見出し画像

「岡上淑子 フォトコラージュ -沈黙の奇蹟-」 シュルレアリスムとフェミニズムの狭間で

現在、東京都庭園美術館で開催中の
「岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」に行ってきました。


庭園美術館は、東京都が紹介するユニークベニューでもあります。パーティや会議で使用することも可能。以前、ちょうど改修工事をしている際、仕事で見学をさせていただきました。

現在、岡上淑子の作品は、国内外でコレクションされていて、国内では「高知県立美術館」、「東京国立近代美術館」、「東京都写真美術館」、「栃木県立美術館」に、海外では米国の「ヒューストン美術館」、「ニューヨーク近代美術館」、そしてギャラリーや個人コレクションとして所蔵されています。今回は海外で最も多くのコレクションを有する「ヒューストン美術館」から12点の貴重なコラージュが、美術館収蔵後初めて日本へ里帰りしたことになります。


《日常の生活を平凡に掃き返す私の指から、
ふと生まれましたコラージュ。
コラージュ———他人の作品の拝借。
鋏と少しばかりの糊。
芸術…… 芸術と申せば何んと軽やかな、
そして何んと厚かましい純粋さでしょう。
ただ私はコラージュが其の冷静な解放の影に、
幾分かの嘲笑をこめた歌としてではなく、
この偶然の拘束のうえに、意志の象を拓くことを願うのです》
(「ぴ・い・ぷ・る」『藝術新潮』1956年7月号より)


気づいたら、わたしは美術館の中を何周も何周もしていました。

糊とハサミと岡上淑子の繊細な指先から生まれた作品たちは、幻想的かつノーブル。
そして、陽気なダンスを軽やかに、のびやかに踊るようなフェミニズムと自由への叫び。

あの時代なのに?
いや、むしろあの時代だから。
いつだって人の感情は変わらないし、閉じ込めてなんかいられないんだ。


アール・デコ様式の旧朝香宮邸(東京都庭園美術館本館)が竣工したのは1937年。
1924年に生まれたシュルレアリスムが支持を受け、その運動がピークになった時期とちょうど重なる。庭園美術館自体が持つ気品と作品の魅力が相まって、本当に素晴らしい展覧会。

流れるような導線と作品と作品の「間」も、自分のリズムに合っていて、とても心地好い。

また、コラージュ作品のイメージの源泉となった当時のファッションにもスポットが当てられていて、ディオールやバレンシアガなど、作品が生み出された同時代に制作された4点のイブニングドレスやカクテルドレスも展示。より立体的に作品の魅力が伝わってきます。

どんな学芸員の方が企画されたんだろう、と思わず調べてしまうほど。そこまで気になる展示は、今まで経験したことがない。
作品や作家への深い愛と造詣はもちろん、
きっと素敵な女性に違いない。


庭園に面したレストランもおすすめ。
展覧会に合わせた期間限定のお料理がいただけます。

▲ 企画展に合わせたメニュー。メインビジュアルのピンク色をした温製ポタージュはビーツとじゃがいも。付け合わせは、ハサミを模した全粒粉クラッカー。

▲ 庭園に面した素敵な席にご案内していただきました。目の前の桜も程なく咲きそう。


来週あたりは、会期が終わりに近づくのと桜が咲きはじめるので少し混むかも知れませんね、とレストランのスタッフ。

会期は、4月7日(日)まで。とくに女性の方には、きっとそれぞれに響くものがあると思うので、ぜひ、足を運んでいただきたい展覧会です。


岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟