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金は中性子星の合体によってつくられた

前回、AI絡めたコンピュータシミュレーションが天文学を推し進めている話をしました。

今回も、シミュレーションによる仮説で分かりつつあることを1つ紹介します。

我々が手に取れる元素のうち、もし「一番欲しいものは?、」聞かれると、おそらく「金(きん)」という回答が上位に来ると思われます。
他には、プラチナや銀などいわゆる貴金属は価値が高い、とされてます。

なぜ貴重かといえば、なかなか存在しないから、です。

ではなぜ存在しないのか?

実は、貴金属どころか、鉄よりも重い元素(重元素)が宇宙でどのように生成されたのかは、20世紀まで謎なままでした。

鉄までの元素は、いわゆるビッグバンで宇宙が広がって冷えていく過程である程度理屈がわかってきています。
念のために、現在の宇宙に存在する元素組成を載せておきますが、わかりやすく重いほどレアになっていきます。

Wiki「元素」より引用

鉄までが何となくおおく、以降に急激に少なく見えますが、実際にここまでの生成プロセスは、(太陽など恒星が輝くエネルギー源にあたる)核融合のプロセスである程度有望な説でした。
ところが、鉄より重い元素がどういった物理現象に落とし込めるのかは、21世紀にはいってもなかなか有力な仮説が登場しなかったのです。

比較的しられていたのが、下記の2つの説です。問題点も添えておきます。
1.超新星爆発の結果→中性子の数が足りない
2・中性子星(超新星爆発後の一形態)の結果→中性子の数が多すぎる

なかなかちょうどよい中性子加減を示す理論的根拠がなかった・・・ということですね。

そんな中で、コンピュータシミュレーションで一歩進んだ日本の研究がこちらです。

ようは、
上記2の説で、一般相対理論とニュートリノを組み込んだシミュレーションの結果うまく実観測と一致する結果となった、
という話です。

もう少し足すと、一部の中性子が陽子に崩壊し、ニュートリノーがエネルギーとして放出することがコンピュータシミュレーションで明らかになった、ということです。

上記発表の2014年から数年たち、さらに事態は好転します。

上記はあくまで元素組成比があってるよ、だけが裏付けで、では果たして中性子星の合体が起こった時に重元素ができるのか、については何も証拠を提示していません。

その合体時には、あまりに激しい衝突のため「重力波」が存在すると予言されており、2016年ついにその観測に成功します。

こちらについては過去に書いたので委ねます。

上記記事にも書いた通り、その初の発見は、中性子星合体よりもレアな「ブラックホール衝突」という天文現象でした。

その次の2回目の重力波観測が話題の「中性子合体」であり、そこには重元素が含まれることを示す証拠を見つけます。

ということで、現在は金など重元素はこの現象だろうという説が有力になっています。

コンピュータシミュレーションもそうですが、ニュートリノ・重力波などいろんなデータを駆使した、今では「マルチメッセンジャー天文学」と呼ばれる先駆けとなる業績です。

天文学が、最新技術や従来別々に取り組んでいた研究も取り入れた新しい時代に突入しているのが目に浮かびます。

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