宙に浮かぶ風船を目で追っていた

 空に浮かんで行く風船を目で追っていた。
風船は誰かと似ている気がしたし、少し違う気もした。

 誰かは地面に佇んだままで動かない。風が吹くと、ほんの少しだけ体を揺らして不規則に漂うが、やがて止まってしまう。

 誰かは自由に空へと浮かんで行く。風に揺られてどこまでも舞い上がって行く。
色んな世界を見る事ができるだろう。

風船は割れてしまう。地面を漂う風船も、空に揺れる風船も。
風船は割れても何も出てこない。空っぽだ。

風船は誰かと似ている気がしたし、少し違う気もした。

沢山のものが詰まった薬玉になりたい。

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自由律俳句

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