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業務命令が窃盗だった話-倫理観をどう育むか(4)-

僕は、今まで勤めた会社でそれぞれ重ための倫理問題に出逢ったことがある。

一社目は倫理問題で倒産した。経営者は檻の中に落ちた。二社目は倫理問題で事業部がなくなった。その後、友人とやった仕事もオーナーの倫理問題に直面した。その後も、何度か、きつい場面を目にしている。

自分が、ある種の正義に強いこだわりがあるのは、それらの経験があるからだが、今回は二社目でのエピソードを書きたい。もう20年以上前の話だ。

以前東証一部上場の商社に勤めていたことがある。その商社で、初めての仕事らしい仕事は今思えば窃盗だった。

たまたま、倫理に関する研修をやる機会に恵まれそうなので、その話を書きたい。

入社して、しばらく直属の上司となった部長が出勤しない日々が続いた。アムステルダム駐在の長かったその部長は、無断欠勤や遅刻などで会社にこないのが常だった。

まだ上司にもあっていない中で、用件もわからずに千葉の客先にいき、いきなりイタリア系オランダ人と勤務先のエンジニアリング子会社のエンジニアの死闘を目撃し、とりあえず着替えもないのにいきなり現地泊になったのがカルチャーショックであったが、そこでは何のミッションもなかったので、仕事をした気がしていない。

初めての仕事らしい仕事は、今となっては何県のどこだったかの記憶もない場所だった。

勤務先が納品した機械で製造した加工品があるからそれを現地から回収して、コンビニから本社に送れというものだった。サンプルとして使うからということだった。

ん?と思って、「いいんですか」と聞いたが、「うちが入れた機械だから大丈夫だよ」といわれたので、そういうものかと信じた。

何もしらなかったので、言われるがままに仕事をしたが、あとから別な社員から「それは窃盗だよ」と言われ、罪悪感に苛まれた。

悪いことが悪いことだとわからないうちに、悪意をもって促されることが世の中にはある。新入社員になる若手にはこうしたことを伝えたい。

「普通」は誰かから与えてもらえるものではなく、与えられない場合、自分の倫理観で判断しなければならないのだ。

そして、小さな倫理観の欠如は大きな欠如につながっていく。割れ窓理論だ。

この会社には本当に勉強させてもらったと思う。この会社での別なエピソードはここに書いてあるので、興味があれば見てほしい。

2022年6月27日に書いたものを公開したものです。

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