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米国名門VCが提唱する初期スタートアップの成長戦略 前編 ~北極星指標とは~

1.スタートアップの北極星指標

①はじめに

米国の名門VCであるSequoia Capitalやa16zがアーリーステージのスタートアップは「North Star Metrics」を策定するべしと提唱しています。
そのNSMについて調査し、私なりに解釈した内容を記載します。スタートアップの経営者に限らず、新規事業担当者の方や事業成長を推進する方の参考になれば幸いです。

②「North Star Metrics」=「北極星指標」

「North Star Metrics」直訳すると北極星指標。

北極星は天の北極に最も近い輝星のことです。常に真北で輝いていることから、古代より自らが正しい方向に進んでいるかを確認するために用いられてきました。
スタートアップにおいても、組織全員で目指すべき方向に進む事が出来ているかを確認するための「北極星」のような働きを担う「たった1つだけの指標」を策定することが重要です。
※プロダクトやサービスごとに1つの「北極星指標」が望ましいですが、マネタイズポイントが複数ある場合などはその限りではありません。

③スタートアップが北極星指標を策定する重要性


特に初期の段階のリソースが限られるスタートアップにおいて、指標が何であれ、会社全体の優先順位が明確になり、組織全員が同じ方向に向かってエネルギーを集中投入できるようになることは非常に大きな効力を発揮します。

Airbnb、Netflix、Uberといったスタートアップでは初期の段階で「北極星指標」を策定し、大きな効力を発揮しました。
ここから「北極星指標」の具体的な策定方法や事例を紹介します。

2.一般的な「指標」の分類と企業の活用率

大きく分けて、「北極星指標」となりうる指標は6つに分類できます。

一般的な指標を6つに分類し、企業による指標の活用率をまとめた図
  1. 収益(例:ARR、GMV)
    プロダクトやサービスが生み出すお金の量を測る指標です。最も多くの企業が指標として活用しています。

  2. 顧客拡大(例:有料顧客数、顧客の有料版への転換率)
    有料顧客の成長度合いを測る指標です。約35%の企業が指標として活用しています。

  3. 利用数(例:無料登録者数、サービスへのアクセス数)
    プロダクトやサービスの利用や消費の成長度合いを測る指標です。約30%の企業が指標として活用しています。

  4. エンゲージメント(例:MAU、DAU)
    プロダクトやサービスをアクティブに利用している顧客の増加度合いを測る指標です。約30%の企業が指標して活用しています。

  5. 成長効率(例:LTV、CAC)
    プロダクトやサービスの収益効率や費用対効果を測る指標です。約10%の企業が指標として活用しています。

  6. ユーザー体験(例:顧客アンケート、NPS)
    顧客が製品体験をどれだけ楽しく、また使いやすいと感じているかを測る指標です。あまり活用されていません。

スタートアップのように圧倒的スピードで事業を成長させたい場合に最適な「北極星指標」はどれなのでしょうか?
a16zが公開しているスタートアップ数十社の「北極星指標」は下記のようになりました。

3.高成長を実現した米国スタートアップの「北極星指標」

米国で高成長を実現したスタートアップ数十社をビジネスモデル別に分類し、どんな指標を「北極星指標」としているかをまとめました。

AirbnbやUberといったスタートアップは「収益」を指標とすることを避けている
  • マーケットプレイス&プラットフォーム
    サービス内の取引や利用回数に対して収益を得るモデルのマーケットプレイスやプラットフォームビジネスは取引量や利用回数が増えれば増えるほど早く成長できます。そのため、AirbnbやUber、Twilloといったスタートアップは③利用数(宿泊予約数やメッセージ送信数など)を「北極星指標」としています。

  • フローモデル(商品販売型)
    DtoCなどの商品販売で収益を得るモデルのビジネスは競合優位性を保つのが難しいため、マーケティングが重要になります。マーケティングコストが膨らみやすいため、⑤成長効率(Life Time Value)顧客獲得コスト)を「北極星指標」とするスタートアップが多いです。

  • B向けフリーミアム型
    法人向けSaaSなどを提供し、リカーリング収益を得るモデルのビジネスは無料ユーザーから一定の利用レベルに達した後に有料プランにアップグレードするモデルが大半を占めます。
    そのため、これらのビジネスを展開するスタートアップは④エンゲージメント(無料顧客にどれだけ愛されるプロダクトになっているか?)や②顧客拡大(有料顧客がどれだけ増えているか?)を「北極星指標」としています。

  • コンテンツ作成サブスク型
    顧客によるコンテンツ作成が成長の原動力になるプロダクトの場合はネットワークエフェクトを起こすことが重要です。
    そのため、これらのプロダクトを提供するスタートアップは③利用数(どれだけ多くの人が利用しているか)が「北極星指標」となりやすく、④エンゲージメントが選択されるケースもあります。

  • 広告主体型
    広告を掲載して収益化を図るモデルのスタートアップは全て④エンゲージメントを「北極星指標」としています。広告が流れることが顧客満足度を低下させるため、それを補って余りある高いプロダクト愛着度の創出が重要となるためです。

  • C向けサブスク型
    C向けのプロダクトを提供するスタートアップもB向けフリーミアム型モデルと同様に②顧客拡大④エンゲージメントを「北極星指標」としています。
    語学学習アプリなどは無料顧客のエンゲージメントを高めることで、有料顧客の増加に繋がるからです。一方で、出会い系アプリなどは恋人ができた場合など自然な解約が一定程度発生するため、有料顧客数の方が重要視されています。

  • UX差別化型
    ユーザーがそのプロダクトをどれだけ楽しく、簡単に、便利に使えるかといったUXだけで勝敗が決まるモデルの場合は⑥ユーザー体験を「北極星指標」としています。何よりもプロダクトの品質や製品体験を重要視しているからです。

4.まとめ

上記のように「北極星指標」となり得る指標や実際に「北極星指標」の事例を紹介しました。
最も重要なことは自らのプロダクトやビジネスモデル、顧客がプロダクトを利用する状況やタイミングなど様々な分析を踏まえ、最も成長を加速させることのできる「北極星指標」を策定することにしっかりと時間を割くことです。ここを省いて、多くのKPIを追いかけてしまうと成長を加速させることが難しくなります。

また、ここまででお分かりの通り、「収益」を「北極星指標」とすることを多くのスタートアップは避けています。MRRやGMVなど一般的には「北極星指標」となりそうな指標はなぜ避けられているのか?より詳細な「北極星指標」の策定方法について後編で記載いたします。

米国名門VCが提唱する初期スタートアップの成長戦略 後編 ~北極星指標の活用~|田中 洸輝🏈「Incubate Fund」アソシエイト|note

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(参考)その他「北極星指標」事例

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