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なぜ日本人は英語が話せないのか

タイトルの問いは、日本人の場合、一度は見聞きしたことがあるだろう。
また、英語を真剣に勉強している最中の日本人にとっては一度は考えたことがある問いかもしれない。なぜなら私もその一人だったからだ。

私は大学時代、一年間留学を経験した。
英語圏ではなく、フィンランドという北欧に位置する国だ。
そこで交換留学生として、他国から来ている学生と共に、英語開講の授業に参加し、単位を取得することが求められた。

正直、渡航前の私の英語力は高いものではなかった。
(TOEFLの基準点は満たしていなかったのに、渡航先大学は受け入れてくれた)
そして、日本の一般的な大学のような講義形式を想像していた私は、「最初は教室の後方座席に座って聞くことに集中し、分からないところはレジュメ等で自宅学習でカバーすればよい。次第に英語にも慣れていくだろう」と考えていた。
しかし、実際行われていた授業は想定外のものだった。
基本的にどの授業も、30人いるかいないかの少人数で、なおかつ、4~5人のグループ分けがされ、そのグループでワークすることが求められた。つまり単位取得には、個人ベースではなくグループの一員として参加し、プレゼン等をこなしていく必要があった。共通語である英語が話せないと、グループの会話についていくことができず、単位もとれないかも・・。絶望の淵に立たされ・・

どうにかこうにかして、一年後、無事に予定の単位数はとることができた。授業を受ける中で、「なんで自分(日本人)は英語が話せないんだろう」、と自分自身に問うことが何度もあった。
なぜなら、

他の国の人は流ちょうに話せているから

【私が出会った人の印象】
オランダ→ネイティブ並み
ドイツ→普通に上手
フィンランド→普通に上手、分かりやすい発音・単語
スペイン、イタリア、フランス→癖があるが堂々と話す
トルコ、ハンガリー→日本人とやや似ている。控えめ

どの国の人も、自国を離れ、留学に来ている時点で最低限の英語力は持ち合わせているし、性格的なものもあるかもしれないのであくまで上記は私が出会った人から受けた印象だ。

私が一番衝撃を受けたのは、滞在国フィンランドの人々の英語力だ。
フィンランド留学中、学校以外でも、あらゆる世代のフィンランド人と接する機会が多くあった。小さな子供あるいはお年寄りでない限りは、地方の人々であっても基本的な英語は話す。しかも聞きとりやすい。
どうしてか?

公用語が英語?
言語が英語と似ている?
英語教育が熱心?

上記の答えはすべてNOである。
フィンランドの公用語はフィンランド語とスウェーデン語(国民の約5%)である。
首都のヘルシンキ街中の案内を見ても、フィンランド語にスウェーデン語が併記され、英語は書かれていないのが通常だ。
(近年場所によっては、観光客のために英語のみならず親切に日本語まで書かれている場所もある)

またフィンランド語はウラル語族に属し、英語が属するインド・ヨーロッパ語族(ゲルマン系)ではない。
言語はアルファベットを使用し、英語と同様に主語→動詞→目的語の並びではあるものの、単語そのものや格変化は英語とかけ離れている。(ちなみに同じ”北欧”とひとくくりにされるスウェーデンやノルウェーの現地語は英語と同じゲルマン系であり、フィンランド語と語源は異にする)

ここまでであれば、英語を学ぶ上での条件はざっくり日本人と同じになる。
日本人が英語を話せないのは日本語と英語の言語のつくりが違うからだ、という理由はあまりあてはまらない。
では、フィンランドでは英語の教育がよっぽど熱心なのか?

フィンランドの英語教育は、義務教育で小学校2年生から英語を学ぶことになっている。日本よりも英語を学ぶ時期が早いことは確かに要因の一つかもしれない。
ただ、日本人が受験にパスするために英語を机上で長時間勉強をするのとはわけが違い、もっと根本的なところにある。

私は2006年当時、とあることがきっかけで、フィンランドの地方の中学校の英語の授業を見させてもらったことがある。
そこでの印象は、終始、生き生きと生徒が英語を発しているということだ。
挨拶から始まり、積極的に手を挙げて英語を話している。
また、その時の英語の先生もフィンランド訛りの少ない、流ちょうな英語を話す印象を受けた。

フィンランド語話者が少ない

人口が多いということは、市場が成り立つ要因となる。
1億2千万人の日本では、戦後、製造業を中心に発展し経済大国となった。現代社会でも、日本国内で英語を使わなくても、生きていくことはできるし、娯楽も楽しむことができる。
海外の映画にしても、日本語吹き替えや字幕は当たり前だ。

一方で、全人口550万人のフィンランドはどうか。
フィンランド語は、フィンランド国のみでしか話されていない。
戦後1917年に独立したフィンランドは、小国が世界に競争力をつけていくためには"教育"が必要と考えた。そのために質の高い先生を養成し、移民も含め一人一人のこどもが力を伸ばせる教育に趣を生いた。
PISA(OECD生徒の学習到達度調査)でフィンランドは各リテラシー共に上位に位置しているのを見ても、言語教育だけに力を注いだとは言えない。(生きる力を伸ばす教育に趣をおいた結果、複合的に英語力もついた、ということだろう)

また、現地でテレビを見ていると、ドラマやバライエティ番組等、フィンランド国外モノ(主に英語もの)が多く見られる。それらは字幕がフィンランド語となっている。国内で制作するだけの市場がないから、外からコンテンツを輸入しているのだろう。
フィンランド人の友人いわく、それが自国民が英語に親しんでいる一つの大きな理由だということだ。こどもの頃からテレビをつけると日常的に英語が耳に入ってくるから自然と馴染む。インターネットのコンテンツに関しても同様だ。
(ちなみに、フィンランドでは公用語のスウェーデン語も小学校高学年から学ぶそうだが、その友人いわく、実際に話せる人は少数だそうだ。なぜなら必要性があまりないから、とのこと。それは日本の英語に対するものと似ていると感じた)

更に、個人的にフィンランド人と英語で会話をして感じることは、伝え方が「客観的」だということだ。
例えば道を尋ねた場合、「目的地までは徒歩〇分くらい」ではなく「目的地までは〇メートルくらい」と距離で返答されるのがほぼ100%だ。
徒歩〇分という言い方だと、大人の足か子供の足かによって違うし、また人によっても様々で曖昧だ。これはフィンランド人が"使える英語"を話すことを示す一例であると私は考えている。

なぜ日本人は英語を話せないのか

結論
・日本の中で一定の娯楽を楽しみながら生きていける(英語を使用する必要性がない)

・日常で英語に触れる機会が少ない

じゃあ英語を話すにはどうすれば?ということはここでは触れない。
ただ、日本人にとって「英語を話す」といえばアメリカ人などのネイティブスピーカーを想像しがちで、それを目指さなければならないと考えている人が多いように思う(私もその一人だった)それが英語を発することのハードルを上げているように思う。
アメリカや英国のネイティブ国以外にも世界にはに多くの人が暮らしていて、英語を話している。

あくまで英語は世界共通語としてのツールとしてとらえ、気軽に向き合うことで、広がる世界はあると思う。
また、少子高齢化やITの発達による市場のボーダレス化によって、学校教育も変わっていかなければいけないと考える。







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