見出し画像

江戸時代の季節のお惣菜7・8・9月編。古文書『女中嗜日用宝』を訳してみた

ちょうどこれからの季節にぴったりの夏から初秋にかけてのメニューです。前回の春から初夏のメニューでは、早くも水分の多い瓜が多く見られましたが、今回はどうでしょうか?

四季惣菜789-1

七ハ九月の部

●ジュウロクササゲを茹でたゴマ醤油浸しもの。
 または、揚げ豆腐入り煮しめも良し。

 ※原文の「十八ささげ」はジュウロクササゲ
  のこと。地域によって十八ささげという。

●新頭芋と揚げ豆腐の一皿。

 ※頭芋=サトイモの親芋

●新頭芋・ずいきの葛炊き。
 または、ゴマ酢浸しもの。

 ※ずいき(芋茎)=サトイモやハスイモの
  葉と茎の間の部分(葉柄)のこと

●新子芋の煮しめ。
 または、味噌汁に入れても良し。

●新さつまいも角切り・こんにゃくの味噌和え。

四季惣菜789-2

●はかり鰯の首ひき・短冊大根の酢味噌和え。

 ※原文の「酢味噌ぬた」は酢味噌和えのこと
  ぬた=和え

●はかり鰯首ひき焼き赤味噌汁ふりネギ。

●よみ鰯酢煎り。または、焼いてネギ南蛮煮。

●よみ鰯焼いて秋ナスと煮浸し。

●よみ鰯に塩をふり、二時間ほど経ってから
 酢につけて外に近いところへ置き、
 切らずに煎って切らず鮨に。
 または、醤油に一夜漬け置いて串ざしにして
 焼くのも大いに良し。

このしろを焼いてネギと南蛮煮。

 ※原文の「つなし」はこのしろの幼魚の古名

小鯵こあじの塩焼き。
 または白焼きにしてネギと南蛮煮。

江鮒えぶな田楽。 または、焼いて茄子
 もしくは冬瓜と煮浸しにしても良し。

 ※江鮒=ボラの幼魚

●太刀魚の煎りつけ。 または、塩焼き。
 あるいは薄塩で一夜置いて味噌漬けにし
 焼くのも大いに良し。

●太刀魚の細造り・大根おろし醤油。
 または、味噌和えも良し。

四季惣菜789-3

●松茸の使い方は多い。
 まず、薄く削り取って、
 すくい豆腐葛仕立てへぎ柚子。

●松茸を丸焼きにし、引き裂いて柚子醤油
 または、湯煮して柚子醤油で。
 または、ほどよく切って土瓶で空焚きに
 して柚子醤油で食すのも味わい良し。
 焙烙ほうろく焼きも良し。

 ※焙烙焼き=焙烙(素焼の浅い皿型の土器)
  で蒸し焼きにした料理

●蒸し松茸味噌がけも味わい良し。
 そのほか、いろいろ使い方は限りない。
 見合わせて使うこと。

●しめじ類は値段が高いため、惣菜には
 使い難いが、湯しめじ柚子醤油
 または、葛煮で。
 そのほか、魚類あしらい・卵とじ
 または、すまし汁も良し。
 いずれも吸い物には大いに良し。

 ※あしらい=飾りで添えるもの


上記のほか、秋は野菜・魚類ともに食材が多い。
所々の安いものを見合わせて使うこと。


【たまむしのあとがき】

最後のまとめ文を訳していて、「秋は~」とあることから、ようやく、タイトルの7・8・9月というのは旧暦のことだとわかりました。

現在の新暦だと9・10・11月に相当するようです。

前回の春~初夏編で瓜系が多かったのも、旧暦に直すと夏真っ盛りだったからなんですね。

気づくのが大変遅すぎました・・・申し訳ありません。


この記事が参加している募集

日本史がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?