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新人職員のための債権管理『超』基礎講座ver.2022 2日目 [消滅時効の確認]

ごきげんいかがですか?
まっつんの「明日からできる債権回収」にようこそ。

今回のシリーズは,新人職員のための債権管理『超』基礎講座 です。これだけは知っておきたい基本中の基本を6回に分けておはなししますので,一緒に勉強していきましょう。

それでは2日目を始めたいと思います。
今日は,消滅時効の確認 です。
消滅時効は,かなり重要な項目になりますので,しっかり覚えておくようにしましょう。

消滅時効って,何のことでしょうか?

債権者が一定の期間,権利を行使しないことによって,権利が消滅することを言います。
消滅時効についても,公債権と,私債権によって,違いがありますので,それぞれ理解してください。

まずは,公債権についてです。
地方税は5年,国民健康保険料や,介護保険料は2年など,それぞれに期間が定められています。
この期間を経過してしまい,請求権がなくなってしまうことを,消滅時効が完成した,と言います。

つづいて,私債権の消滅時効です。
1日目に出てきました債権の一覧表にもありましたが,令和2年の民法改正で大きく変わりましたので,間違えないように気をつけてください。
(1日目の記事はこちらをクリック)

1日目の表はこれですね。
赤枠内をみてください。
改正前の民法では,5年や2年,10年というのもあります。

改正後がこちらです。

改正前に比べて,規定がスッキリしましたね。
5年と,10年のみになりました。
だけど,行使することができることを知った時 とか,権利を行使することができる時 とか,何だかよくわかりませんね。

でも安心してください。

地方自治体の私債権に関しては,行使することができることを知った時 も,権利を行使することができる時 も同時に発生するものとされていますので,消滅時効期間は,『5年』,と理解しておいてください。

ところで,法律が改正されたのに,どうして改正前の民法? って,疑問に思うかもしれません。

実は,債権というか,契約の発生した時点が改正の前後で,旧民法を適用するか,改正民法を適用するかが変わってきます。
なので,現在,私債権を担当しているみなさんは,両方の規定を覚えておく必要があります。

大変ですね。

消滅時効が完成してしまって,請求権がなくなってしまうと,不作為,とみなされる恐れがありますので,消滅時効の進行を止めないといけません。

それが,消滅時効の中断 です。

ここでは,下段の旧民法の規定はあまり気にしなくてもいいです。
次に出てきます,改正後の規定が重要になります。

でも,地方税法や,地方自治法,の規定は,変わらず適用されますので,覚えておかなくてはなりません。
この規定は,地方自治体の債権にだけ適用される特別規定です。

そして,これが,改正された民法の規定です。

かなり変更されていますね。

まず,呼び方から,完成猶予と,更新,に変わっています。
主な事由として,6種類あげていますが,特に赤字で書いている4種類は,必ず覚えてください。
簡単に説明していきますね。

1の裁判上の請求とは,名前のとおりですが,裁判に訴えて請求をすること,を言います。
2の強制執行等とは,主に債務者の財産を差し押さえすること,を言います。
4の催告とは,手紙などで請求すること,を言います。
1の裁判状の請求よりは簡単な方法,と言った感じです。
6の承認とは,債務者が,自分が滞納していることを認めること,を言います。

それぞれの具体的な手続きは,別の機会に解説したいと思います。
今回は,簡単に覚えておいてください。

続いて,完成猶予と更新の違いについて,裁判上の請求を例にして説明しますね。
まず,消滅時効の完成猶予,からです。

この例では,消滅時効が完成する前に,裁判上の請求を起こしています。
そして,本来の消滅時効が完成したのちに,裁判が終了しています。
ここでまた,確定裁判等によらず終了。
なんて,よくわからない表現がされています。
これは,裁判の結果,裁判外で和解した,というのが代表的な例になります。

この場合,和解により訴えを取り下げることで,裁判が終わってから,6ヶ月間は消滅時効が完成しません。
この6ヶ月が猶予期間ということになります。

ちょっと踏み込んだ話になりますが,
6ヶ月の猶予期間中に,消滅時効の更新がされなければ,6ヶ月経過で消滅してしまいます。

それでは,消滅時効の更新,を説明します。
この例も,時系列は先ほどの完成猶予と同じとします。

消滅時効完成前に訴えを起こして,本来の消滅時効が完成したのちに,裁判が終了していますね。
完成猶予の時との違いは,裁判の終わり方が確定裁判等により権利確定,となっています。

またまた,よくわかりませんね。

これは,裁判による判決での終了や,裁判による和解など,の場合のことです。
この場合だと,裁判の終了から6ヶ月の猶予とかではなくて,そこで,一度,消滅時効期間の進行がリセットされることになります。
再び,一から消滅時効期間が進行していく,ということです。
この場合,新たな消滅時効期間は5年ではありませんので,気をつけてください。

判決や,判決と同一の効力を有するもの,これには,和解も含まれます。
これらによって裁判が終了し,消滅時効が更新した場合は,新しい消滅時効期間は10年,ということになります。

いよいよ消滅時効の最後の関門。
消滅時効の援用,です。
これも突き詰めると,かなり難しくなるので今回は,表面の部分だけ解説します。

というか,私もまだまだ理解しきれていない部分も多いんですよね。

例えば,住宅使用料について,消滅時効期間の5年間,なんにもしないで放置したとします。
5年分の家賃が積み重なって,かなりの滞納になってしまうと思います。
それを,本来の時効期間が完成した後の,6年目に請求した場合です。

何も言わず支払いしてくれればいいのですが,債務者から,これって時効じゃないの って主張があれば,5年前の請求権が消滅してしまいます。

これって時効じゃないの って主張すること。

これを,消滅時効の援用,消滅時効を援用する,と言います。
援用をされると,消滅時効の中断や更新について反論できなければ,もうお手上げです。

実際に,私の恥ずかしい経験として,一千万円を超える請求で裁判を起こしたのですが,裁判で消滅時効を援用されて,その大半が消滅してしまったことがあります。結局,回収できたのは,30万円とちょっとでした。

みなさんは,こんなことにならないように注意してくださいね。

消滅時効の援用の規定は,私債権に限定されるものですので,公債権の場合は,この概念そのものがありません。
公債権,たとえば地方税の場合,5年を経過してしまうと,問答無用で消滅してしまいますので,注意してください。

今回は,このシリーズ最大の難関とも言える,消滅時効に関する説明をしてきました。
消滅時効を理解していないと,債権管理そのものが崩れてしまいます。
多くの参考書籍もありますので,日々の勉強を積み重ねて,しっかり理解してくださいね。

今日はココまでになります。
また次回も見てくださいね。

それではみなさん,ごきげんよう。

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