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イギリス倹約和食術-その2

さて、かくなる経緯から、イギリスの普通のスーパーマーケットでどんな和食の調味料や食材が手に入るかということを、とりとめなく書いた。

次は、イギリスのスーパーマーケットチェーンじゃないところでどんなものが手に入るのかについて書いてみよう。

オリエンタル系スーパーに行く前に

国際都市ロンドンには、いろんな人が住んでいる。
ありがたいことに、イギリスの地方都市や、ヨーロッパの都市に比べたら格段にいろんな食材へのアクセスが許されている街だ。
だから、日系のみならず、韓国、中国、タイなんかのスーパーがたくさんあって、そこにいけばたいていのものは買うことができる。

の、だけど。

その前に、ちょっと提案したいのが、それ以外のお店たち、なのだ。

勇気をだして中東系のスーパーにはいってみよう

イギリスの街角に結構多いのが、こんな感じの個人商店。店先には野菜が並んでいて、看板にはちょっと耳慣れない名前やアラビア語がかいてあったりする。

これ、イラン系あるいはトルコ系のスーパーだ。

正直、ロンドンに来たばかりのころは、足を踏み入れるのが怖かった。
何が売ってるのかよくわからないし、ヒジャブをつけたおねえさんが店番をしていたりして、いまひとつ勇気がわかなかったのだ。

ところが。
ある日たまたま店頭に栗が売っているのが目についた。
しかも商店街にある八百屋さんより安かった。
ちょっと買ってみようかな…。

そう思って入ってみたら、なんとなんと!
そこは、普通のスーパーではなかなか買えない懐かしい野菜の宝庫だったのだ。

奥がヨーロッパでよくみる太くて水っぽいキュウリ。手前が私たちの思うところのキュウリ。
ぬか漬けにすると違いが明白。
スーパーだと葉っぱだけを切り取ったものが
袋に入って売られているほうれん草も、
ここならしっか芯までくっついている。
ゴーヤ!
ムーリ(大根)だけでなく、下段にはサツマイモや大ぶりのショウガが。
スーパーでみるかぼちゃ類は水気の多いバターナッツ・スクワッシュがほとんどだが、
ぽっくりしたかぼちゃがしかも小分けで!

こういうお店の野菜たちはきっと、ほとんど一回冷凍され解凍後に売られている大衆スーパーとは、流通ルートが違うのだろう。日持ちもいい気がする。
そして、なにより、とにかくぐっとくる懐かし野菜の取り揃えがいいのだ。

もちろんクルミやアーモンドのナッツ類や、スパイス、パセリやミント、コリアンダーなど、私たちがイメージする中東の料理やお菓子に使われているものも豊富に売られている。

でも、私たちがぐっとくる「日本ぽい」野菜があちこちに並んでいる姿をみると、ああ、シルクロードってこういうことだよな、と実感してしまうのだ。

私は個人的に「ギョーザロード」と呼んでいるのだが、イタリアのラビオリをスタートとして、ポーランドのピエロギ、ウクライナのヴァレーニキ、ジョージアのヒンカリ、ネパールやチベットのモモ、中国の小籠包、朝鮮のマントウ、そして日本の餃子まで、グルテンの皮に種をいれて包んだ食べものが西から東へとつながってルートを形成している。
それはヨーロッパから日本まで、食がつながっていることの証だ。

同じように、中東、トルコ系スーパーに置かれた野菜たちをみていると、同じ野菜を食べている人たちのルートのようなものが垣間見えてくる気がするのだ。

こんな素敵な場所、ビクついて入らないなんてもったいない!
とくにイランの人たちは親日派が多い。かごに入れた野菜から「お、もしかして日本人?」なんて話しかけられることもある。アニメ好きの店員さんがいたりもする。

もちろん、日本と同じように、お店によって品物の回転が良かったり悪かったりで、クオリティにバラつきはあるかもしれない。
けれど、一度行ってみて損はない。

タイ系のお店もあなどれない

国の経済力にともなってか、姿を見かけることが多くなったのがタイ系のお店。

もともと、イギリスのパブにはタイ料理を出すところが結構多い。
それはなぜか。

とある狭いキッチンしかないパブに雇われたシェフはタイ人だった。
「こんな限られたスペースでフィッシュアンドチップスやソーセージ&ママッシュポテトなどの定番メニューを作るのは大変だ。だからひとつの中華鍋だけでいろんなメニューが作れるタイ料理をやらせてほしい」とオーナーに訴えたのだという。
疑いつつも試してみるかとOKしたオーナー。そしてタイカレーやパッタイを出しはじめたところ、これがもともとインド料理でスパイスに慣れていたイギリス人たちの舌を魅了したという。
しかもビールが進むピリ辛味。
売り上げも伸びて、オーナーは万々歳。

その成功のうわさが広がって、だんだんとタイ料理と伝統的パブという組み合わせが増えていったのだとか。

そのはしりといわれるのが、お花だらけの外見で有名なケンジントンのチャーチルアームスだ。

ザ、イギリスのパブと思われがちなチャーチルアームス。
けれど、実はここ、オーナーはアイルランド人。
だからよく見るとアイルランド共和国旗である三色旗がぜったいにユニオンジャックより高い位置に掲げられている。

そんなエキゾチックな料理だったタイ料理も、タイ人の住民が増えるにつれどんどんと市民権を獲得していき、町中にタイ系のお店が増えてきた。

中華系スーパーが大型で車がないと行きづらい郊外にあることが多いのと対照的にタイ系スーパーは溶け込むように商店街に立っていることが多い。
小さくて、少しすすけたような外見かもしれない。
でも、タイだけじゃなく、中華、韓国、日本なんかのいろいろが置かれているから、これまた入ってみる価値は大いにある。

タイ系スーパーは小型で少し値段は高めでも、近所にあるなら
ささっと手に入れたいものがあるときはとても便利。

たとえば餃子の皮、生春巻きの皮、缶詰のコーナーにはタケノコが売られている(考えたらグリーンカレーに入っているものね)。

韓国、中華系スーパーはもちろん裏切らない。

どこに住んでいるかにもよるし、車があるかないかにもよるけれど、韓国、中華系スーパーももちろん強力な味方だ。

コロナ以降少しずつ品ぞろえが変わってしまっているけれど、基本的にどこもレンコンやゴボウなどのアジア野菜、穀類、調味材料や乾物などに加えて、蒸し器や中華鍋、韓国焼肉鍋やアカスリタオルなど生活用品も置いている。

南ロンドン、テニスの聖地Wimbledonの隣町、New Maldenはリトルコリアだ。
韓国系がたくさん住む町で、おいしい焼肉屋さんやキムチ屋さんもたくさんある。
その中心から少し外れた幹線道路ぞいにある巨大な卸スーパーがKorea Foods。

ゴマやごま油など日本も韓国も使うものだったら、韓国製のほうが若干安い。
もちろん韓国のりやキムチもたくさん置いてある。
そして、焼き肉文化のおかげで薄切りにした豚肉と牛肉が冷蔵と冷凍でたくさん売られているのがなんとも嬉しい。

若干値段は張るけれど、すでに味付けされているブルコギやナムルも手に入る。
外食を考えたらかなりお得だ。

少し引っ込んだところにドーンと立つKorea Foodsの入り口

そして今度は中華系。

中華スーパーといえば、電車でも行きやすいのはチャイナタウンの真ん中にあるLoon Fung(龍鳳)だろう。

チャイナタウンにあるLoon Fung

もしも車がある、あるいは北西ロンドンにいるのなら、サッカーの聖地WimbleyにあるLoon Fungの郊外店もお勧めだ。

Korea Foodsに比べ広く大きく、扱っている範囲もタイ系やベトナム系の食材も含んでいる。
ここは材料系の冷凍食品が豊富なので、おうちに大きい冷凍庫があるのなら、冷凍イカや冷凍エビ、冷凍の牡蠣を買い込んでいくこともできる。

ちなみに2階には中華料理店があって点心が楽しめる
(でも1階の冷凍コーナーで見かけるのを温めただけじゃ…という疑念が消えない)

北ロンドンに近いのなら、Wing Yip Superstore Cricklewoodへ。
いや、たとえ北ロンドンじゃなくても、一回アミューズメントパークに行くような気持ちでいってみてもよいかもしれない。

なにしろ、まず建物が香港の水上レストラン(もう無くなってしまったらしいけれど)かタイガーバームガーデンか、というすごいデコ。

遠くからも目を引く。でもこの建物自体は使われてないぽい。

中も巨大で、とにかくいろんなものが売られている。
奥のほうは卸向けの箱買いコーナーなので、業者のバンもどんどんやってくる。
コロナ後のいまでも規模が変わっていないか分からないけれど、巨大なアジア各国料理を扱うフードコートもあったはず。

なので、本当にアミューズメントパークだ。

そして。
海鮮が好きならば、Hoo Hing(和興)までがんばって足を運ぶのもいい。

ただし、ここは、車がないとかなり厳しいロケーション。
そして幹線道路のすぐ脇なので「目に入るけれど、どうやって駐車場にたどり着くのか」というチャレンジはある。

Loon Fungに比べると、野菜や乾物など一般食材の取り揃えは劣るけれど、とにかくここの売りは海産物の生け簀!

もちろんお値段もそれなりにするけれど、外食よりはお買い得。
ここも2階にひなびた中華食堂がある。
意外とメニューが豊富なのであなどれない。

と、いうことで、
和のものを、和じゃない場所から手に入れる術、その2はこれまで。


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