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「第二言語教育の「常識」 — 基礎日本語教育を考える」の概略

 ご存じのようにわたしは表現活動の日本語教育を提唱しており、それは、考究された言語観、言語習得観、第二言語習得の原理などに支えられていると思っています。表現活動の日本語教育はそのような理論にしっかりと支えられているわけですが、もう一つそれを支えている土台があります。それは、実は、常識です。どういうことかというと、「これまでの日本語教育は常識的で穏当な合理的な考え方や判断の下に行われていなかったのではないか」、「業界でのみ、あるいは業界の中の人たちの間でのみ通用する常識で教育を考え、教授を考え、実践をしてきたのではないか」という大きな問題意識がわたしにはある(ずっとあった)ということです。つまり、業界の中でしか通用しない常識でずっとやってきたし、今もそんな常識を続けているし、その常識は、本当の常識人つまり教養に基づく常識があり穏当に合理的に考える人には「変」あるいは「筋が通らない」とか「理不尽だ」というふうに見えるのではないかということです。
 表現活動の日本語教育について包括的に論じた『新次元の日本語教育の理論と企画と実践』(くろしお出版)では、実は、この2つの土台、つまり理論という土台と常識という土台が混じり合った形で提示されています。ですから、どこが理論で、どこが常識なのかがわからなくなっています。今回のシリーズは、同書の中で提示されている常識を基本としながら、その他の常識も補って、基礎日本語教育を構想し、企画し、具体的に教育を実践するにあたっての常識的な見方や判断を整理して提示したいと思っています。
 それで今回は、その「常識」のメニューをまずは示します。やや「仮」の部分がありますので、修正・変更することがあるかもしれません。小項目を足し算すると20テーマとなりますが、実際の記事としては12回くらいで書きたいと思っています。
 皆さんと「常識」を共有することができれば、うれしいです。
※クイズ:この「共有」には2つの意味があります。その2つは何でしょう。

1.教育企画とインストラクショナル・デザイン
1-1 インストラクショナル・デザインとは何か
1-2 教育企画とインストラクショナル・デザインで重要なこと
1-3 プロフェッショナルの仕事

2.第二言語教育に与えられた課題は何か
2-1 言語の上達
2-2 言語活動従事
2-3 言語技量
2-4 言語知識の拡充と言語技量の増強

3.言語の実現の問題 ─ 問題の整理と対処法の原理
3-1 学習開始時の音声指導
3-2 音声指導のコツ
3-3 書記日本語の指導をめぐって① ─ 書記日本語の困難点
3-4 書記日本語の指導をめぐって② ─ 書記日本語の上達を企画する

4.基礎日本語教育を企画する ─ インストラクショナル・デザインにあたって
4-1 コース全体を企画するにあたっての3つの視点
   ─ フィージビリティ、ヒューマニズム、プラクティカビリティ
4-2 ユニットを企画するにあたっての3つの視点
   ─ 言語事項の知識と言葉遣いの蓄え、言語活動従事、言語促進活動

5.プランの役割、リソースの役割、学習者の役割、教授者の役割
5-1 プランの役割
5-2 リソースの役割
5-3 学習者の役割
5-4 教授者の役割

6.評価をめぐって
6-1 さまざまな種類の評価
6-2 言語教育における本来の評価
6-3 共通尺度に基づくパブリックな評価と達成に関与する諸要因

7.終わりに ─ 従来の日本語教育から表現活動の日本語教育への移行

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