飲み込めない
はたして、食事介助に1時間かけることがいいのか悪いのか。
丁寧にやることと要領がわるいことは、紙一重である。
麻痺があったり認知症があったりして、ご自身で食事ができない人のお手伝いをする。
飲み込みが弱い方は誤嚥性肺炎の危険があるため、一汁三菜を「ひと口大」や「刻み食」「軟飯(なんはん)」「ミキサー食」「かゆ」「トロミ」にして提供する。
綺麗に盛り付けられたおかずやご飯が、シザーハンズ(介護職員)によって切り刻まれていく光景は、申し訳ないが食欲を減退させてしまうが、これも命を守るためだと、少しでも美味しそうに魅せようと再構築されていく定食に、ぼくは愛情を入れているのだと言い聞かせる。
大きな施設やサービスの行き届いた施設であれば、どんな食事形態だろうと美味しそうに出来上がってくるのだろうが、ぼくの施設はそうではない。
「煮凝り」みたいに出せれば、もっと美味しくも見えるだろうに。
いや、もともとの提供スタイルはもちろん美味しそうだし美味しい。
その人その人によって、食べやすい形状の昼食。
ぼくはその人の横に座って、食事のお手伝いをする。
飲み込めない人、咀嚼ができない人、歯がない人、食事の認識ができない人、箸やスプーンが持てない人、寝ている人。
本当に色々だ。
間違ってティッシュを口に入れてしまう人もいる。「とりあえず口にいれとこか」ってことか。人間はすごい。神秘の生き物だよ。
そう、はたして、食事介助に1時間かけることがいいのか悪いのか。ってことだ。
食事介助は、職員によって本当に時間が違う。
1時間かかる人もいれば、20分で終わる人もいるし。同時に2人介助できる人もいる。
ここは一般的に考えてみよう。
焼き魚定食を食べるのに、1時間かかるだろうか。
冷めてしまう。箸が使えて自分で食べられる人は、30分あれば余裕だろう。
では、食事介助が必要な方は。
当然、介護職員が口に運ぶので、飲み込める利用者さんであれば同じくらいの時間で食べられそうなものだ。ちなみにぼくは30分くらいで終えている。
1時間以上かかっている職員がいる。
毎スプーン毎スプーン。「次は何を食べますか?」と聞きながら食事介助している。丁寧で素敵だと思う。しかし相手は、麻痺がありアルツハイマーで失語している方なのです。
どちらの介護職員をどう捉えるかは、それぞれの感性にまかせるとして。
ぼくはその人の語りかけながら食事介助をする考え方は「それはあなたが食べさせたい順番を聞かせているだけでは?」ということだ。
利用者さんはもしかすると「大きめのスプーンにご飯とおかずを乗っけて、かき込みたいぐらいやで〜!」と思っているかもしれない。
ぼくが30分で食事介助を終えられる要因は、ある程度この「ご飯おかず乗せ戦法」をとっているからだ。
「塩気のある焼き魚を口に入れたあとは、白飯くいたいやろ。申し訳ないけど、スプーンに一緒に乗せさせてもらうでぇ〜」
なのです。
おそらくこの論争は、介護職員によって意見が分かれるところだと思う。
そして、
ぼくは今、寝る前に何を書いているのだろうと。
自分の書いた文章を、飲み込めないでいる。
介護は大変。介護職はキツイ。そんなネガティブなイメージを覆したいと思っています。介護職は人間的成長ができるクリエイティブで素晴らしい仕事です。家族介護者の方も支援していけるように、この活動を応援してください!よろしくお願いいたします。