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歯ごたえのある味覚の話

以前「香り」について書きました。

実は、香りに次いで、科学技術でコントロールするのが難しいといわれているのが「味覚」です。
エネルギーを蓄える「食」に直結するので、日々の生活において重要性はある意味一番高いです。

そんな「味覚」でこんな記事をみつけました。

要は、
味覚をmRNAで強化は出来るけど、まだ未開の感覚がありそうで奥深いよ
という話です。

まず、味覚の原理ですが、結構20世紀なかばまで誤解があったそうです。
当時は「味覚地図」という言葉があり、舌の個所によって異なる味覚を感知するという考え方です。例えば「苦味」は下の奥あたりとか。

これは科学的に否定されていて、今では舌の多くの場所に存在(但し偏りあり)する、「味蕾(みらい)」が全ての味覚を処理していることが分かっています。

念のために味蕾の解説サイトを1つ紹介しておきます。

難しい話はさておき、次にその「味覚の種類」について触れてみます。

これは常識的にある程度あたりがつくと思いますが、並べてみます。

甘味、酸味、塩味、苦味、うま味

いかがでしょうか? 思ったより少ないと感じた方もいるかもしれませんが、これが科学的に分類された現状の味覚成分です。

よく「足りない」という突っ込みで多いのが「辛味(からみ)」です。

日常的には味覚的な意味合いで使いますが、実は学術的には味覚ではなく、「痛覚」と「温度覚」の組み合わせに分類されます。
もう少し言えば、上記の味蕾ではない、別の受容体(痛みと温度)が反応するということです。

例えば、辛いは「Hot」です。そして熱いも「Hot」ですね。これは偶然ではないわけです。

丁度2021年のノーベル生理学では、この辛味の仕組みを発見した研究者に贈られました。

なお、味覚に話を戻すと、5種類に最終確定したわけではなく、カルシウム味・脂肪味・デンプンの味など6番目の候補もあります。

次に、この味を科学技術でコントロールする話に移ります。

冒頭記事にある通り、mRNAを使って味蕾を操作する案が提示されています。これはもう驚く話ではないですが、むしろ何のために行うのか?のほうが関心があります。
冒頭記事ではヘルシーな食品をよりおいしく感じさせる、とありますが、果たしてそんなピンポイントで味覚が変えられるのか、少々うなってしまいます。
というのも、私自身が、大人になってヘルシーな食品がおいしく感じ、逆にジャンキーな食品が嫌いになったので、遺伝子編集する必要性を感じてないからです。
あくまで個人経験に基づく意見なので、例えば摂食障害の方向けとかならありうるかもしれませんね。

次に興味深いのが、人間の味覚力を改変するのではなく、好きな味を表現するアプローチです。
ちょうど香りではそういった研究が進んでいますが、味覚ではどうでしょうか?

味覚は5つに分類されており、その度合いを数値化することでデジタル表現する研究は以前からあり、日本例は下記サイトでいくつか紹介しています。

これはあくまで数値化することで視覚的に表現したケースです。それをもう少し発展させると、人間にその味を感じさせる研究です。

これについても同じく日本で野心的な取り組みがあるので1つだけ紹介しておきます。

味覚ディスプレイ」。これは素直に面白いですね。どこまでのメニューが整っているかわかりませんが、実際になめて体験できるのは本当に説得力があります。

味覚はある意味、生命活動を支えるだけでなく生活を彩る精神的な効果もあるため、意外に商用化までさくっと進むかもしれません。

振り返ると人間の五感は解明が進むどころか、デジタルで表現することすらできているわけです。
メタバースという流行語がありますが、視聴覚だけでなく5感をフルに疑似体験できると、より豊かな体験が出来そうですね。

まずは一度の「味覚ディスプレイ」をどこかで試してみたいと思います☺

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