日本で初めて養子縁組団体が運営「不許可」になった件について〜ネットでの赤ちゃんマッチングの闇〜

 望まぬ妊娠による赤ちゃんの虐待死を防ぐ「特別養子縁組」支援を行うフローレンス( https://engumi.florence.or.jp/ )代表の駒崎です。

 今日は以下のニュースの解説をします。

「ネット赤ちゃんポスト」不許可に 市が営利目的と判断
https://www.asahi.com/articles/ASM3G6SR5M3GPTFC00Z.html

 「インターネット赤ちゃんポスト」の名称で特別養子縁組を仲介する大阪市のNPO法人について、市は19日、縁組のあっせん事業を許可しないと決定した。営利を目的にし、子どもの実親の生活費を養親希望者に負担させる点などが法に反し、事業を適正に行う能力がないと判断した。民間あっせん事業が許可制になって以降、不許可の事例が明らかになるのは初めて。

 NPO法人・全国おやこ福祉支援センターは2014年に活動を開始。子どもを育てられない親と、子どもを望む夫婦をネット上の専用アプリで仲介し、15~17年度の事業報告書によると計53件をあっせんしている。阪口源太代表理事によると、養親希望者が払う額は150万~250万円程度。1件あたりの必要経費50万円、実母の出産前後数カ月の生活費を含む。

 2018年4月施行の「養子縁組あっせん法」は、民間事業者が養親希望者から徴収できる費用を定めている。出産費用や子どもを託すまでの養育費、面談時の交通費などの実費は認められ、実親の生活費は対象外。営利目的のあっせんも認めない。

 法の施行で、従来は自治体への届け出制だったあっせん事業は自治体の許可制に変更された。

 大阪市が同NPOについて審査した結果、実親が養子に出すのをやめた場合は生活費の返金を求め、撤回を難しくしている▽許可を得ずに各地の「支部」が事業をしている▽阪口代表が株主の株式会社と一体で営利事業を行っている、などと認定。改善される見込みもないと判断した。


不許可は正当

 まずこのニュースを知った時に、僕が思ったのは

 「当然だろう。大阪市はするべき仕事をした」

 ということです。

 2016年に成立した「養子縁組あっせん法」は、このインターネット赤ちゃんポストのような不適切な養子縁組事業を取り締まるために作られたものであり、もしこの団体が許可されるならば、立法の意味が無くなるためです。

なぜ不許可だったか

(画像はインターネット赤ちゃんポスト代表の阪口源太氏のFacebookより)


 大阪市は上記の紙面に基づき、インターネット赤ちゃんポストの事業を不許可にする理由を述べています。

 内容が専門的なので、一般の方にも分かりやすく噛み砕くと以下のような理由になります。

(1)申請した都道府県にある事業所でしか事業ができないのに、勝手に支部を作って事業をした
(2)株式会社と一体となって営利事業を行った
(3)養親を選ぶ時に面談や家庭訪問は非常に重要なのに、それをしないでマッチングしている
(4)養親向けの研修をしっかりやっていない
(5)公正性が崩れるので、マッチング前に養親から寄付や会費をもらってはいけないのだけれど、アプリ代や寄付をもらっている
(6)困窮する実親に生活費を支払って、「やっぱり子どもを養子に出すのはやめよう」となった時に「だったらお金返してもらいますよ」と実親が同意を撤回しづらいようにしている

 要は、子どものための福祉制度である特別養子縁組であるにも関わらず、しっかり養親を選んだりトレーニングしたりせずに、ガイドラインも無視した不適切な「ビジネス」になってしまっている、という趣旨です。

 実際に、子どもにとってどんな家庭に行くのか、というのは極めて重要です。

 例えば幼児性愛者、性犯罪者の家庭に送りだしてしまったら、その子のその後の人生は地獄になってしまいます。

 にも関わらず、大阪市の指摘する通り、面談も家庭訪問もしなかったならば、やはり福祉としては失格と言わざるを得ません。

 「まるで人身売買」( https://www.asahi.com/articles/ASM3G7K86M3GPTFC017.html )という指摘もかねてからされていましたので、行政としては不許可にせざるを得なかったのでしょう。

事件の意義

 今回のニュースは一見、不適切な事業者がいてけしからん、という風に捉えられる向きもありますが、むしろ法が適切に遂行された、「良いニュース」と言えるでしょう。

 あっせん法施行以前は、例え不適切な人身売買が行われていても、それを取り締まることはできませんでした。そう考えると、少しずつ制度が整備されてきていると言えるでしょう。

今後

 今後は不適切な団体がキックアウトされ、ある程度の質以上の団体が事業を行うようになるので、育てたいけれど育てられないので養子に出したい、あるいは不妊等なので養子を迎えたいという方々にとっては、より安心して制度を利用できるようになっていくでしょう。

 しかし一方で、特別養子縁組支援への予算投下は、まだまだ十分では無く、縁組団体は厳しい経済状況に置かれています。

 現状だと、縁組団体はマッチングに掛かったコストを養親さんからの実費支払いに頼るしかなく、プロの社会福祉士やソーシャルワーカーが動くとすると、100万円をゆうに越える費用が必要になります。

 かといってボランティアや低い人件費の職員で回せば、専門性に欠けることとなり、ソーシャルワークの質が下がり、子どもや実親達にとっての最適なマッチングにならなくなる可能性が高まります。

 他の児童福祉領域同様に、特別養子縁組推進にもしっかりと予算を付ける必要があるでしょう。

 この点では、養子縁組件数ではアメリカの100分の1であることからも分かるように、日本は大きく諸外国に水を開けられている部分かと思います。

 児童虐待問題がクローズアップされる中、2週間に1人赤ちゃんが虐待死している中、民間における特別養子縁組支援は子どもの虐待死を防ぐ大切な社会インフラです。社会全体で育てていく必要があることは明らかです。

 以上、現場事業者の観点からの解説でした。

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駒崎弘樹

NPO法人フローレンス代表理事。慶應SFC卒。05年〜訪問型病児保育を開始。08年Newsweek「世界を変える100人の社会起業家」に選出。10年から待機児童問題解決のため「おうち保育園」開始。後に小規模認可保育所として政策化。14年、障害児保育園ヘレンを開園。
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