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仕事の話⑯ ~変わりゆく私の職場~

先日年度末を迎えました。今年度初めに異動になり、スタートから色々ありましたが、例年通り、年度末は迎えることができました。

うちの会社は転勤族なので、年度末になると少なからず人事異動があります。

ただ近頃は、数年前とは違う感覚でこの時期を迎えます。ほんの5年前頃までは、年度末にお別れの挨拶する人は定年退職者と異動する人達がほとんどでした。

しかし、ここ数年は、他企業への転職者としてお別れの挨拶をする人が増えてきました。

以前は、何となく給料もそこそこ、休暇もそこそこ取れますし、福利厚生もそこそこ良く、うちの会社から転職する人は家業を継ぐ人くらいで、変わり者扱いでした。

ところが、今では多くの転職者がいます。

辞めていく人が多いので、新人も毎年、昔では考えられないほどの人数を採用しています。

支社のエリアは、2000人規模。そこに、ここ数年は100人以上の新人を毎年採用しています。

私は氷河期世代と言われる世代ですが、当時は40人規模でした。結構な狭き門でした。その後、10人規模という時代もありました。

2000人規模に100人の新人?5年で500人?単純計算で4人に1人が経験年数5年以下になります。

良く言えば新しい風がよく吹き込んでいる環境。悪く言えば素人集団…。

そして、100人規模で、長期休養または出勤はできるがまともに仕事はできないという人達がいます。

離職パターンは、定年を除くと、転勤が無い企業への転職、残業が少ない企業への転職、定年前に早期退職で辞めてしまう人…。

もちろん、残業は減らそうということで、全体としてはかなり減っています。しかしながら支社長のタイプによっては、昭和を地で行くような方もおられ未だに、エンドレスに残業している(させられている)人もいる状況です。

忙しいから、誰かがやらないといけないから、致し方なくはありますが、あまりにもヒドイ場合もあります。

残業を命令する立場にある人達は、昔でいうところの仕事人間が多いです。当然、昔であればあるほど仕事人間が評価されていたわけですから、これも致し方無いことかと思います。悪意なく長時間労働を強要しています。そう、悪気が無いのがタチが悪いのです。

上部との付き合いが良く、家庭を顧みず毎週のように飲みに付き合う、単身赴任もどんどん進んで引き受ける。まさに、仕事のために人生を送っている。確かに、頑張れば、他の人ができないようなことができれば、評価されることは大切だと思います。

ただ、我々氷河期世代でも、仕事のために生きるということには疑問を持っている人は増えていますし、ゆとり世代?Z世代?の人達は尚更、仕事人間のことは理解できるはずもないと思います。

ここ数年、幸いにも、高卒や大卒の新人を指導させられる機会に恵まれていますので、今の新人達がどのような価値観を持っているのか、傾向を知ることができます。

1番感じているのが、金銭欲も出世欲も…それどころか食欲もそれほど無い人が多く、また、平日であっても少なくとも夕方以降は、自分の自由な時間が欲しいと思っている人が多いです。また、多少の不満などあっても、決して簡単には口に出そうとしない…我慢するような人が多い印象です。

環境の変化も大きいでしょう。昔は一人遊びなんてできなかったから、夕方以降も職場の仲間で飲んだり、麻雀したり、ゴルフしたり。今は、一人遊びがいくらでもできますので、自由な時間にしたいのでしょう。(正直、私は入社当初からそうでしたからよくわかります…)

私が入社したころは、競争に勝って上に上がることこそが正解で、残業、飲み会、引っ越し、単身赴任は当たり前。それを拒むと背信者と言われるような風潮がありました。

今はもちろん、強要はできないことも多く、法律や制度的には、多様な働き方が推奨されています。たったの10年…。この10年で意識・制度改革はかなり進んでいると思います。

しかし、未だに実情として、仕事人間として身を粉にして働いてきた人が、各支社、部署のトップになることがほとんどで、そのため、往々にして残業の半強要のようなことが起き、耐えられなくなった人たちが辞めていきます。働き盛りの40歳〜元気な20歳代まで、幅広い年齢層で離職していきます。

これが可能となったのは、転職の受け皿が増えているのも要因かと思います。昔は中途では転職できなかったような職でも、今は門戸が開かれています。ポジティブな離職がし易い世の中です。

たくさんの人がそちらに流れていくということは、うちの企業が、それらの企業より、どこか決定的に良くない、時代錯誤があるということだと思います。

私個人としては、「辞めたい」とは思ったことがありません。視野が狭いのか、勇気が無いのか…。年齢も年齢ですし、家族もいますし。何より今の仕事が嫌いではない…。

長時間の残業は、5年以上前からしないことにしています。飲み会についても、コロナ禍も手伝って、忘年会と歓送迎会以外は極力出席しない。有給休暇は、どんな理由でも取得する。息子の行事は当然のこと…散髪したい、早朝は土砂降りだから…、仕事に支障が無ければ自由に取得します。もちろん、重要な仕事がある時にはそのようなことはしません。

いつも自分のモチベーションが上がるように行動しています。これは周囲から見たら賛否あると思います。散髪なんて、休日に行けば良い…。土砂降りだから午前中休む?だらしないな…。

私は良いと思います。鬱陶しく伸びてしまった髪なんてすぐにでも切った方が良い。ずぶ濡れで無理に定時に出勤するメリットはあるのでしょうか?モチベーションが下がります。

中間層の自分のような立場の人間が、このように行動すれば、若い人達も有給休暇を自由に取りやすいのではないか?とも考えています。このあたりも「働き方」の範疇ではないのかな?と…。

部署のトップにいる人達はなかなか休暇は取りません。なぜなのか甚だ疑問です。部下たちも休みにくいですし、休暇を取ってもそこまで誰も困りません…。

重要な仕事がある時は、容易に休む訳にはいかないのは当然のこと。しかしながら、特別な予定の無い日は、休んでも構わない、他の日に取り戻せば良いだけです。

結局、過去の常識、あるべき姿に固執してしまっているだけ…そのような中で頑張ってきたから、今更、スタンスを変えられない。仕事以外に時間を使おうなどと思えない、使う術を知らないのでしょう。また、組織のあり方を変えることが、自分が歩んで評価されてきた道を根底から覆すことになりますので、本人の中でのハードルが高いのでしょう。

そのようなスタンスに疑問を感じる人が多くいるから、離職者が後を絶たないのだ…と思っています。

幹部クラスの世代は未だに必死で、どんぐりの背比べのような競争を続け、若い世代はそれを見ても全く理解できない…興味が湧かないといった感じでしょう。

幸いにも、私自身は今の仕事は嫌いではないので、辛いとか、辞めたいとか思うことはありません。珍しいのかも知れませんが、仕事を終わらすことの達成感が心地いい…。しかしながら、働き方はある程度、常識の範囲内で好きにさせてもらっています。

過去の基準で評価され、上に立った人間が意識改革をしないと、いつまで経っても離職者は減らないでしょう。ただ、過去の基準で上に立っているからこそ、なかなか難しいのだと思いますし、頑張った人間は評価されないと、誰も頑張らなくなる恐れもあるのも否定はできません。

20代、30代の離職は本当に痛手です。それらをカバーするのは、40代、50代ですから…。

そのような中の、近頃の女性の幹部登用の流れ。これは1つの大きな転換材料になると思っています。現在女性幹部をされている方々も、「家庭があるから遠方への異動はできない」「家庭があるから残業はできない」との理由で、したくても異動・残業ができない状況だった…それが理由で昇進が遅れ、幹部になれなかった…。そういった人たちを幹部にすることで、幹部層の価値観を大きく変えることができると期待しています。

ジェンダーレスの世の中を目指すなら尚更、男性が「家庭があるから、異動はできない。」「家庭があるから残業ができない…。」そう言った声が出てくるのが当然だと思いますし、出てこないなら、ジェンダーレスが絵空事になっているということだと思います。(一足先にそんなことを実行したりしていましたが…)

他部署の人が異動の挨拶にやってきます。しかし、他支社への異動者より、離職の挨拶の方が多い。寂しい話です。

「やっと、人間らしい生活ができます!まずは、生活リズムを人間のリズムに戻そうと思います!」

…こんな挨拶あるのか…。
前向きな捨てゼリフです…。とても嬉しそう…。
よく頑張ったな…。20代…。

そんなこと言うなよ…と思うとともに、3月までよく耐えたな…と。

うちの部署にも、離職者がいます。あまり仕事が好きではないタイプの人で、今年度は、上司から無理矢理仕事をさせられていた50代です。その方が言います。

「そうそう。人間らしい生活をしたら良い!」

共感できるのでしょう。
しかしながら、上司の前でそのような発言を…。

あまり感心はできませんが、心の底からそう思っていたのでしょう。

離職者が声を揃えて、このような発言をする職場…。もちろん声には出さない人もいるでしょうけど…。私、個人としては、そこまで悪い職場だとは思っていない。各自の置かれた環境・立場や能力によって、様々な受け止め方になる職場であるということのようです。

この先、うちの社はどのような方向に進んでいくのでしょうか。条件はそれほど悪くは無いので、募集すれば、毎年たくさん集まりますが…。

個人的な唯一の困りごとは、離職者が多く、実務経験も乏しく、指導が難しい世の中であるからか、後進が育たないことです。

給料もそこそこ。有給休暇も、育児休暇も自由に取れる…。悪くない条件のはずなのですが、そうはいかない支社、部署、上司がいるために…。

また、休暇が取りやすい…裏を返せば、どこかに誰かにしわ寄せがくる。やればやるだけ仕事がやってくる。仕事は嫌いではないですが、やればやるだけ流れてくるようだと、達成感が感じられなくなり、ひと息つけなくなり、息切れがします。(ブラック企業なのでしょうか…)

無用な付き合いなどは明らかに減ってきていますが、それがためにどこか無機質な感じになっている。人間味に乏しい…。ドライな感じ…。そして、自己愛の強すぎる人が多い。特に幹部達にその傾向があります。残念ながら、部下達にはそれが見えるので本気でついていくことはないです。(そもそも「ついていく」というこの発想も古いのかも知れません)

「楽しくテンション上げて仕事をしよう。」「後進を育てよう。」自分がどうあるべきか…毎日模索している日々です。どうせなら楽しく仕事がしたいのです。あと5年ほど経てば、本当の意味での多様な働き方がどの支社でも可能になるかな…と思っています。それは、社内の年齢層の逆ピラミッド型がピラミッド型に戻るタイミングです。(現在は過渡期の砂時計型です)

私自身は、転勤族にも関わらず、10年間引っ越しも単身赴任もしておりませんが、少し遅れてはいるものの、そこそこの立ち位置にいます。それまでは4回家族と共に引っ越ししておりました。未だに2~3年に1度引っ越しを余儀なくされている人もいますので、そのような方には申し訳なく思っています。10年前なら、これだけ引っ越ししなければ、全く昇進は見込めない企業でした。(見方を変えれば罰則のようなものです)

奥さんは「別に偉くならなくても良い。家庭には父親が大切。」と言い、多少の遠距離な通勤は経験したものの、10年間引っ越しはしておりません。

ですので、半分昇進は諦めながら、仕事は嫌いでは無いので、モチベーションは下げずにやってきました。(昇進を諦めると、やる気が無くなる人が多い…)

…どうやら、時代は変化し、ある程度の昇進は可能になったようです。ひっそりと昇進しております。少子化問題、人材不足、働き方改革、後進が育たない…それらが理由でしょう。肩書を欲しがる人が減っているのも原因でしょうか。欲しがる人が少ない肩書など大した価値もありません。

最上級の幹部になろうと思えば、まだ引っ越しなどが必要でしょうが、全くそんな身分になりたいとも思えず、実働部隊として仕事を続けたいと思っています。家庭を顧みず、自分の時間の制約が増すくらいなら、現在の立ち位置で定年退職できれば良いと思っています。引っ越ししないと昇進できない…。このことが昔話になる日も近いのではないでしょうか…。

まずは離職者を減らさないと…。自分たちも立っていられなくなると思うのです。今日の常識は明日の非常識。とにもかくにも、私達の世代が素晴らしいと考えていたどこか窮屈な社内常識は、今の若い世代には受け入れがたいモノなのでしょう…。社内全体が柔軟な思考にならないといけないと思う今日この頃です…。


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