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ウルトラマンブレーザー第1話の所感

ウルトラマンブレーザーの第1話『ファースト・ウェイブ』が本日2023年7月8日に放映された。自分も先ほど視聴し、ここ10年のニュージェネレーション・シリーズの流れを一歳断ち切って、新たなウルトラマン像を生み出そうとする実験的で意欲的な作品であることを感じさせるエピソードだったが、あまりに異色だった故これを少し吐き出すため、構成がくっきりと二分割できる前半と後半に分けて所感を軽く述べていきたい。

(ちなみに小生初トラマンはコスモス、平成3部作および後期の4作は履修済み、それ以降は離れていたがZを機に戻ってきた、そして昭和は有名なエピソードを除きほぼ未履修という完全なる平成世代であることを了承いただきたい)


第1話の前半:フューチャーとリアルを融合させた防衛隊の会話劇

第1話の冒頭、特殊機動団が空挺特殊任務の遂行にあたって輸送機の中に次いで、迫力溢れる特機団の降下シーンと宇宙攻殻怪獣バザンガが蹂躙する池袋の街が映し出される。

両腕に備えるジェットエンジンが噴射し空中を推進する装置はジェットパックといい、実用化に向けて着々と進められている器具のようだが、その他も街とAR技術が融合するゴーグルの装着など、フューチャリスティックな要素が池袋という実在の都市で繰り広げられるリアルな戦闘シーンと相まって映えている。田口清隆と小林啓伍のタッグによって徹底的に追求される軍事考証が冴え渡り、直近のウルトラマンにはなかったミリタリー描写が色濃く描かれる。

冒頭から映る輸送機内の緊迫した映像


しかしその実、前半の一番の見所を挙げるとすれば、特機団と指揮所、そして司令部を介した会話劇であろう。いつだって本部と現場の間は齟齬や軋轢が生まれやすいものだが、今回はその隊長を主人公、すなわちウルトラマンの変身者に据えることで、より物語を有機的に動かしやすくする中核となり得ることを示唆する意義深いシーンだ。
ともすれば重苦しくなる要素であり、実際に映像もピンと張るようなテンション感ではあるものの、その隙間を見事に縫うかのように隊長の部下に対する飄々とした対応、他部署との連携などのコミュニケーション描写をユーモラスに描き、そこに僅かな外連味を与えることであくまで特撮番組として咀嚼しやすくしているのも田口監督の技と言えるだろう。


第1話の後半:得体の知れないコードネーム”ウルトラマン”という生物の出現

物語がちょうど中盤に差し掛かり、危機に陥る特機団X-Ray 6の隊長ヒルマ・ゲントの左腕にブレーザーブレスが現出すると、ブレーザーの意思(もしくは野生の勘か)と思われるブレスの作用で強制的にストーンが装填され、ゲントはウルトラマンブレーザーへと変身する。祈りを捧げるのか如く腰を屈めて、儀式のようなポーズを取って戦闘を開始すると、いきなりサンシャイン60をよじ登り膝蹴りを食らわせる。背後に負傷しているX-Ray 6の隊員を認識しては、振り返ってはち切れんばかりの咆哮で何度も唸り、交戦相手を後退りまでさせてしまう(いやそんなの見たことないよ…)。

今までのウルトラマンはある種、一定程度の知能と文明を備えている、人類をベースに敷いた巨人であったはずだが、今回はまるで異なっている。ブレーザーは相手を獲物と捉える原始人、あるいは野生の生物のようであり、獣のように相手を威嚇してはチャージングディスプレイで示威する。人が叫んでいるのではない、獣がけたたましく鳴いている様相である。ウルトラマンというコードネームを付けられているが、我々からすればそう呼称して良いか躊躇うほどである。

池袋を象徴する高層ビル、サンシャイン60を背景にしたアイコニックな戦闘シーン


これまでからして第1話のウルトラマンの戦闘シーンというのは、得てしてCGや特殊技術を多用してダイナミックな映像効果をもたらすものであった。さらにはウルトラマンとの出会いから主人公の意志を確認し、軸となる大きな物語に組み込むという、壮大な幕開けを感じさせるように見せ得るものだったが、今回は現実に存在する都市を背景に、ブレーザーの奇怪な様子が繰り広げられることで画が保っている。
要は従来の”ウルトラマン”的な旨味を悉く潰しているので(そしてそれは狙い通りだろうが)、カタルシスが生まれづらい展開であり、あくまで子供向けの番組を標榜する中で一体どのような訴求をするのか心配でもあり、興味深くもある。


今後の展望

全てナイトタイム、かつ全編に渡って怪獣との戦闘を繰り広げるバトルシーンであったこともあるが、その要素を一つ一つ精査しても王道とはかけ離れたウルトラマンであると言って差し支えない。これが果たして自分の中で良いと思ったのか、面白いと感じたのかすら分からないレベルで圧倒されているので、どうストーリーが展開するのか等の予測も検討がつかない。が、少しだけ抑えるべきであろうポイントを挙げる。

まずはブレーザーの出自。M421という一体どのような天体で、どのようにして地球に飛来し、何をもってゲントと一体化したのか、この辺りは確実にストーリーの核となってくるだろう。第1話では3年前も似たような事例のケースに遭遇し、その際もヒルマ・ゲントは単独行動で解決に導いたようだが、どうやらこの要素が意味深に受け取られているようだ。しかし本人は全く自覚のない様子で、3年前に同化していたとしてストーリーに驚きや深みを与える要素になり得ない気もするので、個人的には大ごとには捉えていない。

次に地球防衛軍、SKaRDの面々を含めた、人類とブレーザーのインタラクションである。以前から予々噂されている未確認大型宇宙人、コードネーム”ウルトラマン”をどう人類は見做し、扱い、関わっていくのか。第1話の夜、池袋で視界に捉えたあの光景は人類の味方が悪き怪獣を倒すなんてものではなく、二つの野蛮な獣が獰猛に狩り合って食らおうとする様である。あのウルトラマンとやらを敵と見做すのか、もしくは友好的な仲間とするのか。
そして何より一体化したゲントとどのようなコミュニケーションを取るのか。あの巨人の中にゲントの理性とブレーザーの感性が混在しているようだったが、今のところはブレーザーの意識がドミナントしているようである。この関係性がコミュニケーションを通じてどう変化していくのか、この作品の成り行きを左右する重要な問題である。


兎にも角にも、異質すぎるものが詰め込まれすぎて作品の良し悪しを判断できず、ただただ唖然とするファーストインプレッションだった。この物語がどう展開するのかをただただ見守っていくことしかできない。


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