天使たちとの共同戦線(十六章、間諜天使の催眠解術法)
イプノ「やあ、みんな戻ったよ。」
オッソ「お帰りなさい。」
ディオ「戻ったんだー‼お帰り!」
オンブ「今、セイは出ています。」
イプノ「オンブ。報告ありがとう。ついでなんだけど、ミィディアのところに行ってくれるかな?」
オンブ「・・・行ってどうしましょう?」
イプノ「催眠の解き方を教えてきてくれ。」
オンブ「分かりました。」
〜〜〜〜〜
ビランチ「今、潜入している天使達は上手くやっていますかね。」
フォルテ「オッソから時々意識が飛んでくるけど、退屈すぎてつまらないって言ってるから、上手く馴染んでるんだろう。」
ビランチ「それは良かった。作戦は上手くいってるようで。」
フォルテ「戦いを利用して、天使達を潜入させるのは良い策だったみたいだね。」
ビランチ「セイとイプノとの戦いで天使が堕天使に堕ちた体を装う・・・自然な流れを作れたようで何よりです。」
〜〜〜〜〜
最近、あることに気づいた。
天使から色々と教わっているうちに、天使の技術が身についてきていた。
それなりに、楽しく生きていけるようになり、天使たちを意識することも少なくなった。
そんなことを考えていると、堕天使が・・・いや、天使が俺の前に姿を現した。
オンブ「ミィディア。初めましてだな。俺はオンブと言う。よろしくな。」
ミィディア「オンブ?よろしく。っていうか、オンブって悪魔の名前で聞いたことがあるんだけど・・・そのオンブじゃないよね?」
オンブ「そのオンブだ。」
ミィディア「俺、堕天使とは適度な距離を取らないといけないのは・・・知ってる?」
オンブ「心配するな。〝史実上では〟悪魔だが実際は天使だ。」
ミィディア「‼・・・そうなのか?」
オンブ「ああ。だがこのことは誰にも話さないで欲しい。俺は堕天使と偽り、潜入しているんだ。」
ミィディア「・・・分かった。それでオンブは俺に何の用があってきたの?」
オンブ「・・・イプノに、催眠の解き方を教えてくるように言われてきたんだ。」
ミィディア「・・・はい?ちょっと意味わからないんだけど?」
オンブ「・・・言いたい気持ちは分かる。何を考えてるんだとな。」
ミィディア「その通りだよ。自分の催眠を解く方法を教えてこいなんて、何考えてるんだ?」
オンブ「・・・イプノは遊び相手が欲しいのかもな。」
ミィディア「・・・つまり、催眠の解き方を教えて、遊び相手になってもらうために?」
オンブ「・・・だろうな。だが、これは俺たち天使にとってもメリットだ。お前が催眠の解き方を覚えてくれれば、また一つ自衛の術を手に入れることができる。」
ミィディア「そういえば、幻と催眠って、どこが違うの?」
オンブ「幻は外部の環境を変えるのに対し、催眠は本人の見え方・・・つまり内部を変える。働きかける対象が外界か内面かが大きな違いだ。」
ミィディア「なるほどな。」
オンブ「従って、解き方も違う。これから催眠の解き方を教える。いいな?」
ミィディア「おう。」
オンブ「催眠の解き方。五感を可能な限り遮断しろ。」
ミィディア「五感を?」
オンブ「そうだ。催眠は五感に訴えかける。だから、五感を遮断するのは、単純だが有効なんだ。」
ミィディア「・・・つまり、催眠を感じたらなるべく体に入れるな・・・と?」
オンブ「その通りだ。相手の瞳に違和感を感じたら相手の目を見るな。鳥肌が立つならその空間からは離れろ。妙な音が聞こえたなら耳を塞げ。そういうことだ。」
ミィディア「・・・なるほどな。でも催眠にかかったらどうやって気づけばいいんだ?」
オンブ「・・・はっきりいってそれは無理だ。自分だけで解くのは。」
ミィディア「自分で解くのは・・・?」
オンブ「近くに仲間がいれば、仲間に解いてもらうことができる。ミィディアの場合はラーナや俺が解くことになるだろう。」
ミィディア「・・・そっか。」
オンブ「俺のように催眠が使えるなら、他の手もあるんだがな。」
ミィディア「他の手?」
オンブ「ああ。催眠を自分自身にかけるんだ。」
ミィディア「どういうこと?」
オンブ「催眠をかけられているということは、言わば主導権を握られている状況なわけだ。」
ミィディア「うん。」
オンブ「その状況を打開するには、自分にかけられた催眠を上回る催眠を自分自身にかけ、催眠を上塗りし、主導権を自分自身に戻すしかない。」
ミィディア「・・・なんか、ちょー高度なこといってない?」
オンブ「・・・まあ、分かるが・・・これしか無いんだよなー・・・。」
ミィディア「・・・分かった。考えてみるよ。」
オンブ「とりあえず、俺が教えられるのはこれだけだ。」
ミィディア「え?これだけ⁉」
オンブ「そうだ。だが、人間界では、未だに催眠や幻の類いは解くことができるとすら考えられていないし、有効な解き方なんて見つかってもいない。これでも天使の技術だ。」
ミィディア「まあそういうなら・・・。」
オンブ「なら、俺は帰る。そろそろ帰らないと色々と怪しまれるからな。」
そういうとオンブは姿を消した。
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