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私は障害児に選ばれた母親ではないです、ただの平凡な人です

我が家には、脊髄髄膜瘤で生まれたので、生まれつき歩けない息子がおりまして。
息子は今は10歳になり、車椅子で生活をしています。

で、私は、テレビのチャリティー番組に出てくるような、母親が身も心も全てを育児に専念している障害児子育てがとても苦手でして。

例えば、
「母親がスーパーキャリアを捨てて障害児育児に専念した結果、
3歳までしか生きられないと言われていたのに、
今年、高校生になりました、お母さんありがとう」
とか。

「一生歩けないと言われていたけど、
母親の24時間365日にわたる献身的なリハビリによって、
なんと歩けるようになりました、
お母さんありがとう」
とか。

母さんが夜なべをして手袋編んでくれた系の話がとても苦手なんですよね。

なぜ母親だけ頑張ることが美徳とされるのか、分からないんです。

障害児の育児は母親ひとりでは出来ませんので、お父さんの話も、その子の兄弟の話も聞いてやれ、と思うんですよね。


というのも、障害のある息子を産んだときに、
「障害を持った子供を産んだ母親が、献身的に育てるべき」
というメッセージをまわりから洗脳されまして。

なぜ母親だけが洗脳を受けるのか、ものすごく違和感があったんです。

で、先ほどの。
障害児が生まれた時に、「障害児を産んだ母親が、献身的に育てるべき」という洗脳を受ける話なのですが。

洗脳はストレートに「母親が育てなさい」と言われる訳ではなくて。
洗脳とは分からないように、キラキラのキーワードで語られるんですね。

一番言われた洗脳キラキラキーワードは、
「あなたは障害を持った子供から選ばれたのよ」
という言葉でして。

これは、自分の母親世代だけではなく、自分よりも若い人からも多数言われました。

障害を持った子供は母親を選んで生まれてくる、だから、あなたは障害を持った子供に選ばれたのよ。
選ばれたすごい人なのよ。
あなたが障害児を育てることは生まれる前から決まっていたことなのよ。
あなたならできるわ、だって選ばれた人なんだもの。

おそらく、このことを言った人は、落ち込んで希望を失っていた私を慰めるために、何も考えずに言ったのだと思うのですが。

どう考えても私は、今までに子供に優しかったわけでもないし、前向きでもないし、慈悲深い人間でもありませんし。そのうえ金持ちでもないですし、どこにでもいる地方の普通の会社員の女なんですよね。

だから、今までの人生で輝いたことも目立ったこともない平凡な私に、
「あなたは障害児から選ばれた母親なのよ」
と言われても。
ものすごく違和感があったんですよね。

私には、自分が、今後も誰からも選ばれることはない人生を送るはずだと思っていましたから。
「選ばれたすごい人」と言われても違和感しかなくて。
なぜ平凡な私に「選ばれた」というキラキラなことを言うのか、わけが分かりませんでした。

でも、10年間、重度障害児の息子を育ててみて思うことは。
「あなたは障害児から選ばれた母親だ」と言う言葉は、
「障害児は母親が育てるべき」という言葉の変形なんですよね。

実際、障害児の育児というのは、育児という名ばかりの、ただの介護ですので。介護離職が叫ばれるように、誰もがやりたくないことなんですよね。

我が家の息子の場合には、3歳ごろまで呼吸が不安定でしたので。
24時間365日、見守りが必要で、そうなると、親は24時間365日の間、見守りのために常に寝不足ですよね。

今思うと、息子もよく死ななかったなと思うのですが。
私や夫も、高齢なのに毎日浅い睡眠で、よく死ななかったなと思います。

そういう、介護している側も命を削られるような、努力と根性と体力と運だけの毎日でした。

さらに、子供の介護をしている間は働けませんので、収入はゼロですね。
それどころか、おむつ代ですとか、通院のための費用なんかは自分たちで出さなければならないのでマイナスです。

だからそういったきつい仕事を母親に押し付けるために、
「あなたは障害児に選ばれてき母親なのよ、
努力と根性であなたならできるわ」
と信じ込ませて、育児という名の介護をさせてるのかなとも思えますね。

だから、障害児を産んだ人は、一度は、
「あなたは障害児に選ばれた母親なのよ」
とまわりから言われたことがあると思うのですが。

洗脳かもしれないから、人からの良い言葉は聞き流してください。

(追伸)
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