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シャッターだけが降り注いでいた


ひまわりを背に
端正な顔立ちがしっとりと崩れてゆく
シャッターの音が
シャッターの音だけが
あたり一面に 静かに 降り注いでゆく

火曜の午後
思いつくまま講義をすっぽかし
キミを連れてやって来た
壮大なひまわり畑

夏はまだまだこれからと
自分で自分に言い聞かせたくて
雑誌カメラマンを真似て
その儚さを 永遠にしようと想った

振り切るように
思い出すように
ふいに走り出すなめらかな被写体
その姿を追ううちに
撮ることが どんどんカタルシスに

どこに行くかさえ聞かず
黙ってついてきて
モデルよりモデルらしい
モデル然とした振る舞いを始めた時
久しぶりに
その全身から”女”を感じた
ため息を忘れるほど”女”を感じた

汗なのか涙なのか
よくわからないものが
その頬を この頬を つたってゆく

シャッターの音が
シャッターの音だけが
この葛藤を縫い ひまわりを潤してゆく


            ( 第46回 多治見市文芸祭 詩部門 入選 )

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【 初出 】

詩のブログ
『 橙に包まれた浅い青 』

2021年05月15日
「 シャッターだけが降り注いでいた 」


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