を大きく裏切って
あさっての方に走り出したりする

散文調の詩など、と否定していたものの
翌日にはその良さに取り憑かれたり
良い悪いの判断がすぐ変わる
周りの人間も疲れるであろうが
何より僕自身が参っている

レースのカーテンを通ったひかりがまたゆれる
ゆれる、ゆれる、ゆれる
白檀のお香から上がる煙が
光の形を鉛筆書きでなぞっていく
波が砂浜に書いた字をさらうように
小都市の風がそのラフスケッチをかき消してゆく

またブランクになった透明なキャンパスを
僕の指でなぞってみる
先ほどまであんなに自在に美しく舞っていた煙が
僕の指の間からするりと這い出して
つかまるものかと僕に舌を出してくすりと笑う

あぁ
こうして僕が掴めなかったものだらけなのだな
とハッとしたが
その指に残るかすかな香りがただ僕を慰める

なんの話だったか
まるで僕の考えをまとめさせてくれないが
こうして自在に変化する形をみつめて
それを描写することが
僕の詩作の本来のスタイルだったと思い出す

ほら、慣れないこともしてみるものだと
今日1日の発見で悦に入り
なんとか詩人としての自我を保ち
そうしてここにいる安心を得る

世界を切り取ることが
僕が世界に参加出来ている証だと
昔からそう思っていたじゃないか
これでスランプからも抜け出せるかもしれない

糸口を見つけるのだ
世界から抜け出す糸口を
そしてそれは自分の世界に入り直す糸口でもあり
僕の身体ひとつ隔てて分断されている
僕の世界とこの世界を
少し繋げてみると、
その結び目はなにやら芸術らしいものになっている

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