地方自治体の債権回収に関する『滞納処分』の規定について,ちょっと踏み込んだお話をします。
地方自治体の債権管理について,『明日からできる債権回収』をテーマに,過去の研修原稿をもとにして記事を書いています。
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どうもこんにちは,まっつんです。
今回は,地方自治体の債権について,強制徴収債権に関する滞納処分についてお話ししたいと思います。
強制徴収債権とは,税金や介護保険料など,職員が直接差押えができる規定のあるものというお話をしましたね。
『差押え』って言葉は聞いたことがあると思いますが,『滞納処分』って言葉はあまり聞き馴染みがないのではないでしょうか?
『滞納処分』っていうのは,税金などの滞納者に対して行う行政処分全般を指す用語です。
専門用語とってもいいかも知れませんね。
『差押え』は,その行政処分の一手続きのことです。
他にも,『換価』『配当』という手続きがあり,大きく分けると3分類されます。
処分の時系列で見てみると,『差押え』→『換価』→『配当』という3段階で構成されるものになります。
『換価』と『配当』は,『差押え』に紐づいてくる手続きなので,今回は『差押え』に関する規定について見ていきましょう。
さて,滞納処分に関する一連の手続きは,『国税徴収法』に規定されているところですが,『差押え』については,その『第47条』に規定されています。
具体的に条文を見てみましょう。
『徴収職員は,滞納者の国税につきその財産を差し押えなければならない』
と,あります。
『〇〇しなければならない』
というのは,義務規定になりますので,これをしない場合は法律違反になってしまうわけです。
結構厳しい義務規定と思いませんか?
次に,『差押え』をなしければならない状態とは,どういう要件が満たされた時なのでしょうか。
これも,条文に記されています。
『第47条第1項第1号』です。
『滞納者が督促を受け,その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して十日を経過した日までに完納しないとき。』
と,規定されています。
ここで,『督促状』という言葉が出てきます。
『督促状』とは,一般的にいうと、「支払い期限が過ぎているので,支払いしてください」と催告をする書面のことです。
多くの市町村では,納期限経過後20日以内に発送する旨が『条例』で規定されています。
だいたい20日に発送することが多いですね。
そして,発送後10日を経過した日までに納付されなければ,『差押え』をしなければならないとされているのです。
この規定では,『〇〇から起算して』『○日を経過した日』という言葉が出てきました。
これも,日常的には耳にすることが少ないのではないでしょうか。
日常的には,『○日後』とかいう言い方をよく使いますよね。
『起算して』とか『経過した日』というのは,民法の日数計算(期間計算)の規定に基づくものになります。
いろんな契約書なんかにも使用されることが多いです。
そのため,月末が納期限の税金について,翌月20日に督促状が発せられた場合を例にして考えると,
【20日に督促状を発送した場合】
①20日から起算→1日目は20日となる
②10日を経過した日→30日
③差押可能となる日→31日または翌月1日
となります。
と言っても,この要件が満たされてすぐに差押えをしないと,即違法と判断されるワケではありません。
しかし,滞納の早期解決,確実な財源確保という視点で考えると,滞納状態をいつまでも放置しておくのではなくて,できる限り早急に対処することが肝心です。
(ここからは余談ですが,)
一方で,『〇〇を発してから』とか『○日を経過する日』という言葉もあります。
今回の『差押え』の規定を例に準用してみますと,
① ’ 〇〇を発してから→起算日は21日
②’ 10日を経過する日→29日
※これはあくまで[例]です。『差押え』の規定にこのような記載はされていませんので,間違えないようにしてください。
という計算になります。
この期間計算については,税金などの徴収に関するものだけでなく,日常的な契約関係の事務にも関連してきますので,頭の片隅に置いておいてください。
それでは,今日はここまでにしたいと思います。
次回の記事も楽しみにしていてください。
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[引用研修]
令和元年11月29日 須崎県税事務所管内地方税研究会 徴収事務研修会
『徴収事務について』~徴収率UPのための滞納整理の実務~
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