見出し画像

ハンドボールにハマる瞬間

今回は年末に行われた、読売大会中学生の部にGKコーチとして帯同したときの体験を言葉にして残しておこうと思う。

10年ぶりに読売大会に戻ってきた!

小中学生を対象にした読売大会は、関東中のクラブや学校が集い、多くのチームが大きな目標として掲げる大会だ。コロナが無ければ年末に泊まり込みで行われ、子供ながらにワクワクしながら参加した記憶がある。関東のハンドボーラーにとって思い出深い大会の一つだろう。

2020年の読売大会は感染拡大に伴って、茨城県での開催になった。筑波大のハンドボール部から毎年コーチとして学生が指導、帯同している。ありがたいことに私も練習を見させてもらうと共に、この大会にも帯同させていただけることになった。

私自身、小学校、中学校共に読売大会を経験しており約10年ぶりに同じ大会に参加できると言うことで楽しみにしていた。

帯同したのは私の母校、手代木中学校で顧問の大原先生と学生コーチの佐藤華依君が主にコートプレーヤーをコーチング、私はゴールキーパーのサポートを担当していた。私の得意なポジションはウィングだが、大学時代のミニミニカップではGKを経験、デンマークでもGKトレーニングに興味を持って講習会に参加していた。ただ、本職の方々と比べると知識も経験も劣る、子供達がゴールを守ることを楽しいと感じてくれさえすれば良いと思っていた。

モチベーションを保つためには

ただ試合を行うだけでは実りが少ないと思い、毎試合セーブ率を出すことにした。枠内に飛んできたシュートをどれだけセーブできたかという指標で、試合に勝利するというチームとしての目標とは別に、個人的に挑戦できる小目標を設定することがねらいだ。

コロナの影響でただでさえ少ない試合数がもっと少なくなってしまった、例え点差が大きく開いた試合でも気持ちを切らさずに戦い切って欲しかった。

今大会はまず3チームによる予選リーグが行われた後、決勝トーナメントを行って優勝チームを決める方式。

GKは1年生にひとり、2年生にひとりで合計2人。2年生のGKがスタートから試合に出ることが多かった。セーブ数を数える傍ら、1年生のGKとあれやこれやと話をして、点差がついた後半には彼の出番がくる。戻ってきた2年生のGKとセーブ率の報告とポジショニングを確認する。そんな一連のルーティンが3試合続いた。

二人とも、「数字」という目に見えるパフォーマンスのおかげか、後半になっても集中力を切らさずに戦い抜いてくれた。言葉数少なめだった2年生のGKも質問してくれたり、練習のリクエストをしてくれるようになった。

はじめは誰でも「何を聞いたらいいかわからない状態」、シュート1本1本と向き合って、「どうやったら止められるか」を考え続けてくれた。その結果「わからないことが少しわかった状態」になって、そんな質問をしてくれたのだろう。

圧倒的な成長と神がかったセーブ

結果からいうと手代木中は準々決勝で東京1位の東久留米西中に22-12で敗北し大会2日目で全日程を終了した。

しかし、その試合で私はとんでもないプレーの数々をみた。

2年生GKがいつも通り先発、セットDFはしっかり守れていたものの相手の厚いDFを攻めきれず多くの速攻の展開を許した。いつもなら勢いに押されてゴールを許していただろう。しかし、その試合の彼は神がかっていた。

試合開始直後からサイドシュートを連続セーブ。相手の上手なポスト展開も、大胆な前への詰めからセーブ。20分の前半だけで7セーブ、確率は驚異の41%だった。

後半、相手のさらなる勢いに押され点差がどんどん離されていく展開に。それでも勝負所のシュートはしっかりとセーブした結果34%のセーブ率を記録した。

押されている展開ではセーブ率は20%代になることもしばしば見受けられる。それにも関わらずこのセーブ率はありえない。計算してびっくりした。

セーブ率を出していなくて「計算はしてないけどすごく止めた」とならずに済んだことは本当によかった。

ハンドボールにハマる瞬間

その試合でコーチとして一番嬉しかったのは、その2年生GKが主体的にプレーをしているように見えたことである。相手のシュートをどう止めようか1試合を通して考え続け、自分のねらい通りにセーブすることができた。DFとも積極的にコミュニケーションを取りながら、コースを限定していた。

経験したことがある方ならわかっていただけると思う。どうやったら勝てるか考え続け、自分の力が100%出た結果、相手を打ち負かしたときの快感を。

試合を通して、彼がハンドボールにハマる瞬間を私は見たのかもしれない。

試合には勝つことは出来なかったが、彼の成長、もっと言えば見方を引っ張っていこうとする人間的な成長と、GKとしての成長の両方を見れたことが何より嬉しいかった。

私自身こんな瞬間をもっと味わってみたいと思った瞬間だった。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

この記事にご意見、ご感想があれば是非コメントにてお願いします。
引用リツイートも大歓迎です。

SNSでシェアしていただけると飛ぶほど喜びます。
本日もお疲れ様でした!

筑波大男子ハンドボール部 森永 浩壽

2022年の今、フルタイムで働きながら日本リーグ参入を目指すハンドボールチーム"富山ドリームス"の選手として活動しています。ここでのサポートは自身の競技力の向上(主に食費です...)と、富山県内の地域との交流に使わせていただきます。