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中国スタートアップ 資金調達Weekly Report_2021/05/28-2021/06/03_22w

こんにちは!
中国大好きな竹内雄登です。
ソフトバンク投資部門でのベンチャー投資業務を経て、先の4月末までSPEEDAというデータベース向けに中国産業調査をしていました。現在は、無職で人生を楽しみながら、中国への移住方法を模索しています。

今年の2021年から、ITjuziというデータベースの情報をもとに、Weeklyで中国スタートアップの資金調達状況について発信することにしました。
このWeekly Reportでは、主に以下3点についてまとめていきますので、お時間がない方は気になる箇所だけでも、ぜひご覧ください。

・各週の資金調達案件まとめ
 - 資金調達件数(日次、業界別、都市別、ラウンド別)
 - 投資金額(日次、業界別、都市別、ラウンド別)
 - 資金調達実施企業リスト
・上記資金調達により、新たにユニコーンになった企業
・投資案件数上位10の投資家

では、早速本題に入りたいと思います。

1. 日次 資金調達件数・金額

2021年の第22週目である5月28日〜6月3日における、日次の資金調達状況を見ていきます。

[資金調達件数]
5月28日〜6月3日の週は、合計107件となりました。
また、1月1日からの資金調達件数の累計は2,249件となりました。

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[調達金額]
非公開や曖昧な情報を除き、公開されている情報のみを集計したため、あくまで参考としてのデータですが、5月28日〜6月3日の週では、公開金額合計で134.6億元の資金調達が行われました。
また、1月1日からの調達金額の累計は2,982.4億元となりました。なお、今週の107件のうち68件が金額非公開のため、単純計算すると、今週の調達金額は集計できた金額の約3倍の規模になると考えられます。

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2. 業界別 資金調達件数・金額

では、業界別に見ると、どうなっているのでしょうか。

[業界別 資金調達件数]
今週の107件の内訳を見ていきます。
業界別に見ると、医療・健康の資金調達件数が最も多く、合計24件となりました。次いで、法人向けサービス、Eコマース、ローカルライフサービスが上位に入り、上位4業界だけで今週の件数全体のうち61.7%を占める結果になりました。

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1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、上位4業界の医療・健康、法人向けサービス、先進製造、ローカルライフサービスだけで、全体の58.6%を占めています。

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[業界別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度のデータですが、今週は自動車・交通、医療・健康、法人向けサービス、農業の順に多く、上位4業界で全体の73.4%を占めています。

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自動車・交通が1位にランクインした主な理由は、滴滴(DiDi)の自動運転子会社である滴滴沃芽科技が3億米ドル(約19.5億元)を調達したためです。今回のラウンドから、広州汽車が株主になりましたが、既存株主にはソフトバンクビジョンファンドやIDG Capital、CITIC PEなどがいます。

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話を戻して、1月1日からの調達金額累計を業界別に見ると、医療・健康、Eコマース、物流、自動車・交通の順に多く、上位4業界だけで全体の59.1%を占めています。

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3. 都市別 資金調達件数・金額

続いて、都市別の内訳を見ていきましょう。

[都市別 資金調達件数]
今週の107件を都市別に見ると、上海、北京、深圳、杭州の順にランクインし、上位4都市だけで全体の64.5%を占める結果となりました。

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1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、上位4都市の北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)だけで67.2%を占めています。
また、先週に引き続き、上位10都市のみで累計投資件数の約84%を占めていることから、投資は一部の都市に集中していることがわかります。

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[都市別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度にご覧いただきたいのですが、今週は上海、黒竜江、深圳、北京の順にランクインしました。なお、今週ユニコーンになった3社は全て上海に本拠地を置いていることもあり、上海の調達金額が多い結果となりました。

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また、1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、北京、上海、深圳、長沙に集中していることがわかります。次いで、先週に引き続き5位以降は蘇州、杭州、広州が競り合っています。

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4. ラウンド別 資金調達件数・金額

ラウンド別に見るとどうなっているのでしょうか。

[ラウンド別 資金調達件数]
今週の107件では、シリーズAが36件で1位、戦略投資が27件で2位になりました。これら上位2つのラウンドだけで全体の58.9%を占めています。

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1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、先週に引き続き、シリーズA、戦略投資、シリーズBの順に多いです。シード/エンジェルラウンドの件数も日に日に上昇しており、総じてアーリーステージの企業による資金調達が活発であることがわかります。

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[ラウンド別 調達金額]
公開情報のみをもとに集計した調達金額をラウンド別に見ると、シリーズBが最も多い49.4億元となり、全体の36.7%を占めています。次いで、戦略投資が33.0億元で2位となり、全体の24.5%を占め、上位2つのラウンドで全体の61.2%を占める結果となりました。

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1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、戦略投資、シリーズA、シリーズBの順に多く、上位3ラウンドでの合計は全体の58.1%を占めています。

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5. 今週、新たにユニコーンになった企業

今週は3社が新たにユニコーン企業となり、中国のユニコーン企業数は2021年6月3日時点で294社*になりました。
*ITjuziが公開しているデータのため、その他データベース等がまとめている数値と異なる可能性があります

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[1社目]
企業名:纵目科技

業界:自動車・交通
拠点:上海
設立時期:2013年1月
バリュエーション:11.4億米ドル/74.1億元
主要な投資家:湖州环太湖集团, 朗泰资本, 重庆长信智汽, 日本电装, 高远资本, 君联资本, 高通Qualcomm Ventures, 同创伟业, 小米集团, 上海科创, 晶凯资本, 复星创富
企業HP:http://www.zongmutech.com

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同社は自動運転技術の開発を行なっており、 SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)をはじめ、自動駐車支援(APA)、自動バレーパーキング(AVP)、360度サラウンドビューADASなどのシステム開発だけではなく、超音波センサーやミリ波レーダーなどの開発・製造も行なっています。

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同社は、中国の自動運転技術の開発企業としては初めて、自動車メーカーからレベル4の量産プロジェクトを受注しており、一汽紅旗や長安汽車など多くの国内OEM企業と量産パートナーシップを結んでいます。

今回の投資ラウンドでは、日本のデンソーのほか、シャオミや同创伟业(Cowin Capital)がリードインベスターとなり、合計1.9億米ドル(約12.4億元)を調達しました。

リードインベスターの1つであるシャオミは、2021年3月30日にスマート電気自動車分野への参入を正式に発表しましたが、 纵目科技は、シャオミによる自動車製造の発表後、最初に投資した企業です。 今回の投資を通じて、纵目科技は、シャオミと多次元的な協力関係を築くことが期待されています。


[2社目]
企業名:蜻蜓FM

業界:メディア
拠点:上海
設立時期:2002年2月
バリュエーション:10.8億米ドル/70.0億元
主要な投資家:微木资本, 小米集团, 百度, 智度股份, 前海母基金, 中民投, 国中创投, 
成为资本, 中国文化产业投资基金, 优酷, 东方证券, 经纬中国, 五源资本, 顺为资本, 聚合资本, 创新工场
企業HP:http://qingting.fm/

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同社は音声コンテンツプラットフォームを提供しており、ポッドキャスト、オーディオブック、音声ライブ配信などが人気のコンテンツです。現在、3大音声プラットフォームがありますが、蜻蜓FMはその1つです。

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音声コンテンツの市場規模は2019年に175.8億元でしたが、2022年には543.1億元に達する見込みで、たくさんのプレイヤーが参入しています。例えば、ショート動画プラットフォームを展開するバイトダンスや快手(Kuaishou)も参入していますし、ゲーム大手のネットイースも参入しています。

蜻蜓FMはシャオミ、バイドゥ、アリババ(Youke)から出資を受けており、各社のエコシステムに入り込むことを模索しています。実際に、蜻蜓FMはすでにシャオミ、アリババ、バイドゥのスマートスピーカーでの配信を行っています。ほかにも、家電メーカーのハイセンス、Hisense)・ハイアール・美的(Midea)などのスマート家電で、アップル・ファーウェイ・サムスンなどのウェアラブルデバイスで配信しています。


[3社目]
企業名:票易通

業界:法人向けサービス
拠点:上海
設立時期:2015年6月
バリュエーション:10.0億米ドル/65.0億元
主要な投資家:Dragoneer Investment Group, 和玉资本, 华泰创新, 淡马锡Temasek, 钟鼎资本, 高瓴资本, IDG资本, 丹华资本, 高顿教育
企業HP:http://www.xforceplus.com

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同社は発票電子化のSaaSを提供しています。具体的には、サプライチェーン・コラボレーション、買掛金管理、売掛金管理、アーカイブといった4つのソリューションを提供しており、ユーザーのコスト削減、業務効率化、リスクコントロールを支援しています。

中国には航信、百望という税務管理のプラットフォーム企業がいるのですが、票易通は全国で唯一それらのデータベースにアクセスできる資格を持っています。

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同社は不動産、小売、飲食、物流業界に多くユーザーを抱えており、小売ではウォルマート、物美(WUMART)、飲食ではマクドナルド、バーガーキングがユーザーにいるほか、アリババやヒルトンなども同社のサービスを利用しています。


6. 今週、資金調達を行った企業リスト

2021年5月28日〜6月3日に資金調達を行った企業は以下の通りです。

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今週気になった案件は、创新奇智(AInnovation)による資金調達案件です。中国におけるスマート製造の文脈で有名な同社ですが、今回ソフトバンクビジョンファンドから出資を受けたことがわかりました。

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创新奇智(AInnovation)は、創新工場(Sinovation Ventures)というVCの子会社で、マシンビジョンやディープラーニングなどのAI技術を活用し、主に製造業・金融業・小売業などの企業向けにAI関連製品やビジネスソリューションを提供しています。

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中国のスマート製造にはAIスタートアップが多く参入している他、BATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)が参入しています。ソフトバンクビジョンファンドは今までスマート製造分野へ投資をしていないと記憶しており、今回の投資を皮切りに、スマート製造分野への投資を加速させる可能性がありますので、引き続き注目していきたいと思います。

7. 今週末時点での投資件数TOP10の投資家

2021年の投資件数TOP10の投資家は以下の通りとなりました。
※順位の矢印は先週との比較を表しています

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テンセントは今週4件の投資を行い、先週に引き続き1位にランクインしました。今週は、法人向けサービス、ゲーミング、医療・健康、不動産にそれぞれ1件の投資がありました。

また、セコイアチャイナも先週同様2位にランクインしました。
今週の投資案件は2件となっており、医療・健康、Eコマースにそれぞれ1件の投資をしています。



以上、今週の中国スタートアップ資金調達レポートでした。

今後も毎週レポートしていきたいと思いますので、よかったらスキとフォローをお願いします。

お問い合わせは以下にて受け付けております。
竹内 雄登(Yuto Takeuchi)
Twitter:https://twitter.com/yuto_takeuchi01

注:
・本noteは速報の位置付けとしています
・事実を整理し、定期的に投稿することを目的としていますので、特定企業の分析や各社の投資傾向に関する情報が薄くなることはご了承ください
・本noteにおける中国スタートアップは、中国を拠点とする非上場企業を指します
・投資件数・金額およびその他データは本note投稿時点にITjuzi上で集計できたものを反映していますので、後日ITjuziのデータが修正・削除された場合、Weekly Reportの前後で数値のずれが発生する可能性があります。ずれが発生した場合、遡及して過去分を修正しませんので、ご了承ください

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