文化欄#35 スポーツと政治

スポーツ庁が、5月4日付で「ロシアのウクライナに対する戦争と国際スポーツに関する共同声明」の第4回が発表されたことを報告している。

これは、ロシア及び同盟国であるベラルーシのスポーツ選手・団体等が国を代表して国際大会などに出場することや、同国が国際大会を実施することに対しての反対を表明しているもので、イギリスのデジタル文化・メディア・スポーツ省が呼びかけている。

なお、第1回声明はウクライナ侵攻開始後間もない2022年3月8日に発出されており、日本は第1回の声明より署名国に名を連ねている。

以下にこれまでの声明をスポーツ庁が和訳した資料へのリンクを掲載しておく。

ロシアのウクライナに対する戦争と国際スポーツに関する声明

ロシアのウクライナに対する戦争と国際スポーツに関する声明(第2回)

ロシアのウクライナに対する戦争と国際スポーツに関する声明(第3回)

ロシアのウクライナに対する戦争と国際スポーツに関する声明(第4回)

なお、第1回と第2回は主にスポーツ競技回答全般に関する声明で、第3回と第4回はIOC(国際オリンピック委員会)による声明に対する声明が中心となっている。

IOCの声明は以下を参照のこと。

Statement on solidarity with Ukraine, sanctions against Russia and Belarus, and the status of athletes from these countries (olympics.com)

Following a request by the 11th Olympic Summit, IOC issues recommendations for International Federations and international sports event organisers on the participation of athletes with a Russian or Belarusian passport in international competitions

興味深いのは、ロシアやベラルーシの選手が「中立的なアスリート」として国際大会等に出場する可能性についてIOCが声明で言及したことについて、上記の各国の共同声明で以下のような声明が発表されている点かと思う。

(前略)しかしながら、ロシアとベラルーシにおいては、スポーツと政治は密接に絡み合っている。我々は、ロシアとベラルーシのオリンピック選手が、国から直接資金提供と支援を受けている場合に、IOC が自国との同一性を示さないとする条件の下で「中立」として競技することがどれほど実現可能であるかについて強い懸念を持っている(この場合テニス選手のようなプロ選手は除く。)。ロシアの選手とロシア軍との間の強い繋がりと提携も、明らかに懸念事項である。したがって、我々のこれまでの全体的なアプローチは、単に国籍に基づく差別の一種ではなく、これらの強い懸念はIOCによって対処される必要がある。

出所:ロシアのウクライナに対する戦争と国際スポーツに関する声明(第 3 回)
https://www.mext.go.jp/sports/content/20230222_spt_skokusai_20230220104858_1.pdf

この声明を受けてか、IOCは3月の声明において”Political interference in sport”という項を設け、スポーツに対する政治的干渉に断固拒否するという声明を発表している。

これは、各国の政策を担う省庁による声明と、世界のアスリートやスポーツ組織を代表する(組織として認識される)IOC、それぞれの立場を端的に表しているものだろう。

ちなみに、3月のIOCの声明では、

”It was also emphasised that the Olympic Games cannot prevent wars and conflicts. Nor can they address all the political and social challenges in our world. This is the realm of politics.”
とも記されており、政治とスポーツを切り離して考えるという立場を強調している。

※翻訳ソフトを用いて訳すと「また、オリンピックが戦争や紛争を防ぐことはできないことも強調されました。また、この世界における政治的、社会的な課題のすべてに対処することもできません。これは政治の領域である。」となった。

個人的には国際大会などを実施・出場・競技するという場合に、基本的にスポーツと政治が無関係ということはないものだと思うが、各国の省庁・IOCどちらともが相互の立場・意見を表明しながら、最終的には「中立的なアスリート」として参加していく、というのが落としどころなのではないかと思われる。


Department for Culture, Media & Sport of the UK and the 35 countries' departments concerned sport (including the Japanese department MEXT) announced the "4th Statement on Russia's war on Ukraine and international sport". This statement released four times till now.

It discussed dealing with athletes and sports organizations in Russia and Belarus. Russia and Belarus, the statement claims, have a deep relationship between politics and sports and must need sanctions on athletes of those countries (like suspension from international games of representation country).

On the other hand, IOC(International Olympic Committee) insists that haven't a relationship between politics and sports. And IOC also argues must be protected the cultural rights of athletes of all countries(including Russia and Belarus).

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