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(童話)タンポポの世界の小さな人たち
たんぽぽの綿毛のなかには、私達の知らない世界がありました。
ダンデライオン国の王女クシャトリア姫は、今日も風の吹くまま気の向くままに、王都を駆け抜けていきます。
気の移ろぎやすい彼女にとっては、幾千幾万の恋も、流れるうたかたのよう。
いつしか、恋に疲れた王女は、物憂い日々を送っていました。
「もう来ない、誰も来ませんように」
王国の智者であったバルムングは、日課のごとく、疑問を携えてくるタンポポ
午前8時、地下食品売り場にて
早朝、まだ客足のない地下食品売り場では店員が忙しそうに品出しの作業をしていた。
エアコンの効いた室内で売れ残りの野菜達が最後のお勤めを、瞑想するかのように待ち望んでいた。
新鮮だった刺身マグロのオバちゃん達も、すっかり光を失った黒ずんだ肌に。
そんな彼女達を尻目に、届いたばかりの鮮魚達が新卒社員のフレッシュさで棚に上げられる。
冷気の前で涼んでいた賞味期限切れの魚肉達は、悲しいかな、廃棄処