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孤独な魚

 雨の日は水槽の中にいるみたい。
 雨粒の流れる窓を眺めていたら、昔魚だったことを思い出した。
 暗い暗い光の届かない深海に棲む孤独な魚だ。
 そのころはまだ孤独を知らなかった。
 深い海の底はとても静かだったから。
 今は四六時中聞こえてくるこの鼻歌を知るまで、世界に孤独は存在しなかった。

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