衝動買いする前の一呼吸が、無駄な買い物を減らしてくれる(『菜根譚』前集二十五)
今回取り上げるのは『菜根譚』前集二十五からの言葉。
好き嫌いを引き起こす欲望と、それによって生じる執着というものは、すべて心が真実に迷っているときに起こるものである、という意味。
つまり、物事への欲望や執着は、自分の心が迷っているときに生じるものなのだから、何かを欲しくなったときには一旦冷静になって考えなさい、ということですね。
情欲意識とは仏教用語の一つで、以下の2つから成り立っています。
物事の好き嫌いを判断することで生じる情愛の欲望
人が思考することで生じる執着
要するに、欲望や煩悩、執着心などのことですね。
これらは人の目を曇らせるものです。
恋は盲目とも言いますが、普通の物や商品などにも当てはまると思います。
例えば、皆様はこれまでに衝動買いをして失敗したことはありますでしょうか?
私は何度かあります。
帯の謳い文句に惹かれて買ったものの、結局いまだに読んでいないミステリー本とか、見た目の良さに惹かれて買ったのに、ほとんど使わずに仕舞ってある文房具とか……。
覚えていないだけで、他にも色々あるような気がします。
本や文房具くらいならまだ諦めもつくのですが、これが服や家具・家電などになると大変ですよね。
お金はかかりますし、意外と場所もとってしまいます。
買う前はあんなに欲しくて堪らなかったのに、いざ手元に来てみると所有欲が満たされたのか、何となく「もういいかな?」という気持ちになってしまうのです。
いわゆる衝動買いですね。
これも情欲意識に惑わされてしまった結果の一つでしょう。
そんな厄介な情欲意識が生じるのは、自身の心が迷っているからです。
衝動買いをしたとき、直近で何かストレスが溜まるようなことはありませんでしたか?
例えば、仕事でうまくいかなかったり、他人から嫌なことを言われたり。
もしくは、将来のことや身近なことで、何か悩んでいたりしたのかもしれません。
こういったストレスが溜まると、人の心は少しずつ疲弊していってしまいます。
心が疲弊すると理性よりも本能の方が強くなり、思わず衝動的な行動を取りやすくなるのです。
先ほどは衝動買いの例を出しましたが、人によっては別の現象として表面化することもあるでしょう。
衝動的な発言をして失敗したり、衝動的な判断をして後悔したり。
どれも悲しい結果になるのは目に見えています。
こういった事態を避けるためには、一旦落ち着いて、今感じている気持ちが本心なのかどうかを確かめることが重要です。
『菜根譚』は以下のように説きます。
この迷っている心を消し去ることで、そこではじめて本当の心が現れてくるのである、という意味です。
心が迷っていると冷静な判断ができなくなります。
「〇〇が欲しい!」と強く思ったときには、その気持ちが衝動的なものではなく、本心から現れたものかどうか確認したほうが良いでしょう。
そうすれば、衝動買いして後悔するような事態は避けられるはずです。
心の迷いを解消する方法は人それぞれだと思いますが、『菜根譚』では瞑想をお勧めしています。
私も一日の初めに5分間の瞑想を組み込んでいるのですが、慣れてきてからは感情のリセットがしやすくなりました。
また、迷いというよりも衝動的な怒りに苦しんでいる方の場合は、6秒程度ゆっくりと深呼吸するのがおすすめです。
怒りのピークは約6秒なので、最初の怒りの波を乗り越えることができれば、そのあとは少しずつ落ち着きやすくなります。
アンガーマネジメントの手法として、近年注目されている方法です。
衝動的な欲望に惑わされそうなときには、自分に合った方法で冷静さを保つようにしましょう。
一旦落ち着いてから考え直し、「やっぱり要らないや」となればそれで良いですし、「それでも欲しい!」となった場合は自信を持って購入すれば良いのです。
物事への欲望や執着は、自分の心が迷っているときに生じるものなのだから、何かを欲しくなったときには一旦冷静になって考えなさい、という言葉をご紹介しました。
私もそうですが、ストレスを感じていると、衝動的に動いて後悔しやすくなります。
こういった後悔を回避するためには、衝動的な感情をグッと堪えて、一旦落ち着くことが大切です。
一呼吸置くことができれば、きっと後悔することも少なくなっていくはずですよ。
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