創作小説『鳥の骨格標本に左右される猫は、猫を超越しうるか?』⑧

翼と握手した猫

眩しさに目を開けて数秒後、鼓膜を連続ビンタされたような衝撃を受けた。しかしドラム音ではない。どうやら、そう遠くない距離で雷が落ちたようだ。転がっていたあるものを手に握りしめた。準備運動の後に深呼吸をして窓を開け、部屋の奥から思い切り走ってベランダから飛んだ。

ヒグマが下で待ち構えている。しかし僕が万有引力の法則に従うことはなかった。

人生一番の雄叫びを上げながらザビエルの脚につかまって上昇していった。ヒグマとパンダ夫人がこちらを見て口をあんぐり開けている。雷による停電でパンダの黒い箱が機能しなくなり、ザビエルとの絆が復活したのだ。僕は勝った。ざまあみろだ。

ザビエルの両脚に両腕を通し、空を翔けながら痩せた体は雨に打たれ、稲光に照らされていた。今初めて、この世に生まれたような気がした。

二、三分飛んで、僕とザビエルは窓ガラスを割って警察署の2階に突っ込んだ。ガラスの破片が腕に刺さる。警察署の手前で降りるつもりが、風が強いせいで失敗したのだ。囲まれて二、三発殴られたあとに捕縛されるが、気分は爽快だった。ヒグマが鳩失踪事件の犯人だ。ザビエルで撮影した映像と彼の糞を調べろ、と叫ぶように訴えたあと、檻に入れられて死んだように眠った。

冷たい床で目を覚ます。頭がスイカ割りされているように痛い。シャワーを浴びさせられた後で取調室に連れて行かれ、刑事である柴犬から説明があった。署に墜落してから丸2日間経っているらしい。その間警察はドローンの動画データで鳩の骨格標本を見て、アパートのヒグマの部屋に突入して証拠品として鳩の羽を発見し、ヒグマを逮捕したようだ。僕が言った通り糞から鳩の骨の成分も検出されるとヒグマはとうとう自白したようで、殺害容疑で立件準備中とのことだった。妻の雪豹は、夫の狂気を知っても彼に対する恐怖で止めることができなかったらしい。

粘着気質なヒグマの性格からして、すぐ自白するのはやや不自然に感じられたが、それだけ僕が揃えた証拠が完璧だったということだろう。

芝犬から、パンダ夫人のベランダで鳩の羽を撮影した動画が鳩殺害事件と関連があるかについても聞かれたが、たくさんの鳩の羽を発見してたまたま撮影したと、僕が意図的に羽を集めたことは伏せて伝えた。

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