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教養を深める中国古典のお便り【5通目】

皆様、こんにちは!

メンバーシップ向け特典記事の「古典のお便り」5通目になります。

こちらのシリーズでは、普段の記事では取り扱っていない古典・史書から、さまざまな名言をお届けします。

5回目となる今回取り上げる古典は、『文選(もんぜん)』に収録されている名文、「座右銘(ざゆうのめい)」です。

『文選』は530年ごろに成立した中国の詩文集であり、全部で60巻に及びます。

周から南北朝にいたる約1000年間の優れた詩や文章を集めたもので、文体や時代順に整理して収録されており、後の中国の文章美のあり方に大きな影響を与えました。

そんな『文選』に収録されているのが「座右銘」という文章です。

作者は後漢の名文家として知られた崔瑗(さいえん)。

「座右銘」という名前からも分かるように、我々がよく使う「座右の銘」の元ネタになった人です。

というわけで、今回は『文選』の「座右銘」から名言をご紹介します。

記事の最後には、漢文に関する学びも記載していますので、最後まで読んでいただけますと嬉しいです。


「座右銘」に学ぶ

今回取り上げるのは「座右銘」からの言葉。

人の短を道うこと無かれ、己の長を説くこと無かれ
(ヒトのタンをイうことナかれ、オノレのチョウをトくことナかれ)

崔瑗、「座右銘」

他人の短所をあれこれ指摘してはいけないし、自分の長所を誇らしげに語ってはいけない、という意味。

人としてのあり方についての言葉です。

つまり、人の短所をとやかく言ったり、自分の長所を自慢するような人になってはいけない、ということですね。

ちなみに、ここでは「道」を「いう」と読み下していますが、もともと「道」には「言う・唱える」という意味があります。

私たちの身近な言葉では、「報道」や「言語道断」などがそうです。

どちらも「道のり」という意味ではなく、「言う」「唱える」という意味を前提として用いられています。

漢字が輸入されたときに、中国語の意味に応じて「やまとことば」を複数当てはめた結果だと思うのですが、初見ではなかなか読めないですよね。

古典を知ることは現代の言葉を知ることでもあるという、良い例だと思います。

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