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5. ウォーレン・オーツ 荒野より。 立風書房

その人の関連する本なら、何でも手に入れたいと思うほど好きな人が何人かいる。それでも趣味が偏狭なので、それに当たる人がそれほどいるわけでもない。何人かのそれに当たる人も関連する本が少ない場合が多く、すぐに集め終わってしまったり、残す一冊を一度も見たことがなかったりする。
僕にとっての前者は内堀弘で、文庫本を入れて四冊はすぐに集まり何度も読み返しているが、それでは飽き足らず雑誌の隔月の連載を今か今かと待ちわびて、ご丁寧にも連載ページを図書館でコピーをしてファイリングしている。さすがに連載一ページのために雑誌は買っていないのだが。後者は秋山晶で、「アメリカンマヨネーズストーリーズ」は現物を一度も見たことがない。ある古本屋の店主に、横長で薄い本のため、本の束の中から見つけるのが難しいと聞いたことがある。あれば一万円でも買ってしまいそうだ。
その点ありがたいのが村上春樹と片岡義男だ。村上春樹は特にノルウェイの森以前は、掲載された文芸誌なども、その時代のものがまとまって並んでいれば目次を開いて探してしまう。片岡義男は著作が膨大にあるため全てを買うわけにはいかないが、あれば嬉しくなり手にとってしまう。この二人に関連する本は数が多くわりとどこの本屋にもあるため、古本屋をめぐる楽しさのひとつにもなっている。
古本屋ではこのように好きな人に関連する本を中心に探していて、それはその人の著作以外だと、人脈や出版社で追うことになるが、それとは関係無しにふと目に飛び込んできて、パラパラとめくると関連した本だとわかるときがある。その代表がこの本だ。
数ある判型のなかでも、四六判より小さい、新書判をハードカバーにした本が好きで、シリーズでいうと晶文社の犀の本がある。このサイズの本は単行本の棚に並ぶことが普通だが、たまに文庫や新書の棚に並んでいるときがある。サイズで分けるとその方がぴったりとくる。そうやってこの本は早稲田にあるブックスルネッサンスの新書の棚に並んでいて、背の字面に、おっと感じるものがあり、手に取り帯を見ると片岡義男の推薦文がある。筆者にも訳者にも出版社にも見覚えがなかったけれど、片岡さんの名前を信じて購入した。いや、片岡さんを買う理由にした。
読み進めると、このウォーレン・オーツは映画俳優でパイオニアのカーステレオの広告に起用されており、そのコピーがロンサム・カーボーイだったのだ。そして、物事はいつだって知りたい順には訪れないためずいぶん後になって繋がるのだが、そのコピーは秋山晶の手によるもので、片岡さんがそのCMのナレーションを務めていた。後に大好きになる秋山晶の「秋山晶全仕事」を手にした後にこの本に出会ったら、心が震えるほど喜んだことだろう。そもそもその秋山晶も片岡さんがキューピーマヨネーズアメリカンの広告の元になったJohn Baederの「DINERS」に著書の中で触れていて、その繋がりで知ることになったのだが。ともかく、秋山晶の数少ない関連本であると同時に、片岡義男の関連本ということで、心のベストテンに食い込む本となった。

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