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【ライターの裏側】 インタビューで難しいのは、トークが上手な営業マンさん

仕事の割合でいうと、私はインタビューの仕事が圧倒的。
ライターが「インタビュー」というと、芸能人や有名人、業界で目立つようなキラキラした人を取材して、WEBメディアに載せたり雑誌に載せたりするような文章を書くと勝手に思われがちなんだけど、私がお話を聞くのは主に中小企業の社長さんや社員さんです。入社1年目のフレッシュな新人さんにお話を聞くこともたくさんあります。
「インタビューが得意」と堂々と言っているだけあって、どんなに話が苦手な人でも、「はぁ、まぁ」しか言わない口下手の人でも、1ページ分くらいならなんとかまとめられるだけの話を聞き出すことができる自信を持っているのがワタクシです。

さて、そんなインタビューが得意な私でも、これまでの経験から「むぐっ難しいなぁ」と思うタイプもいます。
大きく分けて3パターン。

1つめは、先述のように「はぁ、まぁ」しか言えないような話し下手タイプさん。シャイなだけならなんとでもなりますが、話し下手で、なおかつ仕事やご自身の思いが弱い方は、話を引き出すのがとても難しいなぁと感じます。
エンジニアさんや整備士さん、職人さんのインタビュー経験が多いのですが、とくに工場勤務の若い社員さんに多い気がします。ただでさえ機械や図面と睨めっこしていて人と話す機会が少ない方々なので仕方ないですけどね。若い方なら、社会人経験もまだ少ないでしょうし、仕事から得たものを言葉にするのはむずかしいでしょう。

2つめは、話出したら止まらないジェットストリームタイプ。いっぱいお話ししてくれるのはありがたいのですが、限られた時間のなかで色々と聞かないといけないことがあるので暴走した際にハンドリングが難しい。私は話をぶった斬るのが苦手ではないので、いい感じのところで話を切って次に進めようとしますが、切っても切ってもめげない圧倒的なパワーの持ち主だと制御不能になりかけることも。
ジェットストリームタイプに、話があっちゃこっちゃに飛んじゃうタイプがプラスされるとさらに大変。これは役職をお持ちのベテラン社員さんに多いですね、比較的。

3つめは、トーク上手なバリバリ営業マンタイプ。え?なんで?トーク上手な営業マンなんて逆に有難いんじゃないの?と思うじゃないですか。いやいやいやこのタイプはね、とっても難しいんですよ。なぜかってまず、トーク上手な営業マンさんの話って基本的に浅い

これ、けしてディスっているわけではないんです。
営業さんって常に心理戦で仕事をしていらっしゃるんですよね。交渉の場で相手のペースに乗ってしまうと損切ってしまうので、常に自分が有利になるよう場をコントロールする努力をされてます。さらに、デキる営業さんほど自分の勝ちパターンとか鉄板トークとか豊富なカードをお持ちなので、インタビューに関しても質問に対する答えがすぐに返ってくる割には内容が浅いというか、アッサリしていることが多いと感じます。

例えば、
「営業部長として、営業部全体に目を配っています」
「例えば?」
「営業から帰ってきた部下に声をかけたりしてますね!」
とか。
「そうすると皆さんどんな反応なんですか?」
「うまく行った子はうまく行ったって言ってくれますね!」
とか(笑)
「落ち込んでいることがあったら、声をかけるようにしてますね!」
「どんなふうに?」
「大丈夫か〜?とか……」
とか……(笑)

また、営業さんは会社や商品をアピールすることにこれまで努力されてきたので、意外と自分自身の売り文句は持っていない方もいますね。「営業・山田太郎」はあっても「山田太郎そのもの」を仕事で披露したことがないというか。上手にトークして上手に立ち回っているけど、けして心の扉を開いているわけではない方が多いのかなぁと思います。
あくまでも私の経験上ですけどね。

なので、仕事の話を深掘りしようとしても、返ってくるのはどこかで聞いたような表現や型通りのお話ばかり。営業さんは普段仕事で黙り込んだり言葉に詰まらないように頑張っておられるので(営業で不利になるだろうし)、それと同じく必死に知ってる言葉を出してこようとされるんですよね。
でも私が聞きたいのはそこではないのでグイグイ行こうとするんですけど、向こうも負けじと挑んでこられるという謎の戦いが始まります。
心の扉を開けてくれていない相手に対して、制限時間内にどう崩していくか、ここが一番難しい。でも、営業さんがサラッと話したところだけを書くのはいや。彼らの本音を彼らの言葉で書きたいんだもん。

こんなの、変わった人だけじゃないの?と思うかもしれませんが、意外とそうでもないです。どんなに営業に慣れた方でも、インタビューになるとみなさんめちゃくちゃ緊張されます。ので、ただでさえ変なこと言わないように気を張って準備してこられるんですよね。その結果、なかなか心の扉を開いて本音を話してくれないことが多いと感じます。

まぁそこをなんとかするのが私の仕事。
最後は心の扉を(時間内に)無事開けることができて、「こんな話あんまりしたことないですよ〜」とか「今日聞かれて、改めて自分で気づきました」とか言ってくれたり、「めっちゃ恥ずかしいですね、自分の話するのって」って言いながらまんざらでもない顔をして帰っていかれたりするのですが、まぁ営業さん相手に自分のペースでお話を聞いていくのはとても難しいですね。(相手ペースでインタビューできる方もいるのですが、それはまた別の機会に)

そんなこんながある楽しいインタビュー現場ですが、最高に難しいと思うのは制限時間があるということですかね。私はお話が好きなので、盛り上がって本題からそれちゃってヤバいヤバいってなることも大いにあります。
時間ギリギリまで話が盛り上がるのはいいことです。インタビューで一番大切なのは、インタビュイーやクライアントが楽しかったって思ってもらえることだと思っているので。でも、そのなかできっちり仕事も終えてしまわないといけないのが一番難しいですねぇ。
「話し足りないですね、今度飲みながらでも話しましょうか」ということもしばしば。



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