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第96椀 味噌おでん

初出:2022年3月9日

<お味噌汁> ひと椀がつむぐ大切なもの それは日本のたから

「お味噌汁復活委員会」は、味噌汁の大切さをあらためて発信していこうと、2014年夏にFacebookページにてスタートしました。世話人、お味噌汁復活ライター、一般読者が思い思いの味噌汁を投稿しています。

味噌汁の出汁・味噌・具材を、それぞれに深く楽しく考え広め、毎日の食卓に味噌汁をいただく習慣を復活させるべく、活動の場を広げています。

私コイタは第1期からお味噌汁復活ライターをさせていただいております。ここでは私の書いた記事をまとめて紹介しています。


テーマ:伝えたいお味噌汁(番外編)

『美濃の豆味噌とたまり』

しかしこの冬は寒かったですねぇ。今シーズンは薪ストーブを焚きすぎて燃料の薪も心細くなってきました。そんなストーブの上でよく作りましたよ〜、味噌おでん、どて煮、猪鍋などなどなど。煮込み料理にはよく豆味噌を使います。豆味噌は煮込んでも風味が飛ばず、動物性の脂とも相性が良く、まろやかな味わいになります。

今回はお味噌汁から少し脱線しますが、岐阜県美濃中部から東部、飛騨南部あたり(岐阜県は三角形をしているんですけど、その真ん中から右下あたり)の豆味噌とたまり文化について少しお話でも。

岐阜県美濃中部から東部、飛騨南部あたりの豆味噌は、愛知(特に三河)の固いものとは違って、ゆるめのものが多いんです。これはたまりをとるために水分を多くしてあるからなんですね。味は豆味噌にしては渋みが少なく、あっさりとした印象です。色味も明るいものが多いです。

これを家で仕込む場合、豆に直接麹菌をつけた豆麹を買って来て家で塩と水を加える仕込み方だったり、さらに家で豆を煮て豆麹と合わせて増量する仕込み方もあるそうです。我が恵那市の地味噌では豆味噌というより、米麦混合麹の味噌の割合が多いように見受けられますが、お年寄りなどに聞きますと、たまり取り用で豆味噌を別に作っていたという話も聞きます。

この味噌のくぼみに溜まる液体がたまりです。寒い方がよく溜まるので、竹で編んだ細長いざるを味噌に突っ込んで汲み取る方法(簀(す)立て)で、冬によく行われていたそうです。

たまりと言えば東海地方の家庭で一番馴染みがあるのは刺身用ですね。たまりは魚の生臭みを消し、旨味や甘みを増幅させてくれます。ちなみに東海地方の甘露煮(佃煮)の多くはたまりベースです。また鰻の蒲焼きや焼き鳥のタレなどもたまりベースが多いです。

最近は結構な田舎街でも全国チェーンのお店が浸透して、郷土の食文化が次第に薄れてきているように見えますが、東海地方の豆味噌やたまり文化について言えば、子供の頃から知らないうちに身体に染み付いてるんですよね。これって本当に根付いた食文化だと思うのです。大切に伝えていきたいものです。

今回の写真は、美濃加茂市の同じ店の豆味噌とたまりを使って、味噌おでんと刺身にて晩酌の一コマです。

『味噌おでん』
出汁:牛スジ
具材:牛スジ、大根、豆腐、コンニャク、玉子
味噌:豆味噌


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