見出し画像

古典的名著によるマインドフルネス瞑想のすすめ(『菜根譚』前集九)

今回取り上げるのは『菜根譚』前集九からの言葉。

夜深く人静かなるとき、独り坐して心を観ぜば、始めて妄窮まりて、真独り露なるを覚る
(読み:ヨルフカくヒトシズかなるとき、ヒトりザしてココロをカンぜば、ハジめてモウキワまりて、シンヒトりアラワなるをサトる)

『菜根譚』前集九

夜が更けて人々が寝静まったころ、一人で座って心を観察してみると、はじめて煩悩が収まり、本来の清らかな心だけが現れることに気づくのだ、という意味。

いわゆる、瞑想やマインドフルネスのお話ですね。

定期的に自身の本心と向き合うことの大切さを語っています。


『菜根譚』は明の洪自誠による書物であり、その言葉の中には儒教・仏教・道教のエッセンスが含まれています。

今回の言葉にある「独り坐して」というのも、おそらく座禅のことです。

洪自誠は、皆が寝静まって静かになったころに座禅を行い、自身の内なる心を観察していたのでしょう。

マインドフルネスの効果については、色々なところで言及されています。

マインドフルネスめい想は、脳を活性化させ、ストレスをたまりにくくしたり、仕事のパフォーマンスを上げる効果があり、医学やビジネスの世界で大きな注目を集めています。

「マインドフルネス」とは?めい想の方法・効果と「呼吸のめい想」のやり方

私自身も毎朝5分間、椅子に座ってマインドフルネス瞑想を行っています。

最初の1~2週間は効果がイマイチよく分からなかったのですが、慣れてくると頭の中が静かになり、ちょっとリフレッシュできるようになりました。

慣れてくるとどこでもできるのが良いところですね。

今では、仕事で焦っているときや混乱しているときにもマインドフルネス瞑想を取り入れ、一旦立ち止まって落ち着くためのきっかけにしています。

マインドフルネス用の音声や動画はYouTubeにもたくさんありますし、Fitbitなどの健康用アプリでも利用が可能です。

私も実施している「椅子に座って行う瞑想」については、以下の書籍の巻末付録にイラスト付きで解説されています。

本自体の内容もなかなか分かりやすいので、禅思想について興味がある方の1冊目の書籍としてもおすすめです。


さて、そのマインドフルネス瞑想ですが、やってみると意外と難しく感じます。

頭の中を空っぽにしようとしても、自分の意思とは関係なく、次から次へと雑多な思考が浮かんでくるからです。

洪自誠も以下のように述べています。

毎に此の中に於て、大機趣を得
(読み:ツネにコのナカにオイて、ダイキシュをウ)

『菜根譚』前集九

(本来の清らかな心が現れるようになると)いつもこの中で、心が自由自在に動き回ってしまう、という意味。

煩悩を避けて、ようやく本来の心が見えるようになったのに、そうすると今度は余計な雑念が生まれてしまうのです。

しかし、これも当然のこと。

アメリカ国立科学財団の研究によって、人間の脳は一日の間に約1~6万回もの思考を行っていることが明らかとなっています。

しかも、その思考の8割はネガティブなものだそうです。

一日の思考回数を6万回とすると、その8割なので4~5万回ですね。

これほど思考をしているのですから、瞑想で頭を空っぽにしようとしてもなかなか難しいと思います。

実際、私も頭を空っぽにしようとしたのですが無理でした……。

そこで試してみたのが、思考を為すがままにして、そっと手放すためのイメージトレーニングです。

精神科医のラス・ハリスさんの本で紹介されていた方法で、具体的には以下のようなものになります。

  1. 瞑想する

  2. 思考が浮かんできたら、大きな葉っぱに乗せるイメージをする

  3. 葉っぱに載せた思考を、そっと川に流す

  4. 思考が浮かんでくるたびに2と3を繰り返す

ラス・ハリスさんのイメージトレーニングは、とある身近な現象を利用したものです。

私たちの日常には、街頭広告や電車の吊り広告、カフェや街中の喧騒など、視覚的・聴覚的にいろいろな刺激があります。

本来であればどれも気になってしまうものだと思いますが、みなさんは日頃からどのくらい意識しているでしょう。

通勤の際に街頭広告や吊り広告が目に入ったとしても、いっさい気にしないのではないでしょうか?

カフェや街中の喧騒も同じだと思います。

始めは多少気になったとしても、いつのまにか気にせずにおしゃべりしたり、仕事をしたりした経験はありませんか?

ラス・ハリスさんが利用しているのが、この現象です。

無意識に浮かんでくる思考を止めることはできないのですが、その思考に絡め取られることを防ぐことはできます。

つまり、自分の心を乱す要因と距離を取り、気にしないようにするということです。

私にはこの方法が合っていたみたいでして、浮かんでくる思考をそっと川に流すようにしてから、瞑想がグッとやりやすくなりました。

他にもマインドフルネスに役立つテクニックや情報が詳しく書かれていておすすめの本です。

夜深く人静かなるとき、独り坐して心を観ぜば、始めて妄窮まりて、真独り露なるを覚る
(読み:ヨルフカくヒトシズかなるとき、ヒトりザしてココロをカンぜば、ハジめてモウキワまりて、シンヒトりアラワなるをサトる)

『菜根譚』前集九

夜が更けて人々が寝静まったころ、一人で座って心を観察してみると、はじめて煩悩が収まり、本来の清らかな心だけが現れることに気づくのだ、という言葉をご紹介しました。

マインドフルネス瞑想は手軽にできてメンタルにも良いですが、ちょっとコツがいります。

もしも葉っぱを流すイメージが上手くいかないときは、別のイメージに置き換えてみるのもおすすめです。

ダンボールに入れても良いですし、川ではなくてベルトコンベアーに流すイメージをしても面白いかもしれません。

一人一人に合った方法があると思いますので、自分がやりやすい方法で瞑想を取り入れてみていただけたら幸いです。


この記事が参加している募集

古典がすき

サポートをいただけますと励みになります!いただいたサポートは資料の購入や執筆環境の整備などに使わせていただきます!より良い記事をお届けできるように頑張ります!