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<読者の理解を助け、紙面を魅力的に彩る> 新聞社のデザイナーってどんな仕事? 同期に聞いてみた

われわれ校閲部が所属している中日新聞社編集局には、社会部や経済部、運動部などさまざまな部署があり、そのうちのひとつに「デザイン課」があります。紙面に載せるグラフィックス(中日新聞では“CG”と呼んでいます)を制作している部署です。

実は、校閲部は新聞製作の上でデザイン課と直接やりとりをすることは少なく、どんなふうにCGが作られているのか詳しく知りません。そこで今回は、そんなデザイン課の仕事について話を聞いてきました。

部署の垣根を越えた対談記事の第2弾です!

【第1弾はこちらから】「紙面の25%で勝負。大切なのはニュースの価値判断」 新聞製作の司令塔「整理記者」に話を聞いてみた

デザイン課の作るCGってどんなもの?

例のごとく、朝刊作業後の午前2時からスタート

稲垣:今日はよろしくお願いします。さっそくだけど、神場くんの仕事について簡単に教えてください!

神場:よろしくお願いします。デスクや記者から発注を受けたCGを作っています。CGの役割には、大きく分けて「読者の理解を助ける」ものと、「紙面を魅力的にする」ものの2種類があって、依頼に応じてどちらも作っています。

稲垣:その二つはどう違うの?

神場:まず「読者の理解を助ける」の方は、記事を視覚的に分かりやすく解説・補足するためのもので、記事を読むための導入にもなるんだ。具体的には、地図やグラフ、表とかがそれにあたるかな。

神場:「紙面を魅力的にする」ものは、連載のタイトルカットやイラスト、あとはコラージュなんかも。読者の目を引くデザインを添えることで、記事にイメージを持たせる役割があるんだ。こっちは、自分の表現や意見を出していけるところが魅力だと思う。

稲垣:なるほど。神場くんは、どんなCGが得意とかある?

神場:いままでイラストをほとんど描かずに生きてきたから、絵が多い仕事はちょっと苦しい…笑 だいぶ慣れてきたけどね。反対に、もともと地図とか路線図とかが好きだから、そういったものを作るのは苦ではないし、むしろ楽しい。

新聞に載ったCGはすべてスクラップされていました

制作時間は?

稲垣:CGをひとつ作るのに、時間はどれくらいかかるの?

神場:たとえば、このCGだとイラストを描くのも含めて2~3時間くらい。

2023年10月18日付朝刊 市民版

神場:イラストは、時間のあるときに素材を描きためておいて、必要なときに手を加えて使ってる。

稲垣:校閲するときイラストは何げなく見てたけど、たしかにイラストがあると、より中身がイメージしやすくなってるね!

神場:火事や事故が起きたときに発注される地図だと、だいたい20~30分。それぐらいを目安に作れるように、って新人の頃に言われたな…。

稲垣:すごい、細かい地図をそんな短時間で……!

神場:あと、特集面とかで1ページを使った大きなCGを作ることもあって、それは整理部の担当の人と打ち合わせを重ねながら作るよ。特集面の作業に取りかかると、同じCGに数日間かかりきりになることも。

2022年3月11日付朝刊 東日本大震災の特集紙面

神場:この特集紙面は、前回の対談記事に出演していた整理記者の岩田忠士さんと一緒に制作したんだ。下に敷かれている地図と枠組みをデザイン課が先に作って、それに整理部が記事を流す、といった感じ。

稲垣:できるまでにどれくらいの時間や工程がかかったか覚えてる?

神場:これは2週間くらい前に打ち合わせをして作り始めたような…。枠の大きさと記事の長さが良い感じになるように、2~3往復やりとりをして調整を重ねたよ。

デザインに携わった紙面を手に説明

やりがいは? 大変なことは?

稲垣:入社してそろそろ4年がたつけど、この仕事をしていて大変なことってある?

神場:やっぱり、新聞の締め切りまで時間がない中で事件や事故が発生すると大変……。

稲垣:それは校閲も同じだ。でも、校閲は時間内に調べ切れなかったことは締め切りが過ぎた後にも確認作業ができるけど、CGはそれまでに確実に完成させないと紙面が埋まらないもんね。

神場:ほかに新聞のCGならではのところでいえば、「段数」の制約が意外と大変なんだ。

稲垣:いま中日新聞のレイアウトは1行あたりが12字で、それが12段ある「12段組み」の作りだね。

神場:そうそう。1段はだいたい4.5cm弱なんだけど、これに収めるのが結構難しい。文字数が増えると視覚的に伝わりにくいし、かといって読みやすい文字の大きさだと情報量が少なくなる。2段に増やすという手もあるけど、余白が大きくなってしまうし、スペースも余分に使うことになっちゃうんだよね。

稲垣:そっか、校閲部はCGの校閲もしているけど、そういった大きさのことはあんまり気にしてなかったな…。当たり前に感じてしまっていたけれど、見やすくするための工夫が凝らされているんだね。

縦には制約があるけれど、横幅はわりと自由が利くらしい


稲垣:
じゃあ、この仕事をしていて、どんなときにやりがいを感じる?

神場:自分が作ったものが、早ければ数十分で世の中に出る。しかも、個人の制作物としてじゃなくて「中日新聞」のものとして。そこに一番、責任というか、やりがいを感じるかな~。

稲垣:自分で何かを作ってそれが世の中に出ていく、というのは校閲部ではなかなか経験できないことだから、少しうらやましいな…。

ウェブのこと、これからのこと

稲垣:最近は中日新聞全体がウェブ発信にも力を入れているけど、デザイン課にもウェブの仕事がきたりするの?

神場:そうだね。たとえば、小中学生向けのニュース配信サイトの「チュースク」(正式名称:中日新聞@School)のアイコン制作とかはデザイン課が担当したよ。

校閲部の連載「校閲記者のほぉ〜ワード」のアイコンも


神場:
あと最近は、デジタル編集部が運営しているYouTubeのサムネイルも作ったり…。

稲垣:そうだったの!? 全然知らなかった。それはどんなきっかけで?

神場:最初は、「こんなサムネどうですか?」って自分から売り込みにいったの。そうしたら段々と正式に依頼が来るようになって、担当することが増えてきた。

稲垣:同期がそうやって積極的に働いてる姿を見ると、自分も頑張らなきゃって思うなあ。

神場:ほかには、中日新聞Webにも自分が作ったものが載っていて、「語り続ける戦争遺跡」っていう特集のまとめなんだけど、中部地方の戦争遺跡をウェブ上でめぐることができる「デジタル地球儀」を作ったよ。地図を動かしたり拡大したりして各地の戦争遺跡の位置を確認できて、さらにクリックするとその遺跡の紹介が出るようにしたんだ。

/ こちらから、どなたでもご覧いただけます! \

稲垣:すごい!  こういうのは、中部地方のあらゆるところに取材拠点のある中日新聞にはぴったりな気がする!

神場:こうやって、ウェブ向けの仕事もだんだん増えてきてる。この「デジタル地球儀」は他の特集にも使えると思うし、紙面のCGだけにとどまらず、いろいろなことにチャレンジしていきたい。


編集局の同じフロアで働いているにもかかわらず、どんな働き方をしているのか未知の世界だったデザイン課の仕事。今回こうして話を聞いてみて思ったのは、読者にとって分かりやすい紙面を目指しているのは私たち校閲部と同じだということ。

誰が作ったCGか紙面に名前が載ることは少ないですが、「記事の理解を助けたい」「読者に楽しんでもらいたい」。それぞれのCGに、こうした思いが込められているのです。そう思って紙面を眺めてみると、また違った発見があるかもしれません。

そして、実は今回のこの記事。

サムネイルを含め、挿入している画像はすべて、神場くんが作ってくれました。ぜひ、その点にも注目してみてください!


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