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「イチオシ!」をぶっ込んだものの…

俺が高校生(おそらく1年)の頃の話です。
夏に車で海の幸が美味い島に行くことになりました。メンバーは俺、妹、母親、母親の彼氏(内縁の夫)、親達の友達のおじさんです。
そのおじさんが車を長時間運転して俺ら一家をその島へ連れて行ってくれるとのことでした。親達の友達であるおじさんが「その島に漁師の友達がいるから海の幸を食べに行こう!」と俺ら一家を誘ってくれたわけです。
ま~家族で旅行なんてのは(親達の友達のおじさんがいるとはいえ)俺ら一家はほぼ初めてに等しいわけです。
俺は小学生くらいの時から、同級生なんかが「旅行で家族と○○に行った」なんて話すことを羨ましく聞いていたもんです。家族旅行なんてものに一種の憧れみたいなものがそりゃ~ありました。
湿っぽい話をするつもりはありません。それだけ島への旅行に期待があったということなんです。
いや~、当時の俺は思春期の難しい年頃とはいえ、旅行!お出かけ!なんてのはやはり嬉しかったわけです。
なにせ車で遠出する、ドライブするなんてのも当時の俺は経験したことがなかったわけです。初体験ですよ。
そりゃ~興奮しました。で、そのおじさんは優しいことに「琴花くん(←俺のこと)、妹ちゃん、好きなCD持っておいでよ。おじさんの車の中でかけよう!」なんて言ってくれるわけです。なので、お気に入りのCDを3枚くらい持って行きましたよ。ええ、厳選して。そりゃ~初めての家族旅行、初めてのドライブです。お気に入りのCDアルバムを厳選しました。当時、大好きだったアーティストのアルバムです。

で、いよいよお出かけ当日が来ました。ドライブスタートですよ。ワクワクする遠出ですよ。
いや~皆が皆楽しそうにしているわけです。母親、母親の彼氏、おじさん、俺、妹、皆が車内でワイワイしてました。
で、まずはおじさんのお気に入りのCDをかけるわけです。ビートルズですよ。おじさんは勿論、母親も母親の彼氏もノリノリです。俺も妹も知ってる曲ばかりでやはり楽しいわけです。大人3人がめちゃめちゃ楽しそうにしてるし、俺も妹も楽しんでました。
そりゃ~もう皆ご機嫌、ノリノリ、アゲアゲの気分上々でした。
で、ビートルズのアルバムが一周してからおじさんがこ~言うわけです。
「次は琴花くんのCDを聞こう!おじさん、最近の若い子がどんな音楽を聞いてるのか聞いてみたいよ!」
俺は興奮しました。ドライブでお気に入りのCDが聞けるなんて‼おじさんの言葉を聞いて俺は持ってきたCDの中で当時1番のお気に入り、オススメをかけてもらうようお願いしたわけです。
それがこちら↓(以下、音楽を再生しながら読んで頂けると当時の雰囲気がなんとなく伝わるかと思います)

エニグマですよ。ええ。サッドネスです。
いや、これかな~りの名曲なんですよ。このサッドネスが収録されたアルバム、サイコ~なんです。
たまらんのですよ。グレゴリアンチャントとダンスビートの融合ですよ。いやいや、めちゃめちゃカッコいいじゃないですか。
でもね、その時のドライブには適してなかったんです。
皆でノリノリだった時に流す音楽じゃなかったんです。
おじさんも母親も母親の彼氏もシーンってなってしまいました。明らかに気分が沈んでました。妹は少し苦笑してましたかね。
でも、分からないじゃないですか。当時の俺。なにせ人生で初めて経験するドライブです。こ~ゆ~時にはこ~ゆ~音楽をかけるべきってのがですよ、当時まだ分からなかったんです。
一応、ボン・ジョビとかも持ってきてたのでそっちにすれば良かったんです。でもイチオシ聞いてもらいたいじゃないですか。
ところがですよ、もうね、おじさんとかちょっと前までノリノリだったのに気分ダダ下がりなわけです。なんかミラー越しに見えるその表情がつらそうなんです。目とか沢山パチパチしてるわけです。
それでもしばらくは車内でこのアルバムが流れ続けてました。誰も会話せずに。
そのうちに母親が「あんたこれ暗いわ」と言うわけです。で、おじさんがそれにすかさず呼応するように「琴花くん、おじさんなんだか眠くたくなってきちゃったよ」と何かを懇願するように言ってきたわけです。
さすがに俺も察しました。あ、これは違うんだと。
で、妹が持ってきたなんかのヒップホップのアルバムの曲に車内のミュージックが変わりました。それから少しずつ皆が明るさを取り戻してきました。
いや~俺もこ~して色々と学んできたわけです。
そんなお話でした。

因みに、このアルバムの「ミア・カルパ」もゾクゾクしますよ。非常~にたまらんです。

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