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140字小説①

3年半ぶりの更新はなんと #140字小説  

とある出会いがあって僕も創作をしたいなと思いTwitterで始めてみた。やってみるとやっぱり楽しい。Twitterに投稿した作品を一部修正しました。どうか暖かい目で読んでいって下さい。自分が世に生み出したというのはやっぱりなんとも愛おしい。全て140字ちょうどにしてます。9作品。

1.とある地下の物語

その人に出会ったのは地下だった。一度しか会う事ができなかった。「よく来られるんですか?」から始まった会話は思いのほか盛り上がり、互いに夢中で話し込んだ。家族や友達の話もした。あっという間に帰宅時間。「また来週会いに来て下さいね」と言うあなたの言葉に僕は1mmも疑いを持たなかった。

2.嘘の許容量

「ウサギって昔は空を飛べたんだよ」

「えーほんとにー?」

「1羽2羽って数えるやろ。それが名残」

「ほんまや、すごい!」「あはあ、まぁ嘘だけどね。お前は本当に騙されやすいなぁ」

身体が小刻みに震えだす「あなたって本当に嘘ばかり言うよね。嘘ばかり…」

コップの水が溢れた。

3.きっかけ

バイト先は不義理な辞め方をした。「これからどうしようかしら」平日の午後。柵の上に2cm程残った雪で女の子がはしゃいでいる。

「寒かったらまた降るの?」
「また真っ白な世界になるかもね」
「ほんとにー?」
満面の笑みでこちらをまっすぐ見つめる。

不思議と私はもう大丈夫に思えた。

4.あなたの全て

沈黙は会話を構成するスパイスだ。私はスパイスだけでも食べしまう程好きなのだ。なのにあなたは慌てて喋りだす。前に見た映画、昨日の出来事、美味しかった店。その姿に私は落胆する。スパイスの無い会話がどれだけ味気の無いことか。言葉として表現出来ることなんてあなたの1%に満たないのだから。

5.にやけ顔

「言葉なんて信用出来ないっ!!」

溜まっていたイライラがついに爆発してしまった。捨て台詞を吐いて携帯を放り投げる。

ピンポンで目が覚めドアを開けると逆光に曝されて無表情の彼女が立っていた。

僕は、にやけ顔を抑えられない。

「来ちゃった」

釣られて彼女にも笑顔の花が咲く。

6.一滴

その一滴はどちらに流れていくかわからない。人を幸せにしたり不幸にしたり、笑顔にしたり泣き顔にしたり。言葉、行動、表情、小さな一滴が二人の未来を変える。

分水嶺。一滴の運命を分かつ場所。素敵な響きだなって思う。誰にでも何度でも分水嶺はあったんじゃないかな。あのときが僕の分水嶺だった。

7.涙を分け合う

いつも考えてくれた。いつも側にいてくれた。優しくしてくれた。褒めてくれた。叱ってくれた。そんな人を失くしたのは桜の咲く季節だった。同じ映画を見て一緒に泣いたり、僕の話に涙したり共感力の強い人だった。桜を見ると思い出して込み上げてくる。今年もまた同じ涙を流すように桜の花びらが舞う。

8.病

あなたの強さも弱さも知っていたよ。だけどあなたは文字通り病んでしまった。性格が反転したように大きな声で暴言を吐くあなた。私のせいなのかもしれない。私の心はボロボロになっていった。それでも私はあなたの力になりたい。「つらかったね、全部吐き出して良いんだよ」私の声は届いているのかな。

9.宅飲み

「私の家で飲もうよ」無邪気に誘うあなたが眩しい。「いいね」と言いながら私は恋しい。「お酒なくなっちゃったね、買いに行く?」胸が苦しい。どうしてあなたはそんなに普通でいられるの?私が男だったら良かったの?気付いてよ。あなたを背中から抱きしめる。ドキドキして欲しい。これが私の精一杯。

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