見出し画像

女性のお悩み解決の妙薬とは⁉江戸時代の古文書『女中嗜日用宝』を訳してみた

江戸時代には妙薬というものがさまざまあります。現代のように、病院に行って薬を処方してもらったり、ドラッグストアで買ったりと、簡単に手に入れることができなかった時代なので、自分でなんとかしなくてはならなかったのです。その中でも今回は、女性のお悩みに特化した妙薬を『女中嗜日用宝』から探ってみたいと思います。身体の不調を治すための薬を作るのに、どれほどの手間ひまがかかっていたのでしょうか。気になるところですね。

妙薬秘伝1

女重宝妙薬秘伝

●子どもが餅や団子の喉詰まりで苦しむ
 ときは、酢を鼻の穴へ吹き込むと、
 むせて即座に吐き出す。

●木や竹が元気のないとき、錦木(ニシキギ)の
 黒焼きか鳳仙花(ホウセンカ)の黒焼きを
 酒で与えると、ほどなくして元気になる。
 一般にそげぬき薬というのはこれである。

●魚や鳥の骨がのどに刺さったとき、
 その魚や鳥の骨を頭の上に刺し置けば、
 奇妙なことに抜ける。

●ふぐ・たこ・きのこ類など、食べ物の毒に
 当たったときは、絵の具の藍蝋あいろう※を
 白湯に濃く溶いて飲めば、すぐに治る。
 また、紺屋※の藍汁でもよい。たこの毒に
 当たったときは、布海苔ふのりを煎じ飲めば
 たちまち治る。
  
  ※藍蝋=藍色の顔料
  ※紺屋=染物屋

●鼻血が出て止まらないときは、ざくろの花を
 鼻の穴に挿すとよい。大根のしぼり汁を
 入れてもよい。

妙薬秘伝2

●わきがを治すには、岩緑青いわろくしょう※と軽粉けいふん※を
 杯でよくすり混ぜて、良い酢を煎じ、
 その酢で練って、わきの下へ塗る。 
 5・6回ほど塗れば治るだろう。
 また、岩緑青だけをすりこんでも
 10日ほどで臭いがなくなる。
 生姜のしぼり汁を塗るのもよし。
 
  ※岩緑青=緑色の顔料
  ※軽粉=水銀粉

●ほくろを取るには、器の中へ石灰を入れて
 平らにならして、その中にもち米を縦に
 刺し置いて、そのもち米が腐ったときに
 取り上げ糊に練り混ぜ、ほくろのさきを
 針でついて破り、その薬を付けておけば
 3日ほどで取れるだろう。

●いぼを取るには天南星(テンナンショウ)を
 そのまま粉にして酢で練り、いぼが落ちる
 まで塗りつける。

●ケジラミがわいたときは、たばこのヤニを
 塗りつけておく。ボロボロと落ちて再び
 わくことはない。

●長患いの後、または産後などに、髪がたくさん
 抜けたときは、榧(カヤ)3つ、胡桃3つ、
 側柏葉(ソクハクヨウ)10匁(37.5g)

妙薬秘伝3

 以上3種類をしっかりとつき合わせ、
 雪水に浸し置いて、瓶水として用いれば
 髪が抜けることはなくなる。

●生まれつき髪が短くて、伸びるのが遅い
 ときは、山椒を酒に浸して風の当たらない
 ところで毎日塗ると、髪が長く伸びる。

●生まれつき髪が赤い女性や、病気で赤く
 なったときは、トウゴマ50粒、殻を
 除いてゴマ油で煎じ、トウゴマが焦げたら
 それを取り捨て、3日過ぎてその油を
 髪に塗れば黒く艶がよくなる。

●年若く白髪が生えたときは、その白髪を抜き、
 そのあとにハチミツを塗れば再び生えない。


【たまむしのあとがき】

へぇ~、ほんとに??と思うものばかりで衝撃でした。

さすが、女性のための古文書ということで、内容が女性向けでしたね。

2つ目に、樹木を元気にする秘伝が含まれているのがどう考えても異質なのですが、これはひょっとすると、パートナーの男性に対しての隠語なのではないかと思うのです。

訳は「酒を与えると」としたのですが、原文では「酒にてのめば」なのです。

木や竹が主語なのに、「飲む」だとおかしいわけです。

「飲む」のは自力でできる存在が主語のはずだから、人間しかありえないですよね。

さらに、そげ抜き薬というのは速攻性の高い万能薬として、薬売りが売っていたようですから、人間が飲む薬なのです。

そう考えると、これは壮大な比喩だということなのですね。

はっきりズバッと書かないでもわかるよね、ということなのでしょう。

たぶん。

この薬もそうですが、江戸時代のいろんな薬の材料になるものは、今ではなかなか手に入らないこともあって、実際にやってみようとはいかないのが難しいところ。

しかし、私たまむし、最近白髪が多くなってきたので、もう少し目立つようになればハチミツを塗ってみたいと思います。

年若くないですが、大丈夫でしょうかね?

純度の高いハチミツを入手して臨みたいと思いますよ。

この記事が参加している募集

日本史がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?