踏み切りのおじさん

小学校に行くまでの道中、踏み切りがあった。

踏み切りの脇には、いつも見守りボランティアのおじさんが立っていた。

おじさんは、毎日子供達に声をかけてくれる優しい人だった。

夕方、踏み切りが上がるのを待っていたとき、折り紙でできた小さな手裏剣やコマをくれた。とても丁寧に作ってあって、もらえたときは嬉しかった。

学校の窓ガラスにぶつかってメジロが死んでしまって、泣きながら踏み切りを待っていたとき、「それは可哀想だったね。」「でもあなたに悲しんでもらえたから、よかったんじゃないかな。」と声をかけてくれた。

踏み切りを待つわずかな時間だけが、おじさんとの関わりだったが、いまでも覚えている。

おじさんは、中学に上がる前にいなくなってしまって、別の人に代わってしまった。

つい先日、押入れの掃除をしていたら、あのときもらった手裏剣とコマが出てきた。懐かしさと同時に、踏み切りのカンカンカンと鳴る音や静かに佇んでいたおじさんを思い出したのだった。

『踏み切りのおじさん』

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