家の近所を歩いていると、大きな八朔（はっさく）が路上に落ちていた。灰色のアスファルトに転がる黄色の球体。なんとなく梶井基次郎の『檸檬』を想起した。頭上にはこれから落ちるだろう八朔がいくつも垂れ下がっていた。頭に落ちてきたら痛いだろうなぁと思っていたら、少々離れた場所の果実がボトリと落ちた。陽射しを照り返す鮮やかな黄色を見ていると、心の中に爽やかさが広がる気がした。色というものは不思議だ。

　今日は久しぶりにバンドのライブ演奏をしている夢をみた。バンド活動から退いて１年か。そういえば、演奏中の記憶はあまりない。バンドメンバーとあれこれバカなことやったり、ご飯を食べてたりすることは覚えてるのだけど。集中力を高めている瞬間のことや、ドーパミンの激流に身を任せている時のことは覚えていられないのだろうか。その素晴らしき瞬間は長続きせず、記憶にも残らない。だからこそ、なかなかやめられないのかも知れないな。

　最近好きなアルバム。
　Lionmilkの『I Hope You Are Well』。直訳すると「あなたが元気でありますように」。LionmilkはＬＡ在住のキーボーディスト、Moki Kawaguchiのソロ・プロジェクト。前作はＲ＆Ｂ的な色合いが濃いアルバムだったのだけど、今作はアンビエントと言えるだろう。パンデミックの中で不安や鬱に苦しむ家族や友人に捧げたアルバムらしい。とてもパーソナルで暖かな作品だ。美しいエレピの音が特徴的で、その音のゆらぎに心を浸せると不思議と落ち着いてくる。家族や友人どころか、極東の島国在住の男にまで癒やしを与えてるよ。ありがとう。