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裸族と運気と18時間

そもそも
いつも楽しいことをしていたい。

そんな生き方をしてきたけれど
筋痛性脳脊髄炎という病気になってから、
六割ゾンビ、四割吸血鬼みたいな生活をしている。

暑くなってきて呼吸もくるしい。
いや~夏だね!とセミの声を聞いてベッドに横たわる。


アレをさ、実行するときじゃないかな?

頭の中にささやき声が聞こえた。


新婚さん時代
友達からもらった風水の本に

「24時間裸で過ごしたら運気アップするよ」

と書いてありワクワクして夫に伝えた。

「これー!一日裸族になると運気あがるらしいよ。やる人いるのかなぁ?」

「やるなら夏がよくない?」

夫は前向き検討だったが、なんせ大和撫子風な私は裸でぷらぷら過ごすことに抵抗があったのだ。

温泉とかでタオルを前にして、そそと人様の前を通るタイプの私。
タオルなしで堂々と裸で闊歩している人を見ると、ヒィイーー!!と思いながらガン見してしまう。

ちょっと話がそれたのだが
たかが裸族、されど裸族!と思い20年以上たってしまった。

だって


裸だよ。


ヌーディストっという方達がいるけれど、凄いよ!と思う。


元気だった頃、温泉好きな私はよく一人温泉に行っていた。
初対面の見知らぬマダムに

「あなた、綺麗な身体してるわ!絵画みたい!本当素敵!」

と声をかけられた時は新手の詐欺ではなかろうか?とドキドキした。
(絵を描く方でその後も美しい身体について熱く語ってくださった。身体描かせて!とも言われ丁寧に断った。って言うか絵画の絵ってムチムチやんけ!痩せなきゃと誓ったよ)


学生時代、学校の外で定期的に
コートの下は真っ裸なおじさんがうろうろしていた。
女子高生の皆さんはキャーキャー言いながら教室から裸のおじさんを見て楽しんでいた。

どうしてかわからないけれど、
裸ってなんだか怖い!って思っていたのです。


でもさ、
病気の私でも
裸で一日過ごすことならできるんじゃない?
24時間、TWENTY FOURだよ。
ジャック・バウアーのミッションより楽じゃない?

私は鼻息荒く実行することにしました。


まず

「わたし、明日一日裸族だからよろちく!」

家族に伝える。

「了解」

「かんばれー!」

夫も娘も前向き応援してくれた。

毎回アホなことを言い出す私の言動に慣れている、麻痺している?夫&娘。


夜寝るとき裸族スタートすれば
結構楽勝じゃん?と
るんるん気分で
9時に裸でお布団に入る。


さ、寒い?いや暑いのだが
さわさわするような感じ。
開放感なんて感じないよ。


「裸でいたら体のどこかに虫とか入ったら怖くない?」

娘からホラーなことを言われ

「掛け布団でガッチリガードするから!」

掛け布団で身体を包む。
なんか上手く眠れない。


そういえば新婚の頃、夏朝起きると夫が結構な確率で上半身裸で寝ていて
(暑くて知らないうちにパジャマを脱いでしまう)

「えぇ!?フランスの方?」と驚いたことがあった。
(私の勝手なおフランスのイメージ)


まだ裸族になってちょっとなのに
もう服を着たい!
でも裸族やるって言ったの自分じゃん!
脳内一人会議をしているうちに眠りについた。


朝「おはよう」とバスタオルを巻いて
家族の前に登場したら

「オススメ露天風呂のコーナー!とかローカルテレビ番組の人みたいな格好だね」

と笑われ

「バスタオルは裸族にOKなの?」

厳しくジャッジされる。


「とにかく、今日はシャッターもカーテンも開けないでくださいますか?」

まるで政治家のような口調で夫や娘に指示を出す私。

もう、裸族とか運気UPとかの問題じゃなくなった。
私の沽券に関わるのだ!(股間じゃないよ!←余分な一言が大得意)

娘や夫をお見送りし、バスタオルをはぎ取り
裸族になる。

ただ愛犬のロビちゃんは
裸姿が嫌いだ。
お風呂上がりに脱衣所で裸でぼんやりしていると「母ちゃん、服を着ろ!」と言う目で私を見ている。

裸でお食事を取るのもデンジャラスだった。
色々気を付けなきゃいけない!
熱い食べ物を落としたら大変!

人って裸だと弱いよね。
怪我だってしやすいよ。
獣に噛まれたら太刀打ちできないよ。
裸でも堂々としていたいけれどまだまだ無理っぽい。
でも今日は気合いを入れて裸で過ごしたいのだ!

「大丈夫、大丈夫」

と自然に口に出していた。

移動するとき姿見の鏡にうつる自分の姿に
何度も驚き
「うぉおおー!!」と野太い声をだし
ロビちゃんがびっくりしてオシッコをもらしてしまった。
(ロビちゃん本当にごめんね)

ロビちゃんのおもらしを片付けるときは
裸族だとちょっとあれかな、と思い
バスタオルを巻かせていただいた。



夏のお日さまサンサンサン日和なのに
本気で真っ暗なドラキュラハウスになった我が家に

裸のおばさんと犬一匹。


裸で布団に入りもやもやする。

何やってんだ私。

元気な人はさ、
こんなことやったよ!
頑張ったよ!
楽しいよ!
人のお役にたっちゃうよ!
的な素敵で素晴らしいやってみた!をしている中

日中に暗闇で

裸族をしている私。

自分の運気UPするために

裸族をしている私。

ついつい自分を卑下していろんな方が眩しく見えてしまった。
心のデトックス?

裸になるって
なんて心も身体も弱くなるんだろう。
急に涙がでてきた。
しばらくメソメソしていたら
ラジオからKinKi Kidsのフラワーが流れてきて
まるで裸の私を応援しているように感じた。


そして冷静になり

「なんかさ、なんだかこの状態かなり可笑しくない?」

と声に出し笑いが止まらなくなった。

「はははははーー!!!!」

ひとり裸で泣きながら大笑い。
この状況を他人が見たらホラー映画だよ!!
(M・ナイト・シャマラン監督に撮ってほしいくらいだ)


笑い疲れ呼吸を整えた。

長い間、私の身体として
ずっと働き続けてくれてありがとう
裸の自分の身体に労いの言葉をかける。


人が洋服を作ったことは
すごい発明だよね。
温泉ってさ、見知らぬ人に裸見せる場所で
すごいよね~!と
裸についてまた色々考えた。


洋服を着ないとそわそわドキドキするなぁ
この感覚がたまらなく好きになる人もいるんだよね!とも思った。
私はならないけれど。

人って服を着ることで強くなったり
安心できるんだな。


そして
そもそも、運気あげたいほど
運気下がっておらんやんか!!
運気は自分で行動してあげろや!!!
(行動しようとした結果の裸族では?)


娘が学校から帰宅する時間が近づき
下着を手に取り大切に履いた。
久しぶりの布の感触に思わず心が震え
「ありがとう」とつぶやく。
(すごい感動的な感じだがパンツ履いただけ)


18時間、
24時間
裸で過ごすことは出来なかったけれど
貴重な時間を過ごした………



ような気がした。

病気でも全力で楽しめることをしたいし
悲しいも楽しいも自分の心次第。
まだまだ味わったことのない未知の世界があると思うとワクワクする。


小さなことでくよくよしていた
昨日の僕にサヨナラ              

KinKi Kidsフラワーより引用


そんな気持ちを手に入れた
夏の裸族18時間だった。




最後まで読んでいただき
ありがとうございました。

心から感謝の気持ちを込めて。




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