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介助者の「卒業」

「旅立ち」の季節がやってきました。
学生さんにとって、卒業、入学、そして就職という新たな門出の季節ですね。今年は、介助者として僕の生活を支えてくれていた学生さんも大学を卒業し、介助のアルバイトも卒業して新しい道を歩みだしました。
今回は、「学生介助者」についてお話ししたいと思います。

期間限定のお仕事

僕たち、在宅で生活をする重度障害者はたくさんの介助者に支えられてはじめて安心して24時間生活を送ることができます。
その日頃を、サポートしてくれる介助者のみなさんは、転職で介護の道に来る方やダブルワークの一つとして来る方、福祉の学校で介護を学んで資格を取ってから来る方や、動機は人それぞれですが、その多くの方は福祉未経験で年齢もさまざまです。
その中でも現役の大学生は「学生介助者」として主に学校が休みの週末にアルバイトとして介助を担ってくれています。
学生介助者は他の介助者と違い、介助の仕事の期間が大学卒業までのことが多く、任期付きの介助者といえますね。

学生介助者って?

学生介助者は当然ですが、学生らしい若々しさを持ち、未来に向けてキラキラと輝いている青年たちです!(個人的感想です)やんちゃな子もいます!自分と比較してしまうのは年を取った証拠ですかね(笑)
学生介助者は、当然ながら学生さんなので学業を優先したうえで介助に入る訳ですが、介助のスキルは同じく求められます。例に挙げると、体位の調整や移乗介助、トイレ介助など、今まで他人の身体に多く触れる機会なんて少ないので初めは恐る恐るですが、何度も練習(介助研修)を行いお互い安心できるまで研修を行うのです。抱えられている人(本人)でないと、わからない感覚かもしれませんが、抱える腕からは緊張や疲れなどの気持ちや感覚が介助者の腕を伝って感じるのです。伝わってくる分、はじめは落ちるかもしれない!と毎回僕もビクビク!結構ビビッてますね。なので、自信をもって安全に移乗できた時にはお互い分かりますから、それは喜びもひとしおです。

学生さんの多くは実家暮らしが多く、男子というのもあるかも知れませんが家事スキルはそこまで高くありません…(たまにめっちゃ家事スキルが高い子も!)ですが、お仕事なので洗濯や調理、掃除などの家事介助ももちろんやっていただきます。洗濯物の干し方が分からず各ハンガーは毎回縦向きになったり。お肉を切るのに包丁で叩ききったりと、色々一緒にやっていくうちに彼らの生活力が見えてきて面白いです。知らなかったことや、苦手なことも介助に入るうちに慣れていき洗濯物がキレイにたためるようになったり、包丁使いも上手になったりと上達に驚くことも。自分のことのように嬉しくなります。
できないことを代わりにやってもらうことは、ときに誰かのできるに変えることができます。できないことを通して経験にもつながっているのかなと思います。

学生さんは共通していることがあります。それは僕の「こえ」を聞こうと一生懸命耳を傾けてくれます。これが意外と難しいのです。しっかり聞き取ろうとしてくれるのはもちろんですが、指示を理解しようとする姿勢がとてもすごいです。それを一番感じるのも学生介助者なのかもしれません。
説明はすべて声だけなので、僕の声からやって欲しいことのイメージを膨らませて初めてのことでもやらなくてはなりませんから、これは結構集中力が必要です。(身振り手振りできたらな~)おかげさまで、伝える力を日々鍛えてもらっています!

信頼関係は会話から

介助の仕事は、力を使うイメージがありますが、実際にはコミュニケーション力が重要じゃないかと僕は思います。(もちろん体力も必要ですが)信頼関係は会話からも生まれますからね。介助者には、自分の身体や生活のすべてを把握してもらう必要がありますので、信頼できることがとても重要です。いくら介助を器用にこなせても信頼関係が築け無ければ、介助に入り続けることはできません。コミュニケーションがスムーズにとれるか、どうかで生活の質も大きく変わります。
僕の場合ですが、今までの学生介助者は、話し好きの方が多く会話をたくさんしました。学校のことや勉強のこと、お出かけの話しや、将来に向けての夢や目標を語ってくれることもありました。自分の知らない世界をたくさん教えてくれます。僕もたくさん話をしましたね。たわいもない会話のひとつひとつが大切で、お互いを理解し合うのにはこのコミュニケーションがとても重要だと思う。

1年過ぎるごとに互いに成長

1年また1年と、時が過ぎるごとに介助技術も上達していきます。そして、伝える側も伝わりやすい伝え方に洗練されていきます。
理解が深まることでサポートを受ける側も安心して委ねられますし、サポートをする側も自信をもって介助に入れるのだと思います。
ここまでに至るには「利用者」「学生介助者」という関係であるものの、何気ない普通の日常を共に過ごして、いろんな気持ちを一緒に感じながら、同じ時間を共有してきたからかもしれません。

心強くサポートしてくれた、学生介助者も大学の卒業と同時に、介助の仕事も卒業になります。
今回、卒業した学生介助者の彼は、大学院でも介助を続けてくれて4年と半年間支えてくれました。はじめの頃は、落ち着きが無く失敗することも多かった彼ですが、今となっては頼りになる介助者の一人です。同じ時間を一緒に楽しむことをいつも大切にしてくれて、僕がどのように生活をしたいのか常にアンテナを立て続けてくれました。真剣に向き合ってくれた彼には感謝の気持ちでいっぱいです。
この春からは、社会人一年目として新たな新天地で就職につきます。寂しい気持ちもありますが、彼のこれからの活躍に期待しつつ、見守っていきたいと思います。

お疲れさま。
卒業おめでとう。


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