主君を裏切った家臣の最期 履中天皇九 神話は今も生きている ことの葉綴り七二二
信義と信
おはようございます。雨水の暦通りの雨となった週末。
皆さん、お元気ですか? いつも「ことの葉綴り」に“お越し”いただき、本当にありがとうございます。
もう二月の二十日(日)ですね。暦では、六曜は「友引」で朝と夕が吉で、何事も勝ち負けがないとされる日。
十二直は、「満」は、すべてが満たされる日。でも、控えめにしてよし。祭祀、ご神事、婚礼、お祝い事、種まき、移転、旅行も吉。そして二十八宿は「虚」で、学問、勉強のスタート、衣類を新調するのにいい日。春物のお洋服選びとかいいですね。
昨夜、私は三回目の接種だったので、今日は一日ゆっくり過ごします。もしかすると、状況により明日は、無理をせずにお休みするかもです。どうぞ宜しくお願いします。さっそく神話の物語に入ります。
<神話の物語マガジン>
最新マガジン追加した「仁徳天皇さまの物語」です。宜しくお願いします。
第十七代、履中天皇さまの御代の物語。
履中天皇さまには、三柱の弟の御子がいました。
次男は、墨江の中津王。
三男は、水齒別命。
四男は、男淺津間若子宿禰命です。
即位後、まもなくすぐ下の弟墨江の中津王が謀叛を起こし、難波の宮が焼かれ、天皇は命からがら宮殿を逃げ出し、大和の石上神宮に身を寄せました。
そこへ、三男の水齒別命が、会いにきますが、「信じることができない。邪な心がないならば、謀叛を起こした次兄を殺してこい。さすれば、ゆっくりと語りあおう」と、命じます。
三男の水齒別命は、次兄に仕える曾婆加里を、「墨江の中津王の命を奪えば、やがて私が天皇になったとき、大臣に取り立てよう」と、言葉巧みに説得をして、自分の手は使わずに、長兄の履中天皇に命じられた通りに、次兄の命を奪ったです。
大和まで報告に向かう、水齒別命と、手柄を立てた曾婆加里。
けれど、水齒別命の心の中は、もやもやとしていました。
私が命じたとはいえ、出世のために、主君の命を奪い殺した男に信義の心はない。
そういう私も、曾婆加里を大臣にする約束を反故にしても誠の心がない。
もし、私は約束通り、信を持ち、奴を大臣に取り立てたとしよう。
今後は、私が、奴に裏切られ命を奪われるのではないか。その心が恐ろしくもある。
すでに、これまで仕えてきた主君の次兄を殺したのだから……。
大臣就任の祝宴
そして、難波と大和の境の二上山の入り口で、馬の歩みをとめて、曾婆加里にこう語りかけます。
「今日はここに泊まって、まず、手柄を立てたそなたに大臣の位を授けよう。大臣に就任したその上で、明日、大君のおはします大和へと向かおうではないか」
曾婆加里が、突然の申し出に驚いている中、水齒別命は、家臣たちに、すぐに簡易式の仮の宮をつくることを命じました。
「まず、儀礼をおこない、今夜は祝宴だ!」
家臣たちは、陣屋のような仮宮をつくり、にわかに祝いの宴の酒やご馳走を準備します。
その様子を見ながら、曾婆加里も、こんなにもすぐに出世ができることとなり、喜んでいました。
やがて、祝宴が始まり、水齒別命は、家臣たちの前で、
「曾婆加里は、謀叛を起こし、兄の大君の命を狙った墨江の中津王を討ち取る手柄を立てた。そこで、今、ここで、大臣の位を与える」
と、家臣の役人たちの前で、大臣就任の儀礼と宣言をおこないました。
そして家臣の一人一人に、新たな大臣となった曾婆加里を拝ませていきます。
曾婆加里は、「長年の志が遂げられる。私が大臣になれたのだ!!!」と、多いに歓喜しています。
大盃の向こう側 裏切り者の最期
「さあ、曾婆加里、今より、大臣である。これは祝いである。大臣と同じ盃の酒を飲もうではないか。盃を持て! これは大いに目出度い祝いである、大盃を持て!」
水齒別命は、家臣に顔の大きさほどもある大盃を持ってこさせると、なみなみとお酒をつがせます。
「では、私から頂こう」
水齒別命は、大盃のお酒を、飲んでいきます。
「祝いの酒は、うまいものよ。さあ、次は、大臣、曾婆加里に」
次に、曾婆加里のために、祝い酒が、大盃になみなみとつがれていきました。
曾婆加里は、嬉しそうに両手で大きな盃を手にとり、祝い酒を飲み始めます。
大きく丸い盃で、彼の顔は隠されていて見えません。
そのときです。
水齒別命は、むしろの下に隠し置いていた剣をすばやく取り出すと、鞘を抜き、酒を飲んでいる曾婆加里の首を、一気に斬り落としたのですー。
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