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日本の伸びしろ 悲観を成長に帰る思考力 を読んで 出口氏の復活に安心し、思索する

以前にもライフネット生命創設者の出口氏の著作の書評をアップしました。

以前は脳出血になってその闘病記、という話でしたが、今回はその後の著作です。
どこまで今までの能力を保持されているか、そして病気をある程度克服されてどのように理論が深まったか、などを拝見したい な、と思い、最近出た著作を購入してみました。

では、書籍のメタデータを貼っておきますね。

今回も読書ノートからの書評ですので、小理屈野郎の読書ノート・ローカルルールの凡例を以下に示しておきます。

・;キーワード
→;全文から導き出されること
※;引用(引用の背景で示されていることもあります)
☆;小理屈野郎自身が考えたこと


書名 日本の伸びしろ 悲観を成長に帰る思考力
読書開始日 2022/10/26 23:02
読了日 2022/10/28 16:18

読了後の考察

まずは出口氏が病気から回復していることを十分感じられた ことが一番よかった。
現在はおそらく口述筆記のようなパターンになっていると思われるが、それでも以前のようなパリッと切れ渡った議論をしているところが非常にすごいと思う。
それと、今回の著書を書くための「ファクト」として新しくデータも仕入れている 模様。ほぼ完全復活という感じであろうか。
ただし、その上で、現在の男女格差問題について は、自身はその様な格差社会に生きており、そしてそれを是認した生活をしていたのに、それに対する言及がなく、また、それに対するアクションもない。高みの見物のような気がする 。これについては少し残念な気がした。
あと、どのアイデアもここまであるのなら何か実現の方向に向かっていく、もしくは自分の仲間が実現に向かって歩き出していくという方向で考えているのかな? というところも若干不安に思った。出口氏個人的に大学運営で教育や移民、というところでは貢献しているのでそれで満足しているのかもしれない(病み上がりの人に言うのは少し酷かもしれないが)
あと、この内容をどのように実際に実現していくか、ということも非常に大事ではないかなと感じた。

キーワードは?(Permanent notes用)

(なるべく少なく、一般の検索で引っかかりにくい言葉、将来もう一度見つけてみたいと考えられる言葉)
#留学生
#ダイバーシティー

概略・購入の経緯は?

Kindleからのおすすめ(出口治明氏をフォローしている)から、新刊が出たとのことで購入となった。
脳出血後の著作なのかどうかははっきりしない(場合によっては脳出血前の再編集の可能性あり)が、内容としては、今後の生きるヒントになるかと思い購入とした。

本の対象読者は?

日本の社会になんとなく矛盾を感じている人
日本の社会の復活の端緒をつかみたい人

著者の考えはどのようなものか?

・諦め気分が一番だめだ

→低成長や人口減などの個々の問題はそれぞれ解決の糸口を探せば見つかる 。それ以前に「日本はもう何をやってもよくならない(=悲観)」が一番問題 。悲観してしまうと出てくる解決策も出てこなくなる、ということだろう。哲学的な思索でも、ニヒリズムが一番だめ 、と佐藤優氏が自身の著書内でいっていたことを強烈に記憶しているが、それがふとよみがえった。

・難しそうに見えるが…

問題や課題は解きほぐしていくと、一つ一つは意外とシンプル なことが多い。そして、そのときほぐし方としては「なぜ」を3回繰り替えす 、ということを提唱している。
トヨタの社内では、「なぜ」を5回繰り返している とのこと。おそらく3回では少ない(社会の大きな問題は5回でも少ないかもしれない)をかもしれないが、それを自分も含めたくさんの人がすることによって新しい課題解決法が見えてくるかも しれない。

・どん底

→どん底と言うことは、大きく飛躍するチャンス と考えればよいこと。

・著者のモットー

今までも登場しているが、これも不変である。このあたりの一貫性は大事ではないかと考える。

・しんどいときほど、元気に明るく楽しく取り組む
・落ち込んだり心配したりは時間の無駄。確実に前進できる、伸びしろはある、と確信したら、あとは自分を信じてとにかくやりきる。
・悲観的な考え方が嫌いで、何事も楽観に取り組む(中略)悲観首位は気分に属し、楽観主義は意思に属する
・悲観的な予測は当たらないことが多い(石油の埋蔵量など)

・人間の幸福

→7つに集約される

・おいしいご飯が食べられる
・いつでも安心して眠れる
・住みたい場所に住み、いきたいところへいける(行動の自由の確保)
・安心して赤ちゃんを産める
・自分がなりたい職業につける
・上司の悪口がいえる(言論の自由)
・GDPの成長率が一定程度

氏の考えが端的に見える言葉だと感じた。
確かにこれらが満たされると、それだけで十分だなあと感心もした。

・今後の社会に必要なもの

高学歴社会
大学生がしっかりと勉強する社会 。これは大手企業が就職時に大学の成績(大学のランキングに関わらない)を重視するようにすれば、かなり改善される はず、とのこと。また、通期採用 を行うことでも緩和できるのではないか?
博士・修士課程を修了した人がたくさん出る社会。そしてその課程は学士取得時と違うもの。またダブル・トリプルマスター/ドクターなどが出てくるとよい 。これは考え方のダイバーシティーにつながる

女性活躍
女性の方が学生の間は成績はよいのに、社会に出ると抹殺される。社会に出てからの女性の差別が著しい と考えられる。出産など女性しか担えないことがあるが、それに対する配慮が必要 。勤続年数で判断しない人事考課も必要だろう。
また、夫婦別姓 も必要ではないかと考えている。これによって差別がなくなってくるのではないか?元々日本での夫婦同姓は明治時代に戸籍が出てからのこと。それ以前は夫婦別姓だった。それほど歴史のあるものではない。更に男性の育児への参画(今以上に、そして女性と同じように。これをしようと思うと育児休暇を女性並みにしっかりと取る必要がある)。更に専業主婦をしている方がお得と感じる税制も問題あり。これについては簡単に制度変更できるはず。そして実際にその様な方向になってきている。
一度退職すると同一職場に復職したとしても正社員にはなれない構造も改めるべき。
基本的には子供は地域で育てるべき 。元々人間(ホモ・サピエンス)は地域で、そして群れで子供を育ててきていた。ここに立ち返ることによって生産性を上げることができる可能性がある。

ダイバーシティー(多様化)
留学生受け入れなどを中心とした多民族社会の創出。
おなじ文化でおなじような方向で考えていると話が前に進まないことが多いはず。
日本社会の牽引役は第2次産業だったが、それを第3次産業にしていく努力。これもダイバーシティーの一環と考えることができるのではないか?
著者の言う「変態(=社会的なヲタクと言うべきか)」が楽しく生活できる社会を作る。これにより面白い発想が日の目を見るようになるはず
時間給ではなく成果給とすべき。これにすれば多様性が生まれる可能性が極めて高い。
ゼロクリアーで考えていくこと。こうすることにより以前からの考え方や制度のくびきから解き放たれる。
9月入学の学制に変える。→世界と合わせる。

・プログラミング教育について

→現在隆盛を極めているプログラミング言語は習っている子供たちが大人になったときも使われているとは限らない、むしろ順序立てて、理屈立てて考えるクセをつける方が重要 。個人的にはそれにはむしろ国語力をしっかりつける、科学的思考法を鍛える方がよい のではないかと思う。
これについては個人的には英語教育や国語の授業についての著書を読んでいるが、そちらの内容を参照しても納得できる。
まず自分の母語は何か、そしてそれを使って深く思索できるかどうか 。この能力をつけるのが国語の授業を根幹とした学校教育ではないかと考える。

・生産力向上

→昔と全く変わっていないはず。現在数値上は労働時間は短くなっているが、それは非正規労働者が増えているから統計にその労働時間が入らないから。
根本的な施策が必要。

・人口減少

→基本的に避ける必要のある事象。
これについては、子供の数を増やすこと、移民(もしくは留学生)を増やす ことが重要。
子供の数を増やすためには税制、夫婦同姓などの社会のシステムを変えること、そして育児に関わる休暇を取れるようにすること。
海外からの人流に解を求める場合は、移民であれば高学歴の仕事(日本人が奪われるのではないか、と危惧するような仕事)から順番に取り入れる。それの究極の青田買い、という意味では留学生として海外から日本の大学に留学してもらうのが一番であると著者。

・政策決定

これをだめにしている一番の原因は、議員報酬の高さ 。既得特権のようになっている。もっと志のしっかりした人がお金がなくても議員になれる、という風にすれば、もっとしっかりした政策が実現するのではないか?
政権がコロコロと変わりすぎる。長期的な視点でものを考えず、次の選挙がどうなるかを中心に考えている。

・選挙

投票率が落ちると、既得特権を握っている団体の票が相対的に強くなり、その様な人々のための政治になってくる。
いわゆる浮動層の投票者が増えることによって既得特権を握っている層の投票割合が相対的に落ちることによって自分たちの求める政策を通していく、という風に考える。
常にベストの政治家を選ぶのではなく、ワーストの政治家が当選しないようにするのが選挙 。これについては出口氏もチャーチルの言葉を参照にしたようだ。

その考えにどのような印象を持ったか?

どれもそうだなと思うことが多い。
男女格差の解消については、やはりまだなんとなく著者は高みの見物を決めているような気がしてならない。

類書との違いはどこか

個人のポジショントークとして、現在の社会をどのようにしたらよくできるかというピンポイントの解法を提示しているところ。

関連する情報は何かあるか

OECDのデータなど、ファクトとして十分使えるものが満載である。

キーワードは?(読書ノート用)

(1~2個と少なめで。もう一度見つけたい、検索して引っかかりにくい言葉を考える)
#選挙
#政策

まとめ

非常に感銘深い著書だった。出口氏は復活していた。
そのことには素直にうれしいし感謝したい気持ちでいっぱいだった。
内容だけをその様な背景をクリアして考えると、自分のできる範囲でできることをやろうとしているのがよく分かるのではあるが、少し残念な気持ちも残る内容ではあった。


出口氏、復活されていますね。
今後もどのようなことを語ってくれるのか、楽しみに神官を待ちたいと思います。

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