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原作好きによる、実写『ゴールデンカムイ』が最高に楽しかったという感想日記


これは原作『ゴールデンカムイ』が大好きな人間による、実写映画のここが好き!の備忘録です。

実写版『ゴールデンカムイ』を見てきました。
視聴後3日経っても興奮が冷めやらず、どうにかして落ち着きたかったので感想をまとめました。

・原作の魅力を余すことなく抽出して映画表現に落とし込んでいる
・ビジュアルの完成度だけでなく、何よりもキャラクターの核の掴み方がえげつない
・時間とお金と愛の詰まった丁寧な作りが凄い
・野田サトル先生監修の信頼

みたいなことを話しています。
自分が感じた衝撃を残しておきたくて、興奮のまま書き留めているのでだいぶ長いです。

人の初見感想を見るのが好きな方とか、原作が好きで見に行くか悩んでいる方が読んだらちょっと楽しめるかも。「あ〜分かる!良かったよね!」ってなるのが好きな方はぜひこのままお読みください。

興味を持っていただいた誰かに、ゴールデンカムイの魅力が盛大に伝われば幸いです。

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以下多大なネタバレを含みます。
映画の感想語りに釣られて、31巻までのほんのりネタバレもあります。(大筋には触れていません)

なんと1/31まで、ヤンジャン!が原作1話〜最終話までを無料公開してくださっています! ブラウザでも読めます。

この作品をまだ読んだことのない方は、314話分の激動をぜひとも漫画で体感していただきたいです。やっぱり原作の濃度が一際素晴らしいので。

グロ描写と人智を超えた下ネタが苦手な方はあまり無理せず、ちょっと気をつけながら読まれるといいかも。変態に注意。
※ この映画はPG12区分です。クマ出没注意。

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何から書けばいいのか分からないのですが、体裁は気にせずひたすら好きな所を羅列していきます。



杉元佐一の魅力が健在

開幕早々、引きの画面で見せつけられる203高地の凄惨さに圧倒されました。エキストラの人数が凄い。明治時代の軍隊として説得力のある映像と、そんな人達が容赦なく事切れていく姿にぞっとさせられます。戦争描写が本気です。

そんな中を駆けていく主人公の姿。予告映像で感じていた通り、 「俺は不死身の杉元だ」の叫びは小林親弘さん(アニメ版杉元の声優さん) を彷彿とさせる慟哭のようでした。大立ち回りも申し分なくかっこいい。 原作で敵の塹壕に飛び込んだ時よりロシア兵の人数多かった気がします。“不死身の杉元”のキャラクター性がしっかりと描写されてる。
戦場に心を置いてきた杉元の、「殺されないために殺す」というぎらついた瞳が確かにそこにありました。

そんな衝撃を受けてから始まる1907年、終戦後の砂金取り放浪杉元。
ここ、杉元に金塊の話をしてくれる例の酔いどれおじさんが漫画に出てきたまんまの容貌をしていて最高です。この時点で「実写化大成功じゃない?」って期待に熱が入りました。

見ているこちらまで凍えそうな積雪。欠片も見つからない砂金を求めて川をさらう男と、莫大なアイヌの埋蔵金なんて与太話をする男が二人。息を潜めて聞き入ってしまいたくなる導入がたまらなく素晴らしいです。原作1話の引き込まれ方が、そのまま画面に映されている。
それから、杉元があのマフラーと軍帽を被って銃を背負った姿に「あ杉元だ」となりました。

杉元の俳優さんの事は、予告でその声やアクションを見てからずっと楽しみにしていました。けれど個人的にお顔だけをぱっと見て「杉元だ!」とはなっていなかったため、映画で自分がどのように感じるのか気になっていたのですが、スクリーンで動く山崎賢人さんは紛れもなく杉元佐一でした。
映画開始からここまでおそらく10分程ですが、あぁ見に来て良かったな、と既に満足感でほくほくしていました。

でも湯に浸かって情報収集してる杉元はただただイケメンな山崎賢人さんだったのとても面白かった。多分前髪下ろし気味になってるからです。ノラ坊やっぱり顔が良いな、菊田さんお墨付きですもんね。東京愛物語、アニメでも実写でも見せて欲しい。大好きな将校さんが出るんです……

言ってしまえば、この場面以外は役者さんを意識する箇所がありませんでした。これは山崎賢人さんの演技力の成せる技だと思います。納得の主演。
およそ2時間、明治時代の北海道を杉元佐一がずっと歩いていました。


安心感のある“登場人物らしさ”

漫画に限らず二次元作品の実写化は、キャラクター達がどのように再現されるのかが懸念事項であり重要箇所になると思っています。

ゴールデンカムイは特に、人間味あふれるキャラクターの絶妙なバランス感が、多数読者から愛される理由の一つだと感じています。期待されているからこそ実写映画に対しては少なからず不安があったと思いますし、慎重になっている方も多く見受けられました。
かくいう私もそれが不安でした。実写化の話題がトレンドに載るたび、ちょっとだけ冷や冷やしながら情報を探しに行った覚えがあります。
なんだか白石だけは絶対にハマり役の方が出演されるんだろうなという安心感がありましたが。矢本悠馬さん、おい貴方白石だろ! ありがとうございます本当に。

ですがそんな心配が杞憂だったと心から思えるほどに、実写版『ゴールデンカムイ』は完成度が飛び抜けていました。
これは服装や顔立ちだけの話ではなく、演技の細部から感じとれる登場人物らしさが大きく影響していると思っています。

今回、確かに年齢や身長といった部分で漫画とは少し異なる要素がありました。(個人的に筋肉はあまり気になりませんでした! アクションの見せ方がかっこよかったからかな)

けれど、原作に出てきたキャラクターたちの芯の部分、一番大切であろう魂とか原動力みたいなものがどの役者さんからも滲み出ていて、実写に対する違和感は全くと言っていいほど抱きませんでした。
行動や台詞のたび、「ゴールデンカムイだ」と何度も思いながらスクリーンを凝視していました。

例えば杉元であれば、戦場でがむしゃらに駆ける荒々しい姿と、アシㇼパさんに連れられて来たコタンでアイヌの子供達に向ける穏やかな眼差しとか。
アシㇼパさんであれば味噌を嫌がる全力の変顔と、勝手に離れていこうとした杉元をストゥでぶん殴った後の、父に対する寂しさも含んだ凛とした主張とか。

些細なビジュアルの違いはあれど、それぞれの登場人物はゴールデンカムイの彼らそのままでした。
役者さんの力量と制作に関わった方々の本気度がびりびりと伝わって来ます。それだけで、今後の展開やキャスティングに対する僅かな不安が綺麗に拭われました。
個人的には新進キェ〜イな薩摩隼人、鯉登音之進の眉毛がしっかり鯉登眉であると良いなと思っています。あのレ点みたいな角度がたまらなく好きなんだ。キャストさんどなたになりますかね?

高身長な月島もどうなるのかと思っていた要素の一つだったのですが、彼は何の疑いもなく月島でした。目線の送り方だったり「はい」の返事だったりがあまりにも月島軍曹で大興奮しました。
原作の初登場ではちょっとふやふやしてたキャラクターが初めから完成されてる。鶴見中尉によって作り上げられた忠義の兵士。
四連続くらいあった「はい」の台詞二文字にすら月島基が詰め込まれていました。金カムにハマって2年程、月島を推しながら悲鳴をあげ続けてる人間の感想なので信頼していただいて間違い無いと思います。
あと工藤阿須加さんのこと軽率に好きになってしまう。とびきり素敵な俳優さんですね。

そうした魅力溢れるキャストの中でも、鶴見中尉の完成度は群を抜いて恐ろしかったです。
野田先生が何かしらの術を使って鶴見中尉を漫画から引っ張り出してきて、玉木宏さんと対談か強制共同生活でもさせたんじゃないかってぐらいの温度感。土方歳三と対峙してぎらついた笑み浮かべる所とか、「ロウソクボリボリしちゃおうか」の不気味さとか。
鶴見中尉殿の格が違いすぎる。野田先生が直々に玉木宏さんを指名をされた、ってエピソードが好きすぎてガッツポーズしちゃいました。そりゃ大正解です。さすが鶴見中尉の一番のファン。

それと個人的に「鯉登の身長が鶴見さんと月島よりも高い」「茶番劇をして手中に堕としたはずの幼い子供が、いつの間にか成長してこちらを見据えている」って所に色んな良さを感じて心臓を痛めているので、続編制作の暁にはぜひとも2mの鯉登を発掘していただきたく思っています。面倒くさくて申し訳ない。
鶴見と月島と鯉登の関係性が生涯の沼なんです。きっと分かってくれる方は多い。


映画ならではの要素

その他映画内で行われている改変は、野田先生による原作の再解釈なのかなという印象を受けました。

「チタタプって言え!」のくだり、アイヌの風習ではなくアシㇼパさんのお家のルールだって解説されているところが好きでした。確か何かのインタビューで、アイヌ全体の文化のように捉えられてしまったことをどなたかが懸念されていた気がする。
それからアシㇼパさんの幼名も変わってましたね。何でなのかなと思っていますが、それを受けての杉元のツッコミとても好きです。オソマ好きだねアシㇼパさん。

どれも大筋の変更ではなく、映画制作にあたり必要な調整、といった感じでした。笠原(尾形に撃たれた囚人)とセットにされてた白石とかね。
もちろん映画オリジナル表現の面白さも良かったです! 何度か会場全体から笑い声が漏れる場面もありました。
片っぽ靴下ちゃんの匂いに「ア゛」ってなってるレタラとか、熊の油で全身ぬるぬるの脱獄妖怪・シライシとか。白石の鉄格子抜けをノーカット版で見せてくれたの嬉しかった。脳みそ変形してないか心配になります。白石とアシㇼパさんが握手を交わすシーンなんかはもうとびきり最高でした。

あとは各キャラクターが登場する際に出される階級と名前(例: 第七師団 尾形百之助)、スクリーンにでかでかと現れる「小樽」の文字が、原作やアニメを彷彿とさせるフォントだった事により一層わくわくしました。
円の価値やアイヌ語の解説には適宜字幕がありましたが、これも演出が素敵だった。
コタンでアシㇼパさんが眠りに落ちた後、杉元に語りかけるフチのあの言葉にだけは字幕がなくて、優しげな声とともにフチの顔と掌だけが映され続けていました。漫画の空気がそのまま流れている。

演出にまで原作へのリスペクトが感じられて、誰
目線だよって話ですが本当にファン冥利に尽きます。大好きな作品が、こんなに丁寧に映像化されている事実に泣きそうになりました。見入ってて記憶がないですが普通に泣いていた気がします。フチ大好き。
それからフチもそうなんですが、アチャ然り鶴見中尉然りの特殊メイクが本当に凄い。牛山様のはんぺん(おでこ)も尾形の顎の縫合跡も、リアリティと漫画的要素の間にしっかり落とし込まれていて最高でした。


追加された戦闘

ストーリーの好きな箇所に話を戻しますが、第七師団から逃れるべく一芝居打った杉元が、ソリの上で月島と戦うシーンすごく良かったです。見ていてとびきり楽しかった。
あそこで一戦を交えたことによって、後の樺太先遣隊にまた別の深みが生まれませんか……って噛み締めてました。原作、アニメと来て三度目の呉越同舟見たすぎるよ。樺太先遣隊も大好きなんです。ゴールデンカムイ、箱推しにならざるを得ない作品。

片割れを失った二階堂の戦いぶりもそうでしたが、あの辺りの改変は128分という上映時間でいかに原作を踏襲しつつキャラクターの魅力を伝えるか、という難題に花丸満点の解答を見せてくれた感じがしました。すごくすごく良かった。
走る馬の背を踏みつけながらのアクションかっこよすぎた。一等卒である二階堂の動きからも、陸軍最強とされる第七師団を見せつけられました。

あとはなんと言ってもアシㇼパさんとの共闘ですよね。杉元にストゥ投げ渡すところで 「乱用最高!!!」って拳を握りしめていました。視線を交わしてすらいないのに、杉元が頭を下げた瞬間にアシㇼパさんの矢が放たれるのも最高に好きです。二人の相棒らしさがはっきりと印象付けられた場面でした。
それで鶴見さんのラスボス感。落馬してから流れるように脚力見せつけてくれるの凄すぎる。みなさんメイキング見られましたか? 玉木宏さんによる本気アクション。あれはもう鶴見さんに直接の指導を受けているんじゃないでしょうか。


それとそれと個人的に、スキー技術を駆使する玉井伍長班からアシㇼパさんの手を引いて逃げる杉元がたまらなく好きでした。原作では脇に抱えて走っているので、山田杏奈さんの身長を加味した上での変更だと思いますが、咄嗟の走り出しがたまらなくかっこよかった。
原作のあのシーン、杉元の中で「アシㇼパさんを守ること」の優先順位が既に高いのが最高に杉元で好きなんです。そしてやっぱりその杉元がスクリーンに居ました。製作陣の方々に感謝してもし足りない。
(恋愛描写の追加とかでは全くないです。杉元とアシㇼパさんの信頼から来る距離感、映画でも存分に摂取できます)


主題歌とエンドロール

あとはエンドロール!!!!!
黄金が物語を導いていく荘厳な感じも、主題歌だけが耳に入ってくるこれぞ映画!って感じのやつもめちゃくちゃ良かったです。
足元も暗いですし、さほど長くないので会場の明かりがついてから退出されることをおすすめします。『輝けるもの』にぜひ聞き入っていただいて。


杉元とアシㇼパさんの会話が締め括られた後、エンドロールを挟みながらCパートのようなものが三つくらいあったのですが、そのひとつひとつに湧き上がってしまいました。

映画では未登場だった囚人たちが怒涛の勢いで映されるところとか、ゴールデンカムイの推し要素である“群像劇感”がぶわっと強まって盛り上がりました。家永カノちゃんの期待度がえげつない。心から待ち遠しいです。
感情闇鍋ウェスタンの「鍋」部分もしっかり見せてくれました。桜鍋食べたいな。スクリーンから溢れ出るゴトリの愛おしさ、見ているこちらまで満腹になります。アニメ4期の最終話も良かったな……

というか多分なんですが、実際のアニメで使われていたBGMが流れてる。そういうの大好き。本当に嬉しくて震えていました。Apple Watchとか持ってたらそこだけ心拍数跳ね上がってたと思う。


映像だけではなく主題歌もやばいです、遅効性。1歩も動けない。予告の時点でそうだったんですが、「果てなき空に」って流れ出した途端の興奮がたまらない。
好きが溢れて限界になってる人間がだいぶ分かりづらい説明をすると、アニメ版『ゴールデンカムイ』
3期OP『Grey』(FOMARE)のような疾走感と


1期OP『Winding Road』(MAN WITH A MISSION 🐺)の「混乱の時代や嘘と暴力の螺旋が どうか貴方の未来へと陰落とさぬ様に」と


4期ED『すべてがそこにありますように。』(THE SPELLBOUND)の「君が一番欲しかったもの すべてがそこにありますように」に感じられるような祈りを、


ACIDMANのオリジナリティとかっこよさをもって作り上げてくださったような雰囲気の主題歌です。
何が言いたいかってゴールデンカムイらしさが詰まりきってる。そんなの好きになるよ。映画視聴後、再生履歴が一気に塗り替えられました。
イントロのえげつないゴールデンカムイ感は何なんでしょう。アーティストさんの表現力が凄すぎる。

主題歌が愛おしくなる作品は良いものだ、って先人達と自分の経験が言ってます。


まとめ

全体を通して、映画であるにも関わらずリアルにはなりすぎず、漫画との齟齬を上手く作り変えて、言葉通りの実写版『ゴールデンカムイ』を見せてくれた感じがしました。原作ファンの贔屓目を抜きにしても大成功の実写映画だと思います。
時間とお金をかけて、沢山の人が熱量を込めて創り上げてくださった作品なんだと全身で感じました。

小樽を道ゆく人たちや、小道具一つとっても一切の妥協がありません。鶴見中尉のお団子部屋背後にある本棚なんかもすごかった。
画面のどこを見てもゴールデンカムイの世界が詰め込まれているのが嬉しくてたまらなかったです。原作を好きでいて良かったなと改めて感じられるような映画でした。

私が見に行ったのは公開翌日の土曜だったこともあり、原作好きの方が多かったのではないかなと思うんですが、上映後の会場では拍手が起こっていました。

この映画は特に、戦場の砲弾に合わせ座席に伝わる振動や、アシㇼパさんが弓を引く際の効果音など、映画館という空間でしか味わえない良さが散りばめられているように思います。円盤は絶対に買いますが、もう既に公開終了が惜しいくらいです。
私はまだ一度しか見れていないのですが、後悔のないようチケットは複数回確保済みです。幸せ。

実写版『ゴールデンカムイ』、胸を張っておすすめできる作品です。もし気になっている方がいましたら、お時間のある時に映画館へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
余談ですが、涙腺の弱い方はお手元にポケットティッシュを出しておくことをおすすめします。


長い文章にお付き合いいただきありがとうございました! ここまで読んでくださった貴方に、何か良いことがありますように。


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