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『コカイン・ベア』愛嬌あるバカバカしさ

『Cocaine Bear』(2023年)★★☆・。

このバカバカしいプレミスに、錚々たる製作陣が並ぶ。

『ピッチ・パーフェクト』続編や『チャーリーズ・エンジェル』リブート作のエリザベス・バンクス監督作、『スパイダーマン』のアニメーション長編シリーズや『LEGOムービー』などのフィル・ロード&クリス・ミラーのコンビがプロデュース。

アイス・キューブの息子のオシェア・ジャクソン・Jr、失敗作扱いだがスター・ウォーズのスピンオフでハン・ソロ役を務めたオールデン・エアエンライク、ケリー・ラッセル、そして22年に亡くなったレイ・リオッタという顔ぶれ。

密輸コカインをセスナ機から落とし、自らも機体を捨てて飛び降りたパイロット。パラシュートが開かず死亡したその男は、大量のコカインで積載量オーバーになった機体を軽くしようとしていたらしい。一方、テネシー州の国立公園では、多量のコカインを飲み込んで死亡した熊が発見され、ニュースになる。周囲には食い散らかしたコカインが散乱していたらしい。

1985年に実際に起きた事件では発見時すでに死亡していた熊だが、それをベースにした本作では最高にハイになった熊、人呼んで「コカイン・ベア」が人を襲う物語が展開する。

北欧から来たハイキング客、滝を見たいと言っていた娘に手を焼く?シングルマザー。パーク・レンジャー、その片思いの相手、パークに入り浸るチンピラ3人組。そしてコカインのありかを探す取引人たち。それぞれが森へ入り込み、ひとり、またひとりと餌食となっていく。

期待せずに見るからこそ、楽しめる。血が吹き出すグロさと酷さに、顔をしかめては笑う。身も蓋もない殺戮シーンほど、声を上げて笑い飛ばす。

ただ細かく見ていくと、粗が目立つ。実際の事件からシチュエーションだけを借りた割には、架空の各キャラクターの相関関係がもっと絡み合っても良かったし、コカインそのものの効用も一様に麻薬一般の扱いで、コカイン特有の具体性に欠ける。コカインに染まる熊には、コカインに毒された感がより強調されても良かったろう。

コカインを吸った者同士のトリップ感でいうと、ジャンルは全く違うけれど『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』のレオナルド・ディカプリオとジョナ・ヒルが演じるトリップのシーンくらいはっちゃけていても、おかしくない題材でもある。

中盤ほどの爽快スプラッターも終盤では大人しくなりがちで、滝裏での押し問答には物理的な動きが少なく、クライマックスらしさに欠ける部分も。

とはいえ、こういう映画は軽さがポイント。こんな題材に立派なメンツが集まっていること自体、きっと楽しんで撮っただろうことが窺い知れる。その楽しさの伝播を受け止めておけば、十分にもとが取れる一本。

割り切って楽しもう。バカバカしさが愛嬌だ。

(鑑賞日:2024年2月11日 @自室)

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