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薬酒(薬用酒、健康酒)の作り方。周公百歳酒、養命酒など。ヨガや気功に役立つ?

薬酒(薬用酒、健康酒)についてです。
薬酒というのは、中医薬・漢方でも用いられる生薬や薬草、ハーブ、果実などをつけ込んで作ったお酒です。

関連noteや参考サイトの紹介

・地丹法(気功的食養)について


・冷え性の改善・対策法 ―― 食事、運動、漢方、瞑想(気功、ヨガ)など【温活】


・【しょうが湯 辛熱性!!】風邪、インフルエンザの季節に生姜湯。寒い時期の温活。 ショウガオールのパワー


「健康食品」の安全性・有効性情報

生薬、ハーブの安全性や副作用、禁忌の情報の参考にして下さい。


代表的な薬酒

日本でもっとも有名な薬酒は、やはり養命酒でしょう。

インヨウカク(淫羊藿)、ケイヒ(桂皮)、シャクヤク(芍薬)、トチュウ(杜仲)、ジオウ(地黄)、ニンジン(人参)、ヤクモソウ(益母草)など14種類の生薬が配合されているようです。

参考:養命酒製造株式会社


 この養命酒で使用されるインヨウカク(淫羊藿)は、巷では「天然のバイアグラ」などと呼ばれているようです、笑。

メギ科イカリソウ属

実際に中国伝統医薬においても、性機能的な方面でも適用されます。
」の「陽」が欠乏状態(虚)の時などに用いられるとされます。

また大脳、神経や内分泌の活性化、高齢者の足腰の弱り、強壮などでも利用され「放杖草(杖が必要なくなる薬草)」とも呼ばれていたり、「腎」と「脾」の関係から「仙霊脾」とも呼ばれます。

ただ「陽」の作用が強く「陰」を傷つけやすいともされます。

関連note:奇経八脈(任脈、督脈、衝脈...)について。経絡と気功、瞑想


 あと同じく養命酒で使用されるヤクモソウ(益母草)は伝統医薬では女性向けによく用いられるようです。

これは、李氏朝鮮王朝の第22代国王の正祖を主人公にした韓国ドラマ「イ・サン」にも重要なシーンで出てきます。
正祖は聖君とも評価される王です。

「懐妊した」と主張する王の側室(ウォンビン)が、妊娠するのに効果のあるとする益母草で作る薬を隠れて飲んでいることに気づかれました。
これで嘘が暴かれてしまったというシーンです。



 けっこう廃れてしまっている伝統ではありますが、正月に飲む「お屠蘇とそ」というものがあります。
これも数種類の生薬を用いて作られる薬酒です。

梅酒、カリン酒も薬酒とされます。


 異論はあるとは思われますが、ハーブ薬草系リキュールも薬酒と言えるのかもしれません。

とても有名なのがイエーガーマイスターです。56種類のハーブ・スパイスを用いたドイツのリキュールです。ウンダーベルクも知られています。

合成着色料で真っ赤な色をしてますが、イタリアのリキュール、カンパリも有名です。

「リキュールの女王」と呼ばれるシャルトリューズは修道士の作るフランスを代表するリキュールです。
「エリクサ(エリクシール、不老不死の霊薬)」などと大げさに言われることがありますが、薬草臭くて甘いリキュールです。

「具合の悪いときにシャルトリューズを飲むといいんだよ」とバーテンダーをやっていた知人が言ってました。

養命酒もそうなのですが、当たり前ですがリキュールはハーブ薬草系と言えど、糖質が多くて、けっこう甘いのが多いです。
シャルトリューズはシロップとしても使えそうなくらい甘くて、お菓子作りにも向いていそうです。

フランスのリキュールではスーズも有名です。
「フランスのカンパリ」と言う人もいますが、スーズの方が香りが良くてうまいっス。

他にはドランブイ、ベネディクティン、アンゴスチュラ ビターズ、ウニクム(とても苦い)などがよく知られています。


 草木酒|フォレストジン(日本草木研究所)も面白そうです。
森林浴(フィトンチッド)効果のお酒みたいです。

関連note

・森林浴(フィトンチッド)と瞑想

・瞑想とお酒


利点

薬酒の利点には、まず手軽さがあります。食前酒などとしても手軽に用いられます。

漢方薬を煎じたりする時のような長時間の加熱がないので、成分の変性が少ないということも言われます。

アルコールは有効成分や香り成分の抽出に適しているとされます。
またアルコール自体にもリラックス、血行促進、食欲刺激、、、などの効果があるとされ、生薬・ハーブとの相乗効果も期待されるようです。

でも、まぁ、正式な薬の処方ではないので、そんなに薬効を期待してもしょうがないと思われます。
気軽にやりましょうという感じです。


ちなみにですが、本当に「酒は百薬の長」としていいのかについては、様々な研究があるようです。(否定的な研究もあるようです)


気功や伝統武術、ヨガでも用いられる?

中国人の気功指導者から聞いたことがあるのですが、中国武術や気功でも薬酒が用いられることがあるようです。この気功指導者から教えてもらった薬酒があります。
後述する「功夫薬酒」を参考。

各地、各流派には伝統的だったり秘伝的だったりするような薬酒や製造法が伝わっていることもあるようです。

健康、保健、強筋骨などを目的として用いられます。「功夫」を助けるともされます。
功夫とは、(基本的には長期にわたる地道な)鍛錬やその積み重ね、境地などを意味します。

特に中国武術や武術気功(硬気功)では飲用としてだけではなくて、外用薬、湿布薬にも利用されます。



インドの伝統的なハーブ薬草療法やアーユルヴェーダにも、瞑想やヨガの助けになるとする薬草や処方があったりするようで、薬酒にも利用できるのかもしれません。


作り方や利用法

材料、分量、作り方など。

・材料

生薬、ハーブ、薬草、果実など。
酒はホワイトリカー(蒸留酒)など。
他、氷砂糖、グラニュー糖など。

アルコール度数が低いと腐敗しやすいです。
35度以上はあった方が良いとされます。


生薬、ハーブの入手は信頼できそうなところで。

個人輸入の場合は気を付けて下さい。農薬、重金属、カビ毒などしっかり検査されてないものもあります。有毒なものが混入することもあります。

冬虫夏草など高貴薬、高級生薬の場合にはニセモノや、鉛の粉末を混ぜて重量をごまかすなどがあったりします。


大棗(ナツメ)
滋養


・分量の目安

乾燥した生薬、ハーブ1~1.5gにつき酒10m㍑。生の生薬、果実500~800gにつき酒1㍑が目安。
アルコールが薄まると腐敗しやすくなります。

甘味が欲しい場合には、酒1㍑につき砂糖類50~150gが目安。


・作り方など

生薬、砂糖類を酒に漬けるだけです。

瓶など容器はよく洗って消毒。
漬け込み期間はハーブティーに用いられる材料などの場合は2週間以内に完成することもありますが、一般的には1ヶ月以上。

基本的には材料の色が抜けたり、なんとなくフニャフニャになるまでは漬け込みます。
材料によっては1年近く漬けるものもあります。

適宜容器を傾けるなどして、成分の抽出や砂糖類が溶けるのを促進したりもされます。

冷暗所に保管。夏期には腐敗などに注意。

利用方法は1回10~30m㍑、1日1~3回が良いとされます。


参考例

※ 以下、参考例です。もし参考にされる場合には医薬品の分類、アレルギー、副作用、禁忌、用量などは各自で調べて自己責任でお願いします。

当帰(根)、黄耆(根)などは、伝統的な薬酒である周公百歳酒にも用いられますが、これらは日本では医薬品に分類されます。

あくまで薬酒に関する知識の紹介です。


上述したように乾燥した生薬、ハーブ1~1.5gにつき酒10m㍑で、生の生薬、果実500~800gにつき酒1㍑が目安がだいたいの目安です。

分量や甘味砂糖類などは適宜工夫して下さい。


功夫薬酒

中国人の気功指導者から教わった薬酒。功夫を助けると教わりました。


人参、枸杞子、酸棗仁、熟地黄 各30g
山茱萸、五味子、杜仲、芍薬、巴戟天 各15g
当帰、海馬 各10g
紅花、沢瀉 各6g
鹿茸 5g、黄柏 3g

 これら生薬の内で特に鹿茸(シカ科のまだ角科していない角、幼角、袋角)は今や高級生薬です。代用としてはトナカイの角が用いられることがあるようです。
薬酒にするにはもったいないと思うくらい高価です。

海馬(タツノオトシゴの一種)も同じです。

関連note:地丹法(気功的食養)について >> 鹿茸、熟地黄

杜仲(トチュウ、木皮)
強精、強壮、降圧


周公百歳酒

この周公百歳酒は中国語圏で非常に有名な代表的な薬酒です。生薬の配合バランスが良いと評価されるようです。

また歴史的な薬酒でもあります。
中国周王朝の政治家である周公旦が愛飲していたとされます。大昔のこと過ぎるのでホントか分かりませんけどね。

黄河文明とかの時代 →→ (謎めいたところが多い)夏→→ (少し伝説的な)殷 →→ →→ 春秋戦国時代(孔子が登場) →→ 紀元前221年に秦が中国統一。漫画『キングダム』は秦の始皇帝と、始皇帝を支えた武将が主人公

周公旦というのは周の文王の子、周王朝の創始者の武王の弟で、孔子が非常に敬愛していた人物です。

はなはだしきかな  わが衰えたるや。久しきかな  われまた夢に周公を見ず(あぁ、私もずいぶんと衰えてしまったものだ。もう長い間、この上なく敬愛する周公を夢に見ることも無くなってしまった)。」という孔子の言葉があります(『論語』述而)。


 さて周公百歳酒で用いられる生薬です。

黄耆、熟地黄、亀板 各10g
枸杞子、白朮、茯苓、山薬、当帰、芍薬、地黄、麦門冬、川芎、羌活、防風 各8g
人参、五味子、桂皮、陳皮 各5g

枸杞子(クコ)
「肝腎」を補う
滋養


 亀板は手に入りづらいことがあるかもしれません。これは要は亀の甲羅(腹甲)です。
中国伝統医薬では「滋陰薬」とされます。

でも、まぁ、亀の甲羅を少し入れたからって、何か意味があるのかなぁと思ってしまいます。
以前、漢方薬店の店主に「亀板って何か特殊な成分でも含まれてるんですか?」と質問したら「よくわからない」と言われました。

「亀は万年」などと言われていて、ひょっとして縁起担ぎなだけかもしれません。


参耆酒

「気」を補うとされる人参黄耆の薬酒例です。

人参 40g
黄耆 30g
枸杞子 20g
芍薬、甘草、茯苓 各10g

人参
「気」を補う
強精、強壮


仙霊脾酒

淫羊藿(インヨウカク、仙霊脾)を主とする薬酒です。

淫羊藿を酒に2週間以上つけ込みます。


複方(複数の生薬を用いる)の薬酒例

淫羊藿 30g
枸杞子 20g
女貞子、五味子 各15g

五味子(ゴミシ)
滋養強壮


陳皮と大棗の食前酒

陳皮(ミカンの皮)と大棗(ナツメ)を主とする薬酒例です。食前酒として良いかもしれません。


陳皮、大棗 各30g
ショウガ 20g
五味子、白朮、茯苓 各15g
人参、芍薬、桂皮、甘草  各10g
丁香、フェンネルシード(もしくはアニスシード) 各5g

フェンネルシード or アニスシード


ローズと当帰の薬酒

ローズはハーブティーの花びらやつぼみを用います。美容に良いとされます。
当帰は中国伝統医薬では「補血薬」とされ、婦人科の主薬・要薬とされます。

関連note:冷え性の改善・対策法 >> ・漢方、生薬


ローズ、当帰 各30g
芍薬、熟地黄、龍眼肉 各20g
桂皮、枸杞子、陳皮 各10g

龍眼肉(リュウガンニク、ロンガン)
滋養



菊花とクコの薬酒

伝統医薬の考えによると、菊花は高血圧、のぼせ、目の充血、解熱、消炎などに用いられるようです。
枸杞子菟絲子女貞子五味子は、「肝腎」を養い、精を補い、滋養に良いとされます。また目の健康に用いられ「明目」に良いとされています。


枸杞子、菟絲子、女貞子、五味子 各30g
菊花 20g
熟地黄 10g