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菜根譚

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『菜根譚』に関する記事をまとめています。
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記事一覧

衝動買いする前の一呼吸が、無駄な買い物を減らしてくれる(『菜根譚』前集二十五)

今回取り上げるのは『菜根譚』前集二十五からの言葉。 好き嫌いを引き起こす欲望と、それによって生じる執着というものは、すべて心が真実に迷っているときに起こるものである、という意味。 つまり、物事への欲望や執着は、自分の心が迷っているときに生じるものなのだから、何かを欲しくなったときには一旦冷静になって考えなさい、ということですね。 情欲意識とは仏教用語の一つで、以下の2つから成り立っています。 物事の好き嫌いを判断することで生じる情愛の欲望 人が思考することで生じる執

自分や家族の笑顔のためにも、働きすぎはほどほどに(『菜根譚』前集二十九)

今回取り上げるのは『菜根譚』前集二十九からの言葉。 あれこれと検討して熱心に仕事に励むのは良いことであるが、自身の限度を超えて苦労しすぎると、本心から楽しんで喜ぶことができなくなる、という意味。 働くことは大事なことですが、何事にも限度があり、働き過ぎは良くない、ということですね。 働くこと自体はとても良いことです。 生きるためのお金を稼ぐことができますし、同僚や仕事先の人々と交流して知見を深めることもできます。 その仕事でしか経験できないことも数多くあることでしょ

苦しい時に簡単に諦めず、前に進み続けるということ(『菜根譚』前集十)

今回取り上げるのは『菜根譚』前集十からの言葉。 物事に失敗した後には、逆にうまくいくものである。だから自分の思い通りにならないときでも、簡単に放り出して諦めてはいけない、という意味。 つまり、何事も最後まで諦めずに継続しなさい、ということですね。 皆様はアメリカの炭鉱家のお話はご存知でしょうか? ゴールドラッシュの時代、とある金山を持つダービーという炭鉱家がいました。 しかし、やがて彼の金山からは金が掘れなくなってしまいます。 ダービーは金を探すために一生懸命に穴

目の前の利益に固執せず、自然と譲ることができる大人になりたい(『菜根譚』前集十六)

今回取り上げるのは『菜根譚』前集十六からの言葉。 人から寵愛や利益を受ける場合は、他人を押し除けてまで取ろうとしてはいけない。 人のためになる道徳的な行為をする場合は、誰よりも率先して行い、他人に遅れを取ってはいけない、という意味。 余計な争いを避けて生きていくためのポイントについて語っています。 つまり、一歩下がって自分の分を弁えつつも、良い行いについては積極的に行動していきなさい、ということですね。 『菜根譚』は儒教・道教・仏教の3つのエッセンスがつまった書物です

相手に期待するのはもうやめにしよう(『菜根譚』前集二十八)

今回取り上げるのは『菜根譚』前集二十八からの言葉。 他人に恩恵を施す際には、その恩恵に対して感謝されることを期待してはいけない。相手に恨まれなかったのであれば、すなわちそれこそが恩恵である、という意味。 老荘思想的な考え方が垣間見える言葉です。 つまり、相手に何かをしてあげた際にお礼を期待してはいけない。 相手から恨まれなかったのだから、それで満足しよう、ということですね。 誰かのために行動できる人って格好いいですよね。 自分のことだけでも大変なのに、時間を見つけて

古典的名著によるマインドフルネス瞑想のすすめ(『菜根譚』前集九)

今回取り上げるのは『菜根譚』前集九からの言葉。 夜が更けて人々が寝静まったころ、一人で座って心を観察してみると、はじめて煩悩が収まり、本来の清らかな心だけが現れることに気づくのだ、という意味。 いわゆる、瞑想やマインドフルネスのお話ですね。 定期的に自身の本心と向き合うことの大切さを語っています。 『菜根譚』は明の洪自誠による書物であり、その言葉の中には儒教・仏教・道教のエッセンスが含まれています。 今回の言葉にある「独り坐して」というのも、おそらく座禅のことです。

暇なときには緊張感を、忙しいときには余裕を持つべし(『菜根譚』前集八)

今回取り上げるのは『菜根譚』前集八からの言葉。 暇なときには緊急時への心構えが必要であり、忙しいときにはゆったりと趣味を楽しむような心のゆとりが必要である、という意味。 君子の心のあり方についての言葉です。 つまり、暇だからといって油断してはいけないし、忙しいからといって余裕を無くしてはいけない、ということですね。 『菜根譚』ではこのようなあり方の例を2つ挙げています。 天と地、そして太陽と月です。 天地は広大かつ雄大なので、私たち人間からするといつも同じように見

当たり前という宝物(『菜根譚』前集四十九)

今回取り上げるのは『菜根譚』前集四十九からの言葉。 幸せとは、何事もないのが一番の幸せであり、災いとは、何よりも心配事が多いことが一番の災いなのである、という意味。 人生の幸福について語った言葉です。 当たり前の平穏な日常が何よりも幸せなことであり、心配ばかりで心を病んでしまうことが一番の不幸なのである、ということですね。 何もない日常が続くと、どこかつまらなさを感じることがあります。 「何か面白いことが起きないかな?」 「暇を持て余しちゃうから、もっと忙しくてもい

未完成だからこその良さを楽しめる、そんな大人になりたい(『菜根譚』後集百二十三)

今回取り上げるのは『菜根譚』後集百二十三からの言葉。 花は五分咲きを見るのが良く、酒はほろ酔い程度に飲むのが良い、という意味。 つまり、何事もほどほどが良く、むしろ完全ではないところに趣を感じるのだ、ということですね。 膨らみかけの花の蕾を見て春の訪れを感じたり、色づき始めた木々の葉を見て秋が来たんだなと感じたり。 そういった移りゆく姿に風情を感じるのも良いですよね。 こちらでご紹介した『老子』の話にもありましたが、完成していないからこそ、物事はさまざまな可能性に満

競争から離れることで得られる心の豊かさ(『菜根譚』前集十三)

今回取り上げるのは『菜根譚』前集十三からの言葉。 小道の狭いところでは、少し立ち止まって相手に道を譲りなさい、という意味。 人生の生き方についてのお話です。 つまり、ちょっとした心がけが争いを遠ざけ、人生を楽しく安らかなものにするのだ、ということですね。 私たちの社会は競争社会です。 職場の同僚や友達、学校の同級生にご近所さんなど、私たちは常に誰かと比較される毎日を生きています。 周囲の人から認められたい、相手に負けたくない、という気持ちで一生懸命に頑張るのですが

忙しい時こそ、まったり穏やかに過ごす日が必要だよ(『菜根譚』前集六)

今回取り上げるのは『菜根譚』前集六からの言葉。 天地の間には、例え一日でものどかな天候の日がなければならない、という意味。 ギラギラと太陽が照りつける日が続くと植物は枯れてしまいますし、強い風の日が続くと木々は倒れてしまいます。 雨の場合は恵みの雨とも言いますが、これも毎日続くと地盤が弱くなり、土砂崩れや河川の氾濫につながってしまいます。 太陽も風も雨もどれも大事なものですが、それでも週に一日くらいは穏やかな天気の日が必要だと思います。 そしてこれは人の心も同じです