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テキトゥー・ナ・カルボナーラ

チーズと牛乳が余っていたので、カルボナーラを作ることにした。

「カルボナーラを作る」と、さも小慣れた感じで言ったものの、レトルトを使わずにカルボナーラを作るのは人生で初めてのことである。

チーズはともかく、私は牛乳を単品で飲むことが出来ない。
だから、普段料理で使うときは多少コスパが悪くても使い切れる小さなパック牛乳を買うのだが、今回は4人前のグラタンを一気に作りたかったので仕方がなかった。
4人前のグラタンには牛乳が600ml必要だったのだ。
牛乳のパックはだいたい500mlの次が900mlか1000mlだ。
できればもう少し数字を刻んで欲しいが、今回はお客様の声に要望を出す時間も無かったので、仕方なく1000mlを買った次第である。

さすがにカルボナーラを作るとなると難易度が高そうだ。必要なものすら分からなかったので、前日のうちにいつもの如く『カルボナーラ 簡単』と検索をすると丁度良いレシピが出てきたので、そちらのサイトを模倣して作ると決めた。
なんと生クリームを使わずに作ることが出来る、心が折れやすい私にうってつけのカルボナーラだ。

因みに今回のレシピで必要な材料は以下の通りであった。

• パスタ(ショートもOK)

• ベーコン・ハム 

• 玉ねぎ
• オリーブオイル
• にんにく(みじん切り)
• 塩・黒コショウ
• ◆牛乳150cc~

• ◆スライスチーズ、他「とろけるチーズでは無い」色んなチーズ
• 卵 (全卵を使用します)1つ

早速不穏な空気が漂う取り消し線が引いてあるが、
これはレシピを見た瞬間に『家にない』と判断し、用意することを諦めた材料である。
こういうとき、ニンニクという文字は大体見ない。使えば絶対美味しいが、無くてどうしようもない味になることは無いと判断して、用意しない選択に踏み切る。
卵は買うか迷ったのだが、現在高騰している関係で今回の材料はベーコンのみ調達することに決めた。あとは家にあるので大丈夫だ。

家に帰り、早速鍋に湯を沸かしながらパスタソースを作ることにした。
さて、まずはオリーブオイルでベーコンを炒めるところからだ。

オリーブオイル、オリーブオイル。
…30秒ほど棚をガサゴソと漁ったところで大変なことに気が付いてしまった。
我が家にはオリーブオイルが無いのだった。

この段階で結構絶望である。
イタリアンの『肝調味料』でもあるオリーブオイルが、頭の中の記憶では確実にあったはずなのに、どこを探しても無い。
記憶の調味料棚が随分昔から更新されていなかったようだ。
こりゃあウッカリ八兵衛。

しかし、ここで諦める私では無い。
早速機転を利かせて、オリーブオイルの代わりにごま油で炒めることにした。
今までごま油とミスマッチだった料理に出会ったことが無いので、まあ大丈夫だろう。和風パスタにも使ったりするし。

無事にベーコンをごま油で炒めた鍋からは、早速イタリアンらしからぬ香ばしい匂いが漂っている。
他の具材をすっ飛ばしているので、ソースとなる牛乳を入れる段階だ。早い。
牛乳が結構余っていたので、少し多めの200cc入れることにした。
お湯が湧いてきている。タイミングもばっちりだ。

次にチーズを入れれば良いのか、とレシピを再確認したとき、再び良からぬハプニングが私に訪れた。

• ◆スライスチーズ、他「とろけるチーズでは無い」色んなチーズ

と書いているが、私の家にはグラタンに使うために買ったとろけるチーズしか無かったのだ。
一応レシピには事前に目を通していたのだが、その段階ではとろけるチーズを使うことを前提としていた為、その禁止事項が頭に入っていなかった。
「とろけるチーズでは無い」とわざわざ書いているくらいなのだから、とろけるチーズにすると世程のことが起きるに違いなかった。
しかし、湯はもう湧いている。
最早後戻りは出来ない。

私は牛乳風呂に浸かっているベーコンの元へ、残ったとろけるチーズを全部投入した。
レシピ書いてくれた人、ごめんなさい。
私は数あるチーズの中で唯一禁止されていたチーズを使いました。

とりあえず、とろけるチーズが変に溶けないように、方時も離れずにかき混ぜることに集中した。
パスタはもう茹で上がる。
この時点で一度も味見はしていない。
見た目からして失敗が確定していたので、味見するのが怖かったのである。
はい、嫌なことは後回しにするタイプです。少しでも失敗したと思う時間を短くしたいので。

結局、湯で上がったパスタにカルボナーラらしき白いソースをかけ、最後にマジックソルトを足した。
言い忘れていたが、私は黒コショウを書かれていたらマジックソルトを入れる。黒コショウが家に無いからだ。

レシピに載っているサンプルは見た感じからして『濃厚☆カルボナーラ』感たっぷりで大変美味しそうなのだが、私が作ったカルボナーラは相変わらずパスタが牛乳風呂に浸かっている感じに近かった。
そういえば牛乳も多めに入れていたからだ。
1行程にひとつバカが入っている。

サンプルの黄色っぽいソースとは程遠い、白いパスタの完成である。
せめて温かいうちにと思い一口食べると、私は思わず目を見開いた。

安いカルボナーラの味がする・・・!

確かに濃厚でも無ければ高級感も無いが、味は確かにカルボナーラだった。

私の予想はすっかり牛乳味のパスタだったので、良い裏切られだった。
ここまで読んでいたみなさんも、絶対に失敗すると思っていたでしょう。
カルボナーラとしては成功したが、エッセイとしては失敗だったかもしれない。
失敗すると教訓が生まれるが、うっかり成功したのでまとめる言葉もないのだ。

あんなにもレシピに反抗し、もはや「レシピを見た」というと作者が可哀想なほどの出来になったに関わらず、ちゃんとカルボナーラの味がしてしまった。
これは、レシピを作った人、かなり天才なのでは?!

ということで、ちゃんとしたレシピを掲載させていただき今回のエッセイを結びとする。


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