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数珠と高級時計

本棚にある『プチ哲学』という本を何となく手に取り、ぱらぱら読み返してみました。

1㎏の金塊は、お金に換えると莫大な数字になりますが、つけもの石として使うとしたら、1㎏の価値しかありません。

「だよねぇ……」と妙に納得。
似たような話を中3の冬に聞いたことを思い出しました。

北陸は「真宗王国」と呼ばれるぐらい浄土真宗の信仰があつく、「毎月一回お坊さんがお経をあげに家にやって来る」という家もめずらしくない(と思う)ので、その日も、わが家にお坊さんがやって来ました。
お経をあげてもらって、母と私で仏壇の前でお参り。
終わると、「試験どうだった?」という話に。ちょうど高校入試が終わって、結果を待っている時期だったのです。
私がお坊さんにどう返事をしたかは覚えていないんですが、
「ここに、お数珠と腕時計があるでしょう?」
という話が始まった。
「これが、大変な高級時計だとする。値段を比べたら、お数珠の何百倍もするとしよう。それでも『数珠より時計の方が大事なもの』ということにはならないんだよ。時計でお参りはできないし、数珠で時間は調べられないんだから」

試験に受かれば立派な人で、受からなかったらダメな人、だなんてことはないんだよ。
……とまでは言われなかったけど、多分そういうことを私に伝えたかったんだと思う。

大人になり、物書きになった今の私は、仕事のことで悩み過ぎると、つい視野が狭くなり「面白いものが書ける人間こそが正義」という思い込みにとらわれてしまう。
「面白さは正義」というのは、確かに私にとっては大切なことだけれど、実はそれは、すごく狭い世界の価値観に過ぎないということも忘れずにいたい。
これを忘れそうになったとき、いつも目を覚まさせてくれるのは、仕事繋がりじゃない、長年の友人たち。
「自分の大好きな人たちが、自分とはまったく違うものさしで世の中を見ている」ということが、ハッと我に返るきっかけを私に与え続けてくれています。

#日記 #エッセイ #コラム #価値観
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