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#2 腐女子の芽生え「バディもの」

こんにちは、ステルス腐女子です。
家族に内緒で始めた連載ですが、とても楽しくてBLのことばっかり考えています。どこまで続くかな。バレずに続けられるかな。

そもそもなんでBL沼に落ちてしまったのか。

オタクが落ちる楽しい世界「沼」についてはこちらのコラム「沼へようこそ」で解説していますが、BL沼も地獄のように深いです。
この沼に落ちるきっかけってホントどこにでもあって、なんならBLという言葉すら知らない頃に出会った作品が、適正を持つ人間にとってのハエ取り紙になってるようにも思います。

腐女子のリトマス試験紙「バディもの」

結論から言っちゃうとバディもの、つまり「熱い男の絆」に魅力を感じるなら腐女子の素養ありではないかと思います。
バディとは、「相棒」の意。厚い信頼をよせて仕事を共にする仲間のことです。
血縁や利害を超えた強い絆で結ばれた二人の、命を預けるほどの信頼関係は、物語を盛り上げる最高のエッセンス。たとえば敵に囲まれたなかで、背中合わせの男二人がニヤリと笑うシーンなんか超かっこいいですよね!
…って感じのシーンに「カッコイイ」以外の萌えを、ときめきを感じるなら、リトマス反応してます、絶対

100年前に生まれた最強バディ

バディな2人の代表格といえば19世紀の英国で生まれた最強コンビ、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスン。
あまりにも有名すぎて、「原作を読んだことないのに知ってる」なんて人も多いのではないかと思います。

ごくスタンダードに紹介をすると、ダートムアという英国の地方を舞台にした、伝説の魔犬と呪われた一族にまつわる殺人事件の謎解きストーリー…なのですが、本作、私的にはたいへん萌えました。
特にバスカヴィルはジョンがかっこいいので、いわゆる「キャラ読み」派にも強くおすすめしたい。

この二人の萌えポイントをザクッと整理すると、こんな感じ。

シャーロック
・非凡な天才、友達が少ない
・一見わがままだが、ジョンに絶大な信頼を寄せている。
・というか、ジョンがいるからこそ気ままに振る舞えている
・自身は結婚に興味がなく、ジョンが結婚したときには落ち込んでいた
ジョン
・地に足の着いた常識人
・アフガン戦争帰りの傷痍軍人で実は武闘派
・シャーロックの身勝手にプンプン怒りながらもその才能を眩しく思っている
・自分がシャーロックに依存されていることに気付いていない

シャーロックはジョンを振り回して怒らせた挙句、「ぼくに友達は君しかいないんだ、もう君を怒らせるようなことはしないよ」なんて事をしゃあしゃあと言い、ジョンは腑に落ちないものを感じつつもしぶしぶ怒りの矛を収めます。犬も食わない夫婦喧嘩かな?
100年を超えてなお、新しいファンを増やし続ける超名作。ファンの手による二次創作もまだまだ生まれ続けています。そして英国にも確実にいますよ、腐女子のシャーロキアン。

同様の構図は、夢枕獏「陰陽師」にも見られます。

中国の動画サイトで「忠犬攻×腹黒女王受!不可逆!!」って書いてあるのを見て、いろんな意味でめっちゃわかるって思いました。(でも私は可逆だな…)

しがらみにとらわれつつも惹かれあう男たち

男性どうしの友情と恋愛のボーダレスな描写に定評のあるハードボイルド作家、高村薫。

「グリコ・森永事件」をベースに書かれた作品。刑事の合田と、義兄(元妻の兄)の検事の加納が「レディ・ジョーカー事件」で捜査を進めるのですが…合田と加納はいつしか唯一無二の存在として互いを求めあうようになっていきます。
公人として、同性として、かつての家族として互いを認め合う二人の友情を超えたやり取りがスレスレに熱い。腐女子でなくても、二人の絆には胸を打たれるのではないでしょうか。
彼女の作品を読んでいると、友情と性愛に区別なんか無いのだと思えてきます。しがらみに囚われながら惹かれ合うおじさまの苦悩にお前らもう付き合ってくれ!って言いたくなってくる。(言ってる)

ライバルものの色気!

バディと表裏一体なのがライバル。とくに少年漫画のライバルものはやばいです。

「ライバル」とは、「相棒」と似て非なるもの。互いにむけた執着に感じる魅力を「色気」と呼ぶのって、そんなにおかしいことではないでしょう。色々あるけど、ここでは本作を推したい。

たしかにライバルもの少年漫画として始まっているのですが、ジョースター家の血脈とディオ・ブランドーの100年を超える因縁が、禍根を超えた絆になってしまっています
ジョジョキャラクターはみんなセクシーなのですが、そのなかでもDIOは別格ですね…
なお、少年漫画の人気作はだいたい腐女子の餌食になっています。内緒だよ?

つまり、男の絆に萌えれば腐女子ってことですか?

NO---------!違う!違います!
ホームズとワトソンの冒険にドキドキしても、イコール腐女子というわけではありません!

それはリトマス試験紙が反応している段階。単に腐女子の素養ありという状況です。
そこで罠にかからなければ、きっとその子は腐らずに済むのでしょう。
でも、BL沼の入り口は、そこかしこに開いています。

・インターネットで好きな作品を検索していたら、BLファンアートを見つけてしまった
・同じオタク仲間だと思っていた友達が先に腐っていて、「面白いよ!」とエロ同人誌を渡された
・古本屋でうっかりエッチな二次創作アンソロジーを手に取ってしまった
・お母さんが隠してたBL本を見つけてしまった(しかも血は争えなくて、それが大層ツボにはいる萌えだったらしい)

(おおむねこれで網羅できる気がする)私はブックオフでした…
正直、まったく知らずに生きるのは無理じゃないのとすら思います。

BLを知った女子が立派な腐女子になっていくまで

しかし、ただBLを知っている、というだけでは、まだ腐女子とは言えません。
腐女子というのは、自らの嗜好を明確に自覚し、様式美とローカルルールを知ったうえで取捨選択して楽しむ生き物です(取捨選択をしない雑食腐女子という生物も多い)。

BLの嗜好は成熟と分化が進んでおり、楽しむためには様式美や独特のルールを理解しておく必要があります。野球のルールを知らないで観戦しても「野球が好き」とは言えない、そんな程度には敷居が高いものです。

ということで、次回はBLの様式美やローカルルールについて紹介しようかなと思います。
ここまで引かずに読んでくださってありがとうございます(すごいね)、次回はあんまりキモくないように書きたいです。

<<#1 当方腐女子、BLが好きです
>>#3 BLは様式美だ!


投稿日 2017.07.06
ブックレビューサイトシミルボン(2023年10月に閉鎖)に投稿したレビューの転載です


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